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ぼくが選んだ富野作品ベスト100(年代順年代順31~60) [富野監督関係]





前回の続きです。
1~30の記事はこちら

富野監督作品で、個人的に好きなTVシリーズの回・映画・OVAを100本選んだ記事です。
順番は基本、年代順です(一部例外あり)。

なお『ラ・セーヌの星』は未見なので除外しています。また『しあわせの王子』も、薦めたところで見る術が無いはずなので、除外しています。

今回は31~60。
ではでは。


31、『伝説巨神イデオン』第33話「ワフト空域の賭け」

味方になったギジェは、拳銃を持ったロッタの見張り付きでイデオ・ノバに乗り込む。
戦闘の中、ギジェはコスモ達を裏切りかけて、しかしメバルル・クオウを撃破する。「ギジェめ、売国奴がー!」
ギジェ自身、コスモ達を裏切ろうとしたのか、それとも最初からメバルル・クオウを欺くつもりで行動したのか、分からない。
そして運命を、1枚のコインに委ねる。
あやふやな行動の裁きを、あやふやなコインの行方に委ねる。これほど「人間のあやふやさ」を明確に描写したアニメがあるだろうか。


32、『伝説巨神イデオン』第38話「宇宙の逃亡者」

どうも『イデオン』を語ると、饒舌になりすぎる。
この回は、ギジェとシェリルが酒を酌み交わす、退廃的なシーンが大のお気に入り。確か林さんと井上さん、2人きりでアフレコしたのではなかったか。


33、映画『伝説巨神イデオン 発動篇』

この記事は「100選」だが、富野作品から1つだけ選ぶとしたら、迷わず『発動篇』。個人的な視聴歴では、富野作品のみならず、アニメ全体のみならず、邦画全体でも『発動篇』を超えるのは小津の『東京物語』にしか出会えていない。
ストーリー、演出、作画、音楽、演技、どれか1つが劣っていても成立しないであろう、アニメ界の極北に輝く傑作。
ちなみに監督の滝沢さんは、「(作っていた頃は)メジャーになっていない者の楽しみ」「(富野監督も)まだギラギラまでいかない。キラキラぐらい」とインタビューで話している。その意味ではこの作品は、才能あるクリエイターたちの青春の墓標なのかもしれない。


34、『戦闘メカ ザブングル』第14話「ティンプ、悪あがき。」

ジロンがティンプ相手に敵討ちを果たす(と勘違いする)回。
それまで「画面の中の出来事をぼんやり見ている」という視聴スタイルにならざるを得なかった本作だが、この回で初めて・見ていて感情の高ぶりを感じた。『ザブングル』の一番の収穫は、ティンプというキャラクターの創造ではないか、は言い過ぎか。


35、映画『ザブングルグラフィティ』

ファン向け映画で、一見さんには厳しいが、愛着がわく一品。
「走る・躍動しているシーン」に焦点を当てたTV版の総集編で、見ていると「ザブングルの魅力はやっぱりここに集約されるのか」という複雑な思いと、「いや、ザブングルはこれでいいんだ」と肯定的な思いに包まれる。
女優・市川紗椰さんとの対談で、富野監督自身もこの作品を好きだと言っていたのが、分かる気がする。


36、『聖戦士ダンバイン』第1話「聖戦士たち」

富野監督自身は不満があるようだが、「寝ても悪くないぞ、ショウ」と(笑)。トカマクがいきなり撃墜されたり、マーベルの印象深いセリフあったり、見ごたえのある第1話。


37~39、『聖戦士ダンバイン』第16話「東京上空」、第17話「地上人たち」、第18話「閃光のガラリア」

長い話数をかけて構築しているバイストンウェルの世界観だが、ダンバイン前半の話になると、やはり「東京上空」「地上人たち」「閃光のガラリア」の俗称「東京3部作」がメインになる。しかしそれも、しっかりとバイストンウェルの世界を描いているからだろう。
この中からさらに1作選ぶとしたら、それまでのエピソードの積み重ねが結実する「閃光のガラリア」。「故郷に帰ったのに異世界に戻りたい」ショウと、「異世界に来たが故郷に帰りたい」ガラリアは、エトランゼという点で最終的に共感しあう。
(チャムも入れて)3人で協力してオーラロードを通るシーンは、キャラクターの心情と、画面と、音楽の一体感が素晴らしい。


