映画『逆襲のシャア』を読み解く 1 0秒~2分35秒 [富野監督関係]
※この記事は5か月ほど前に別ブログでこっそり書いていたものを、転載したものです。やっぱりアクセス数少なすぎて…
どうも。未見の方が読んでも楽しい、何度も見ている方が読んだらもっと楽しい、を目指します。
ではサクサクと始めていきましょう。
向こうに見える地球から月面のクレーターへとカメラ(視点)が降りてきて、チェーンとオクトバーさんの口論が聞こえてきます。
カメラが近づくと、声が聞こえてくる。観客はすんなりと舞台を認識できます。
舞台は月。ガンダム好きなら、月面とくればアナハイム・エレクトロニクスと分かります。
2人はMSのコクピット周りの重量が軽くなっていることを言い合っています。
チェーン「原因は何です? 重量が3キロ減った原因は?」
チェーン「なんで事前に通知して…!」
全て見終えると分かるのですが、いや、1回見ただけじゃ分からないかも……
まあ、このシーン、
「アムロにもササビーに匹敵するMSに乗ってほしいと思ったシャアが(ロマンチストですなあ)サイコフレームの技術をアナハイムに流して、νガンダムのメカニックであるチェーンも知らぬ間に、コクピット周りに実装されていた」
ことを表しているのです。
初見で、ラストシーンを見ながら「冒頭でチェーンが言っていたの、サイコフレームが入れられたからか!」と思い出せる人はそんなにいないと思うので・少なくともぼくには無理です、再見前提なのかなあ。
ラスト……そして物語のキーとなる「サイコフレーム」の存在が、映画開始一発目で匂わされていることになります。
余談ですが、個人的にはサイコフレームはヒッチコックいうところの「マクガフィン」足りえないと思っています。
物語の推進にほぼ役立っていないし、そのくせ物語の核心に関わりすぎているから。
サイコフレームを別物に置き換えると、ラストの奇跡が(表面的でも)説明できなくなってしまいます。
サイコフレームは映画上、かなり厄介な存在なのです。
「物語上ではあまり説明されていないのに、結果には重要な役割を及ぼす」小道具を「サイコフレーム」と命名してもいいのではないかと思うほどですね。
納期を短くされたから連絡できなかったんだ、と反論するオクトバーに、
チェーンはシャアに言ってください、と反論します。
この中で「ネオジオン」「隕石落とし」の言葉が出てきます。
なのですが、このセリフだけで、ものすごい情報が入っています。
1、ネオジオンという組織がある。
2、その組織にはシャアが所属している。
3、隕石落としなる作戦を実行している(これまでの作品で「コロニー落とし」を知っている視聴者なら、作戦内容の想像はつく)。
4、ネオジオンは作戦行動が早い。
5、そして逆に、新型MSの完成を無理に急がせているのだから、地球連邦は(制服で判断してチェーンは地球連邦)後手に回っている。
1つのセリフで、ここまでが分かります。
音楽の盛り上がりに合わせて、ロールアウト前のνガンダムの顔がアップで映ります。そして『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』とタイトルが出ます。
このケレン味は素晴らしいですよね。始まるぞ、バーン! という高揚感を観客に抱かせます(語彙力どうした)。
ちなみにこのシーンで、「んっ」と巨大なシートをめくるチェーンの動き、可愛いですよね。
この冒頭、富野監督自身は
まずチェーンという、まったく新しいキャラクターを出すことで「あれ? この話はアムロもシャアも出てこないじゃないか」というフックをつけたんです。
と語っています。
タイトルが出たことで場面が転換されます。
宇宙から地上へ。まだどこかのコロニー内なのか、地球なのかは分かりません。
走っている4人の男女。しかしカメラは、その中の一人の少女に焦点を合わせていきます。クェスです。
武装している集団に追われている4人。囲まれます。
武装集団「だいたい地球で遊んでいられる身分かよ」(2分2秒)
地球だ!
武装集団「おまえ、クェス・パラヤだな?」
問い詰められて、不安そうな顔をしているクェスのアップから、高級そうな黒塗りの車に無理矢理乗せられるクェスへと場面が転換されます。
ぼくが以前に別ブログで、『∀ガンダム』の最終回を分析してみた時(「今さら野暮なことだが、『∀ガンダム』の、「あの」ラスト6分間をもう1度振り返ってみる。」)に、文章で細微に追ってみて・ものすごくプロの技に感心したことの1つが、この場面転換のスムーズさです。
ただぼんやり見ているだけでは気付きづらいけれど、これはやっぱり、やっぱりすごいな、と。
「あのね、プロ」とか空耳が聞こえそうだけれど。
抵抗して、母親らしき女性の手を噛むクェス。
いやー、ここも素晴らしいんだよな。
女性はクェスを怒るのではなく、男性(おそらく父親)の方を向いて、「クェスが噛んだんですよ!」と告げ口するんですよ。
このワンアクションだけで、観客は「あれ、この女性はクェスの母親じゃないんじゃね? 父親らしき男にも敬語だし、この女性は愛人、あるいは後妻(なりたて)かな」と想像できるわけですよね。
説明するんじゃない、伝える。
知ってるぞ、映画用語で「シャレード」って言うんだろ!
