いっさい情報を入れずに見た新海誠監督『天気の子』が良かった。ネタバレあり感想・レビュー [映画感想・実況]
さて、どうも。ひと時お付き合いのほどを。
新海誠監督の新作『天気の子』を見てきました。
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- 作者:
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
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- メディア: 大型本
前作の『君の名は。』は僕にとっては全くいただけない作品でしたが、処女作である『ほしのこえ』からずっと見ている身として映画館に足を運びました。
例によって、事前情報は全く耳に入れず鑑賞した結果の感想です。ネタバレ有りです。
大昔にも、このブログで触れたことがあるドラマですが。
僕がこの映画を見終って、真っ先に思い出したのがTVドラマ『男女七人秋物語』の最終回でした。古いな。
様々な出来事があって・やっと結ばれるさんまさんとしのぶさん(役名ではなく演じた人の名前になってしまうな、このドラマ)。
しかし結ばれた2人ですが、そこに祝福ムードの演出はありません。
お互いを支えあうようにして、2人は道行く多くの人たちと反対方向に歩き始めます。
そして、これまでいろいろなキャラクターが・2人に投げかけた言葉がバックに流れます。それは2人を責めたり、周りに傷ついている人たちがいることを指摘する数々のセリフです。
紆余曲折を経て、2人がやって結ばれた。
表向きにはハッピーエンドのはずなのに、2人を非難する言葉が流れる。
2人にとってはハッピーエンドの恋愛でも、周囲にとってはそうではない・違う側面があることを、ともすれば軽佻浮薄のイメージがあるトレンディドラマで見せたことに、ぼくはびっくりしたのでした(リアルタイムではなく後年に見ています)。
新海誠監督の最新作『天気の子』においても。
2人が結ばれれば・東京がアトランティスかはたまたネアポリスのように…とまではいかなくても、水に沈んでしまうという二択を主人公に突きつけたことに、僕はびっくりしました。
そしてびっくりしながらも、この映画を見て良かったな、と思いました。
『君の名は。』では、愛が奇跡を起こし天災から多くの人を救ってしまう、能天気な展開がどうしても受容できなかったぼくですが。
その作品を作った新海監督が、恋愛と多くの人の不幸・不便を「天秤にかける」作品を新たに作ったことに、「こんな逆のことを提示してこれるのか」と軽い衝撃がありました。
そこで、やはり「恋愛」を選んでしまう新海監督の素質に非難の目を向ける人もいるでしょうが、しかしぼくはそもそも、この二択を提示した時点で・もういいだろうと許容できる気持ちになっています。
しかし思い出すに、新海監督は『雲のむこう、約束の場所』で北海道を犠牲に(笑)しています。
当時はまだ新海作品は、札幌ではシネコンでの上映ではなく・アート系映画館での上映でした。
僕は監督の舞台挨拶付き上映を見に行っていますが、その時の質疑応答で観客から「北海道はどうなってしまうのでしょうか」と質問があり。
監督が苦笑いしていた覚えがあります。
道産子のぼくは、当時は北海道が…と思いながら見ていましたが(笑)、今回似たような気持ちを東京に縁のある方は味わっているのでしょうか。
話を『天気の子』に戻します。
今回、ぼくが『天気の子』を肯定できるのは、何て言えばいいのか…ドラマの層が厚くなっていることもあります。
鑑賞した直後のツイートでは、下のように感想を書きました。
天気の子、良かった。監督が持つ・ややセンチメンタルすぎる恋愛観と、劇中のドラマが今作にてやっと均衡した。
— 坂井哲也 (@sakaitetsu) 2019年7月22日