40、『聖戦士ダンバイン』第23話「ミュージィの追撃」

自分の恋人に色仕掛けを使わせて、新聖戦士・フェイを味方にさせるショットの狡猾さ。
フェイのセリフ「日本人のおまえに、そんなこと言わせるかよ! 俺はフェイ・チェンカなんだぜ!」はすごく好き。何故なら、この簡潔な言葉で、フェイのバックボーンが伝わるから。
このセリフもそうだが、「異世界に来たのに、地上を忘れられない人たち」を描写する意図のため、富野監督は国や人種に関する言葉を意図的にダンバインでは多用している。
なおこの回、「ワイヤーをしならせてグレネードランチャーを迎撃する」戦闘シーンも良い。その直前、無言のショウのアップが入るカット割が、見ていて心地良い。


41、『聖戦士ダンバイン』第27話「赤い嵐の女王」

シーラが好きだからこの回が好きなのか、『ローマの休日』が好きだからこの回が好きなのか。
セイラを嚆矢に、富野アニメでは「姫様」がたくさん出てくるが、シーラが一番好き(短い文章で、何回「好き」って書くんだ)。


42、『聖戦士ダンバイン』第29話「ビルバイン出現」

『ザブングル』以降、主役機の交代は富野アニメでの恒例となったが、一番登場シーンが格好良かったのは、やはりビルバインではないだろうか。
アレンを迎撃するショウとチャムのやり取りが高揚感をあおる。アレンをすっぱり、殺してほしかったなあ…(アレンがこれで退場だとは、作画陣に伝わっていなかった


43、『聖戦士ダンバイン』第33話「マシン展開」

マーベルと地上で再会する。マーベルの危機に駆け付けるショウは、王道の展開だが燃える。
敵オーラバトラーに動きを封じられているマーベルだが、
ショウ「マーベル、避けろよ!」
チャム「撃て撃て、大丈夫!」
のやりとりが、らしい。


44、『聖戦士ダンバイン』第37話「ハイパー・ジェリル」

「40」でも触れたが、「ダブリンの鼻つまみが、ジャンヌ・ダルクとはね」のひと言だけで、ジェリルの生い立ちが伝わってくるセリフの妙。
この回は他にも、「ショウ・ザマ! 今日こそはってやつさ!」「敵が小さく見えるということは、私がダンバインにもビルバインにも、勝つということだ!」と名セリフのオンパレード。
それが一転、ハイパー化以降のジェリルは無言で見せきる演出力。この回、演出は今川泰宏さん、作監は大森英敏さんと北爪宏幸さん。
余談だが、この回の感想をツイートしたら、関係者からコメントを頂けるのだから、すごい時代になったものだ。


45、『聖戦士ダンバイン』第39話「ビショットの人質」

人質となったマーベルを犠牲にしても、ゲア・ガリングを落とそうとするシーラ。
損壊したグラン・ガランのブリッジから、シーラの号令一閃、ウィングキャリバー形態のビルバインが出撃するシーンが印象深い。


46、『聖戦士ダンバイン』第45話「ビヨン・ザ・トッド」

比較すると「ハイパー・ジェリル」に軍配が上がるが、同じくハイパー化するこの回も良回。


47、『聖戦士ダンバイン』第48話「クロス・ファイト」

これまでの作品でも、こじれる親子関係を描いてきた富野監督。
この回では、以前にルーザがリムルを人質にとる伏線があったとはいえ、娘が母親を殺そうとし、母親が娘の額を撃ち抜くことで返り討ちにする。「ついにここまで」感。


48、『聖戦士ダンバイン』第49話「チャム・ファウ」

『イデオン』に続く殲滅戦。当時、48話目の次週予告を見たファンはどう思ったことだろうか(ネタバレとは…)


49~50、『重戦機エルガイム』第9話「アーミィ・ベース」第33話「マイ・アース」

『エルガイム』の魅力はありきたりだけれど、結局のところ「永野護デザインのメカとキャラクターデザイン(ファッション含む)」に集約されるだろう。
第1話目を見た当時、その新しさ、格好良さにまたたく間に引き込まれた。それと、『ザブングル』のエルチとラグ描写のリターンマッチともいうべき、アムとレッシィのやり取りも面白かった。
そんな『エルガイム』から話数を選ぶなら、信用を得るためにレッシィが髪を切った第9話と、出自を明らかにしたダバが大地にキスをした第33話になるだろう。どちらもスタッフが「この回は名作にしよう」と意気込み、その通り価値ある回になったように見える。


51、『重戦機エルガイム』第47話「ボーイズ・ボーイズ」

回を重ねるにつれ、色々なしがらみが生まれてくる主人公・ダバはキャラクターの魅力を失っていく。一方、「惚れた女のため」を行動原理にして躍動するギャブレット・ギャブレー君は魅力を増していく。
そのギャブレーが活躍している一編、として本作を選んだ。ギャブレーはクワサンを救うために単身ギワザと交渉し、近衛軍から離反する。