気に入らない点が3点あるけれど、うち2点は個人の趣味でおさまる範囲。君の名は。よりも断然良い。
新海監督の作風の特徴といえば、処女作『ほしのこえ』からそうであるように。
少年少女(主に少年)の恋愛感情をセンシティブに、そしてやや憧憬を強く持ちすぎて描くことにあります。
その特徴が強すぎるため、突出してしまうのが新海監督の長所でもあり短所でもありました。
『秒速5センチメートル』は、そのメランコリックな恋愛感情描写があまりにも突出していたために、ある種の感情が見た人の胸に迫ってくる作品になっていたと思います。
が、この特徴は、新海作品が批判される時によく使われていた点でもありました(いわゆる童貞云々といった批評です)。
その弱点は例えば、サブキャラクターに多少の「物語」を持たせても。
拭えないほどの「特徴」であり「弱点」だと考えていました。
ところが『天気の子』では、サブキャラクターの大人2人にもドラマが与えられているほか(その代わり弟のドラマは弱い)、主人公2人の本筋の話とは別に、拳銃にまつわるドラマが同時進行していました。
そのことで、映画全体が新海監督の「恋愛観」「恋愛描写」といったものを支えるくらいの力を獲得するに至ったと思います。
主人公の2人は少年少女です。
もちろん見た目でわかるし、年齢も何回も口にするし、「少年」と呼ばれます。
さらにそれ以外に、分かりやすい描写で・視聴者に主人公が「少年少女」であることを提示しています。
帆高は家出中の少年です。『大人になることのむずかしさ 青年期の問題』(岩波書店)において河合隼雄さんは、
「家出」というと聞こえが悪いが、「家を出る」と言うとそれほど悪くは聞こえない。それどころか、人間は本当に自立してゆくためには、一度は家を出ることが必要ではないか、とさえ考えられるのである。(10P)
と指摘しています。
一方、ヒロインはマクドナルドで働いている少女です。
帆高との再会は、スカウトマンに売春なのかAV出演の誘いなのか、ラブホテルに連れ込まれそうになっているところでした。
マックのバイトの次がいきなり風俗かとちょっと飛躍する感じもしますが、お金に切羽詰まっているからこその判断でしょう。
その行為も含めて、まだ子どもであることが分かります。恋愛映画であると同時に、この2人が成長する…グローイング・アップの映画であることが序盤で提示されるわけです。
さらにその分かりやすい年齢描写を踏まえた上で、陽菜の年齢詐称があったり、弟を目上のように呼んだりする、年齢のかく乱とも呼ぶべき細工が劇中に施されています。
他にも、年齢が原因で仕事が見つからなかったり、ホテル宿泊を断られたりと、「年齢」がキーとなる要素になっています。
「少年少女である=大人ではない」ことが重要な外因であると同時に、「子ども」である彼ら・彼女らにとっては、年齢は重要ではないという、二重描写がなされているのです。
ここは非常に、巧みな作劇だと感心しました。やっぱりプロですなー。
当たり前のように書いてしまいますが。
絵は「当然のごとく」美しいので(これ、どれだけ凄いことなんだろう)見ていて心地よさがあります。
一方ちょっと不満があったのは音楽の使い方で、これは個人の好き嫌いの問題なのですが。
歌詞ありの音楽、つまり歌ですね、歌をベタ貼りにするのはせめて1回だけにしてくれないかなとは思います。もしかしたら何か事情があるのかもしれませんが…
個人的にはMVかCMを見ているような感覚になってしまい、それが3回もあるとちょっと覚めてしまいました。
この映画を見て心地よく感じるのは、作画だけではありません。
何より「さっきの描写がこう繋がってくるんだ」という、伏線の上手さや、さりげないキャラクター設定の描写が素晴らしいのです。
冒頭のバニラトラックも、陽菜ちゃんが風俗に行きそうになる行動に繋がるものです。高収入!
特にぼくがニヤニヤしてしまったのは、陽菜の料理シーン。
おそらくあれは豆苗でしょう(違ったらすみません)、一度食べた豆苗を栽培して育てているところに、懐具合を感じる…(うちもやってる)。
それと、特にニヤニヤした描写がもう1つ。
ホテルに泊まったシーンで。
お風呂上がりの陽菜ちゃんが、チョーカーをつけています。
お風呂上がりにすぐチョーカー? とちょっと違和感もあり・印象深いシーンなので、あのチョーカーは多くの観客の印象に残っていると思います。
もちろんそれが技です。
最終シーンにおいて、あのチョーカーが壊れています。もちろん分かりやすく、「天気の子」としての戒めが解けた象徴なのです。
その一方、帆高の片手には手錠がされたままです。無論あれも、わざわざその前に捕物シーンを用意してまで「かけさせた」手錠なので、意味があるのです。
一足早く(東京を犠牲にして)自分の使命をから解き放たれた陽菜と、大人になるためにはまだしなければならないことが残っている―それは例えば罪の償いであったり、親との関係の修復であったり―帆高との違いです。
伏線とも言えないような単純なキャラクターの顔見せや、女占い師による分かりやすい天気の子の説明まで含めて、無駄のない描写・「あそこの描写が、ここでこう効いてくるのか!」感も、かなり私の好みでした。
褒めてばかりもなんなので、個人的に好きになれなかった点もあげておきましょう。
「全部OK!」なんて作品、両手の指であまるくらいしかない。
先にも書いた歌のペタ貼りもありますが、前作の映画のキャラクターを出す遊びね…
ガッツリとストーリーに絡んでくるのならいいのですが、「ちょっと顔見せ」「探してみよう」みたいなのはね。
長丁場のTVシリーズなら気にならないのですが、1本の映画では、「オタク向けの遊び」みたいで、ぼくは好みじゃないです。
さらに、それよりも。
個人の好き嫌いを超えて気になったのは。
終盤のシーン。帆高がビル屋上の祠に向かって走るシーンです。
ぼくは東京の地理に全く疎いので分かりませんが、あのコースが最短距離なのかもしれません。
しかし目立ってはいけない追われ者の立場でありながら、道行く人から注目を集めるようなあんなコースをわざわざ走るでしょうか。
立ち入り禁止区域に入って・たくさんの関係者がいるのに、誰も帆高くんをとめられない。
「どんな困難も乗り越えて」という描写かもしれませんが、せっかく「天気を自由に操る」という・とんでもないファンタジーを無理なく見せているのに(この力技もすごいと思います)、あの走るシーンではリアルさを感じられませんでした。
「リアリティ」とは本当にあるか・ないかではなく、その虚構世界の中で不自然さを感じるか・感じないかだということが実感できるシーンでした。
あれはない。せっかく盛り上がるラストシーンに向けて、若干覚めてしまいました。
ちなみにこの覚め方は、『君の名は。』の終盤シーン、多くの人を逃すところでも感じたものでした。
映画はどんどんラストに向けて盛り上がろうとしているのに、逆に見ているこちらは覚めてしまう。あそこだけはいただけませんでした。
グレートマジンガー陽菜ちゃん。
そしてクレジットで知ったキャラクター名。カナ。アヤネ。まんまか!
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富野監督と新海監督の15年前の対談。まるで『君の名は。』への評価かと錯覚するような言葉もあった。
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Amazonでも『富野由悠季の世界』取り扱い開始、富野監督が「カルト」と評した作品は、ほか [富野監督関係]
ひと時お付き合いいただければ幸いです。
ぼくが注文した楽天のショップでは品切れ状態だった『富野由悠季の世界』が・再入荷され、1週間ほど前に自宅に届きました。
噂通りの厚さ・重さで、死体の横に転がっていたら凶器認定されるかしら。「鈍器のようなもの」だ…
ゆっくり読み進めて楽しもうと思っています。
ちなみに『富野由悠季の世界』発売がアナウンスされた頃には取り扱いしていなかった、Amazonでも購入受け付けが始まっています。
もっとも、下のように書影もなく、現在・7月16日午前11時50分時点で「8/15木曜日~9/14土曜日までに無料配送」となっていますが。届くの1か月先だ。
朝日新聞デジタルの小原篤さん著『アニマゲ丼』コーナーでは、前々回から富野監督のことを取り上げていました(その前から何回も、富野監督のことを書かれています)。
この記事、全文読むには会員登録が必要ですが、
月に何本かまでは無料で読めるし(正確な数字忘れた)、
先に書いたように小原さんが富野監督のインタビューやらコラムやらをたまに上げてくれるので、富野監督ファンなら登録して損はないかと思います。
デメリットは、朝日新聞から1日1回以上メールが来ることくらい。
ぼくは面倒なので放置していますが、たぶんメール配信の停止もできるんじゃないかな…(無責任)
7月8日にアップされた「せめぎあい宇宙」では、∀の最終回について書かれています。
「今さら野暮なことだが、『∀ガンダム』の、「あの」ラスト6分間をもう1度振り返ってみる」というブログ記事を書いているぼくとしては、最終シーンがなぜ感動的なのかを論じるにあたり、小原さんが「ヤボなまね」と自ら断りを入れていることにドキドキしてしまいます。
同じ感情だわ……
小原さんはこの中で、『月の繭』の後にもう1曲・にぎやかな曲が流れるTV版より、劇場版の方に軍配を上げています。
まあここは、好みが分かれるところでしょうね。
TV版で『月の繭』の後に『宵越しの祭り』足したのって、菅野さんが「変な顔したから」だったよね、確か。出展忘れちゃたな。
この小原さんの記事、興味深い富野監督のコメントも掲載されているので、ファンは読むのがよろしいかと。
ちなみにこの記事には、富野監督がある作品群を評して「カルト」と言っていることが・短くだが書かれています。
まあぼくはその作品群を見ていないし、見る気もないので感想は何も言えないが、さもありなんという気持ちはあります。
ところでこの「カルト」、制作者とファン、どちらに向けられた言葉だろうね?