52、『重戦機エルガイム』第54話「ドリーマーズアゲン」

夢を持つ若者たち=「ドリーマーズ」(第1話タイトル)を追った物語は、苦さの残る散会で幕を閉じる。すでに『Z』に取り掛かっていた富野監督にとって、ガンダムの続編制作は一種の負けであり、もはや夢を見る心境ではなかったのか(当時富野監督が言っていた、『Z』は現実認知の物語)。
そこに描かれているのは明らかに「青春の終り」だが、しかし、最終回のタイトルは「ドリーマーズアゲン」。そこに一縷の望みを見出すこともできるだろう。


53、『機動戦士Zガンダム』第1話「黒いガンダム」

シャアはファーストガンダムと同じように攻め込んでくるが、彼は味方で、ガンダムは黒く、「味方」であったはずの連邦政府(ティターンズ)の軍人は鼻持ちならない。
ファーストを過分に意識した、やがて拡張を続けるガンダムサーガの正統続編が始まる。そして富野監督にとっては「ガンダムから抜けられない」、一種の敗北でもある。
「それよりもちょっと心配だったのは、あいつ(ブログ主注:庵野さんのこと)のほうがしたたかだと思うんですけど、ああいうのを(注:エヴァ劇場版)やってしまうと、自分の作ったものに縛られていくでしょ。ヤマトとか、ガンダムとかね。そういうものに、縛られると、最悪なことになりますから、」(宮崎駿『風の帰る場所』)


風の帰る場所 ナウシカから千尋までの軌跡

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  • 作者: 宮崎 駿
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2013/12/27
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54、『機動戦士Zガンダム』第14話「アムロ再び」

前半ではギャプランで可変MSの運動性を充分に示し、後半では同じ可変MSのアッシマーが・カミーユ&クワトロの強力タッグに一歩も引かない。
……お笑いでいうところの「フリ」は充分にしておいて、運動性なんか皆無の輸送機でアムロが突っ込んでくる。ホントにもう…(笑)。
新旧主人公の出会いに・宿命のライバルの再会、見どころたくさん。


55、『機動戦士Zガンダム』第15話「カツの出撃」

この回の見どころは、カツが、ロザミアのギャプランに被弾させるシーン。
声優さんの息遣いと、「何もない崖+空」「カツの表情のアップ」を繋ぐことで、視聴者は「カツのニュータイプ能力の開花」を感じることができる。映像の魔力、モンタージュ理論の実例を視聴できるシーン。


56、『機動戦士Zガンダム』第19話「シンデレラ・フォウ」

サブタイトルがちょっとあからさま過ぎないか、とは思うけれども(笑)。『Zガンダム』に触れるのに、この回を選ばないわけにはいかないだろう、と。


57、『機動戦士Zガンダム』第25話「コロニーが落ちる日」

ウォンさん株が爆上がりする回。サブキャラにもこうしてスポットが当たるのが、富野群像劇の妙。
それとカツ、「あの女! あの女!」と涙流せる思春期は悪い物じゃないよ、きっと。ちょっと度が過ぎるけれど…


58、『機動戦士Zガンダム』第44話「ゼダンの門」

「ふうん…ジェリドねえ……」の小馬鹿にしたようなシロッコのセリフから始まって、ジェリドのバイアランがガザCを一閃するシーンが好き。このシーン、戦闘BGM(『モビルスーツ戦』)から、自然に「ハマーンのニュータイプ音」に繋がる音楽にも痺れる。


59、『機動戦士Zガンダム』第46話「シロッコ立つ」

この回の戦闘シーン(シロッコVSハマーン)が、「Zってガンダムの続編ではなくて、ダンバインとかの系列だよな」と思える一因では。この2人の異次元対決に突っ込んでくるカツ、好きよ。


60、『機動戦士Zガンダム』第48話「ロザミアの中で」

初期・中期の富野作品にある「ヒーローの否定」が特に露わになったのが、『無敵超人ザンボット3』の第19話「明日への脱出」と、この「ロザミアの中で」だと思う。
未来への希望を感じさせて終った『ガンダム』の続編は、主人公が絶望的な状況を前に一人の少女(ロザミア)も助けられず、「誰でもいい! 止めてくれ!」と絶叫するに至った。そのシーンは、ララァを殺してしまったアムロとシャアのリフレインでもある


 今回はここまでです。

 次の「ぼくが選んだ富野作品ベスト100(年代順61~100)」はこちら





ぼくが選んだ洋画・邦画ベスト200 (文春文庫)

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  • 作者: 小林 信彦
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2003/12/05
  • メディア: 文庫

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