最後に、富野監督以外で1つだけ。
漫画『金剛寺さんは面倒臭い』1巻のkindle版が期間限定無料なので読んだのですが。
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握手するだけで見開きページ×3を使っていたのには驚いてしまった。
遥か昔、ジョジョとDioがすれ違うシーンが・見開きで描かれているのにも度肝を抜かれたものですが、それ以上のインパクトがありました。
男性作者が描いているのに話の展開が早く(ぼくの偏見)、中盤でそこまでいくの? というスピード感も良かった。
ただ読むだけの怠惰なクソ豚であるぼくの、無責任で身勝手なワガママとしては、「読んでいて作者の才能を必要以上に感じてしまう」ところが唯一の難でありますが、ないものねだりの要求であることは自覚しています。
レストランに強盗が押し入ってくる回は、途中からパターンが読めるのに声を出して笑ってしまった。
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映画『逆襲のシャア』を読み解く 1 0秒~2分35秒 [富野監督関係]
どうも。未見の方が読んでも楽しい、何度も見ている方が読んだらもっと楽しい、を目指します。
ではサクサクと始めていきましょう。
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向こうに見える地球から月面のクレーターへとカメラ(視点)が降りてきて、チェーンとオクトバーさんの口論が聞こえてきます。
カメラが近づくと、声が聞こえてくる。観客はすんなりと舞台を認識できます。
舞台は月。ガンダム好きなら、月面とくればアナハイム・エレクトロニクスと分かります。
2人はMSのコクピット周りの重量が軽くなっていることを言い合っています。
チェーン「原因は何です? 重量が3キロ減った原因は?」
チェーン「なんで事前に通知して…!」
全て見終えると分かるのですが、いや、1回見ただけじゃ分からないかも……
まあ、このシーン、
「アムロにもササビーに匹敵するMSに乗ってほしいと思ったシャアが(ロマンチストですなあ)サイコフレームの技術をアナハイムに流して、νガンダムのメカニックであるチェーンも知らぬ間に、コクピット周りに実装されていた」
ことを表しているのです。
初見で、ラストシーンを見ながら「冒頭でチェーンが言っていたの、サイコフレームが入れられたからか!」と思い出せる人はそんなにいないと思うので・少なくともぼくには無理です、再見前提なのかなあ。
ラスト……そして物語のキーとなる「サイコフレーム」の存在が、映画開始一発目で匂わされていることになります。
余談ですが、個人的にはサイコフレームはヒッチコックいうところの「マクガフィン」足りえないと思っています。
物語の推進にほぼ役立っていないし、そのくせ物語の核心に関わりすぎているから。
サイコフレームを別物に置き換えると、ラストの奇跡が(表面的でも)説明できなくなってしまいます。
サイコフレームは映画上、かなり厄介な存在なのです。
「物語上ではあまり説明されていないのに、結果には重要な役割を及ぼす」小道具を「サイコフレーム」と命名してもいいのではないかと思うほどですね。
納期を短くされたから連絡できなかったんだ、と反論するオクトバーに、
チェーンはシャアに言ってください、と反論します。
この中で「ネオジオン」「隕石落とし」の言葉が出てきます。
なのですが、このセリフだけで、ものすごい情報が入っています。
1、ネオジオンという組織がある。
2、その組織にはシャアが所属している。
3、隕石落としなる作戦を実行している(これまでの作品で「コロニー落とし」を知っている視聴者なら、作戦内容の想像はつく)。
4、ネオジオンは作戦行動が早い。
5、そして逆に、新型MSの完成を無理に急がせているのだから、地球連邦は(制服で判断してチェーンは地球連邦)後手に回っている。
1つのセリフで、ここまでが分かります。
音楽の盛り上がりに合わせて、ロールアウト前のνガンダムの顔がアップで映ります。そして『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』とタイトルが出ます。
このケレン味は素晴らしいですよね。始まるぞ、バーン! という高揚感を観客に抱かせます(語彙力どうした)。
ちなみにこのシーンで、「んっ」と巨大なシートをめくるチェーンの動き、可愛いですよね。
この冒頭、富野監督自身は
まずチェーンという、まったく新しいキャラクターを出すことで「あれ? この話はアムロもシャアも出てこないじゃないか」というフックをつけたんです。
と語っています。
タイトルが出たことで場面が転換されます。
宇宙から地上へ。まだどこかのコロニー内なのか、地球なのかは分かりません。
走っている4人の男女。しかしカメラは、その中の一人の少女に焦点を合わせていきます。クェスです。
武装している集団に追われている4人。囲まれます。
武装集団「だいたい地球で遊んでいられる身分かよ」(2分2秒)
地球だ!
武装集団「おまえ、クェス・パラヤだな?」
問い詰められて、不安そうな顔をしているクェスのアップから、高級そうな黒塗りの車に無理矢理乗せられるクェスへと場面が転換されます。
ぼくが以前に別ブログで、『∀ガンダム』の最終回を分析してみた時(「今さら野暮なことだが、『∀ガンダム』の、「あの」ラスト6分間をもう1度振り返ってみる。」)に、文章で細微に追ってみて・ものすごくプロの技に感心したことの1つが、この場面転換のスムーズさです。
ただぼんやり見ているだけでは気付きづらいけれど、これはやっぱり、やっぱりすごいな、と。
「あのね、プロ」とか空耳が聞こえそうだけれど。
抵抗して、母親らしき女性の手を噛むクェス。
いやー、ここも素晴らしいんだよな。
女性はクェスを怒るのではなく、男性(おそらく父親)の方を向いて、「クェスが噛んだんですよ!」と告げ口するんですよ。
このワンアクションだけで、観客は「あれ、この女性はクェスの母親じゃないんじゃね? 父親らしき男にも敬語だし、この女性は愛人、あるいは後妻(なりたて)かな」と想像できるわけですよね。
説明するんじゃない、伝える。
知ってるぞ、映画用語で「シャレード」って言うんだろ!
で、この直後、家に残った側近と警護兵? の会話で、「あれ、奥さんじゃないんでしょ」と答え合わせをするわけですね。
ついでにここの短い会話で、クェスが「高官の娘」「でも家に馴染んでいない」も分かります。
さて場面がシャトルに移ったところで、また次回。
まだ2分30秒しか経っていないんだけれど(笑)。どこまで続いたら終るんだ、これは……
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富野監督関連小ネタ [富野監督関係]
今回はタイトル通り、細かいネタをいくつか。
現在、高松監督の『RobiHachi』をゆっくりペースで見ているのだが、先日4話を見ていたら、こんなシーンが出てきた。
うおわ。まんまじゃないですか、これと。
このブログを読んでいただいている方には説明不要でしょうが、高松監督はZやZZ、逆シャアで富野監督といっしょに働いているから、偶然似たレイアウト…じゃないよね?
それより偶然かどうか知りたいのは、この第4回の舞台が「オダワーラ」だったこと(笑)。
舞台が小田原だったことも踏まえての、ザンボットパロだったのかしら。
ちなみに高松監督、この回については次のツイートを残しています。
今週の「RobiHachi」の真空の宇宙より深海のほうが気圧差が大きいという話は、「逆シャア」でクエスが目と耳を塞いで宇宙に飛び出してMSに飛び移るというシーンのコンテで「大丈夫なんですか?」と聞いたら、富野さんが「たかが1気圧、深海の方が気圧差が大きい」と言った事が元ネタになっています。
— 高松信司 (@takama2_shinji) 2019年4月30日
オダワーラだから富野作品パロにしたのかも知りたい…
さて富野作品パロと言えばもう1つ。
疲れたリーマンの欲望を飲み込んでくれるアニメ『世話やきキツネの仙狐さん』の最終回。
『逆襲のシャア』、ありましたね。
劇中劇(アニメ)で、CV釘宮さんのキャラクター「稲荷少女ヨーコちゃん」が・落ちてくる隕石を止めようとするの。
で、ヨーコちゃんが操る葉っぱがジェガンのように隕石にとりつく(貼りつく)。最後は不思議な光が隕石を包んで落下を防ぐ。ここが一番逆シャアだったな。
ぼくはリアルタイムで見ていて、「あ、逆シャアパロだ」と思ったけれど、ツイッターのTLではどなたも呟いておらず。
そりゃそうだよね。
だって裏で、富野監督出演の『夜の巷を徘徊する』やっているんだもん。
そらぼくのTLでは、そっちばかり見ているわ。
北海道は遅れての放送なんだよ…
ぼくも見逃し配信を利用して見ました。
マツコ徘徊見た。ガンダム好きだった+今のガンダムは知らない+有名人だと、当たり柔らかくなるのかな(笑)
— 坂井哲也 (@sakaitetsu) 2019年6月28日
それと仲さんが言った(劇場版ではなく)「総集編」、まあ現時点ではそういうこと…劇場にかける目処たってないのかなという気も。その後テロップでは劇場版になっていたので杞憂かもだが。
ブログにも書こうと思っているけれど、札幌でも(敢えて「でも」にしておこう)スクリーン数は23しかない(Gレコがかかる訳ない単館除く)。
— 坂井哲也 (@sakaitetsu) 2019年6月28日
そのうち2枚は、キャプテンマーベル以降、MCUが絶え間なく埋めている。大作は他にもたくさんある。
その状況で、
Gレコが5作も劇場で上映されるのか、地方民としては全然楽観視できない。
— 坂井哲也 (@sakaitetsu) 2019年6月28日
もし上映されるとしても、1日1回とか厳しいスケジュールになるのでは。それでも上映されたらいいけれど。
スタッフは「劇場版」ではなく「総集編」と濁さざるをえない現状なのかなと。勘ぐってしまいました。
さて最後。
AmazonではPrime会員を対象に、7月16日までKindle Unlimitedが3か月99円、のキャンペーンをしています(対象にならない場合あり)。
3か月99円は安い! そしてぼくは対象。3か月過ぎたら、解約すればいいや…との思いで、アンリミテッド会員になりました。
さて何を読もうかと2時間くらいリストアップした中に、『エロマンガノゲンバ』もありました。
まあ、ぼくはあんまエロマンガって読んだことなくて、どのくらい読んだことがないかというと。
この本では27人の漫画家さんがインタビューに答えていて、そのうちぼくがお名前を知っていたのはお1人だけ、「お名前を見かけたことがあるかも…?」という方が3名という、散々な結果。
それでも「表現がどう変わっているか」とか、他の漫画と同じように部数は落ち込んでいるだろうかとか、色々興味あったので読んでみました。
読んだら、フリーライターのぼくにも何かと共通点が感じられ、色々身につまされるところ多かったです…
さて本題。
この中で、浅学なぼくでも唯一お名前を存じ上げているところの森山塔さん。
本の中では、森山さんが『コミックロリポップ85年秋号』に書いたコラム紙面が掲載されていて。
その中でアニメが大っ嫌いとした上で、「おめーのことだよ富野由悠季 NHKなんか出んじゃねえ。文化人ヅラすんじゃねえ」って書いてあるの(笑)。
85年でNHKでしょ。「YOU」かなあ。
※読んでいただいた方から、情報いただきました。時期的に「アニメーション人物録」のようです。
森山さん、本の中でこの投稿に触れて、「ガンダムじゃなくて、ガンダムガンダムと騒いでるヤツが嫌いだった」とおっしゃっています。
ガンダムガンダムって騒ぐヤツね。こうやって、テメエのブログで紹介するヤツもいるしなあ(笑)。確かに鼻につくのは分かる。
しかしこの本読んで思ったけれど。
タモリ俱楽部でも取り上げられた・著名なエロマンガ雑誌投稿者である三峯さん、大病になっていたのか。
ちょっと興味を持って調べたら、togetterにこんなのあった。
伝説のハガキ職人”三峯徹”。家族バレした経緯と、投稿が再開できるようなった理由。
いやー。
自分に置き換えて、カミさんの両親に三峯さんの偉大さを説明できるのすごいわ。
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