で、この直後、家に残った側近と警護兵? の会話で、「あれ、奥さんじゃないんでしょ」と答え合わせをするわけですね。
ついでにここの短い会話で、クェスが「高官の娘」「でも家に馴染んでいない」も分かります。
さて場面がシャトルに移ったところで、また次回。
まだ2分30秒しか経っていないんだけれど(笑)。どこまで続いたら終るんだ、これは……
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どうも。未見の方が読んでも楽しい、何度も見ている方が読んだらもっと楽しい、を目指します。
ではサクサクと始めていきましょう。
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冒頭
向こうに見える地球から月面のクレーターへとカメラ(視点)が降りてきて、チェーンとオクトバーさんの口論が聞こえてきます。
カメラが近づくと、声が聞こえてくる。観客はすんなりと舞台を認識できます。
舞台は月。ガンダム好きなら、月面とくればアナハイム・エレクトロニクスと分かります。
2人はMSのコクピット周りの重量が軽くなっていることを言い合っています。
チェーン「原因は何です? 重量が3キロ減った原因は?」
チェーン「なんで事前に通知して…!」
全て見終えると分かるのですが、いや、1回見ただけじゃ分からないかも……
まあ、このシーン、
「アムロにもササビーに匹敵するMSに乗ってほしいと思ったシャアが(ロマンチストですなあ)サイコフレームの技術をアナハイムに流して、νガンダムのメカニックであるチェーンも知らぬ間に、コクピット周りに実装されていた」
ことを表しているのです。
初見で、ラストシーンを見ながら「冒頭でチェーンが言っていたの、サイコフレームが入れられたからか!」と思い出せる人はそんなにいないと思うので・少なくともぼくには無理です、再見前提なのかなあ。
ラスト……そして物語のキーとなる「サイコフレーム」の存在が、映画開始一発目で匂わされていることになります。
サイコフレームはマクガフィンか
余談ですが、個人的にはサイコフレームはヒッチコックいうところの「マクガフィン」足りえないと思っています。
物語の推進にほぼ役立っていないし、そのくせ物語の核心に関わりすぎているから。
サイコフレームを別物に置き換えると、ラストの奇跡が(表面的でも)説明できなくなってしまいます。
サイコフレームは映画上、かなり厄介な存在なのです。
「物語上ではあまり説明されていないのに、結果には重要な役割を及ぼす」小道具を「サイコフレーム」と命名してもいいのではないかと思うほどですね。
短いセリフで簡潔に状況を説明
納期を短くされたから連絡できなかったんだ、と反論するオクトバーに、
チェーンはシャアに言ってください、と反論します。
この中で「ネオジオン」「隕石落とし」の言葉が出てきます。
開始1分14秒で、戦争が始まっている状況を説明。
なのですが、このセリフだけで、ものすごい情報が入っています。
1、ネオジオンという組織がある。
2、その組織にはシャアが所属している。
3、隕石落としなる作戦を実行している(これまでの作品で「コロニー落とし」を知っている視聴者なら、作戦内容の想像はつく)。
4、ネオジオンは作戦行動が早い。
5、そして逆に、新型MSの完成を無理に急がせているのだから、地球連邦は(制服で判断してチェーンは地球連邦)後手に回っている。
1つのセリフで、ここまでが分かります。
音楽の盛り上がりに合わせて、ロールアウト前のνガンダムの顔がアップで映ります。そして『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』とタイトルが出ます。
このケレン味は素晴らしいですよね。始まるぞ、バーン! という高揚感を観客に抱かせます(語彙力どうした)。
ちなみにこのシーンで、「んっ」と巨大なシートをめくるチェーンの動き、可愛いですよね。
この冒頭、富野監督自身は
まずチェーンという、まったく新しいキャラクターを出すことで「あれ? この話はアムロもシャアも出てこないじゃないか」というフックをつけたんです。
と語っています。
場面は地上へと
タイトルが出たことで場面が転換されます。
宇宙から地上へ。まだどこかのコロニー内なのか、地球なのかは分かりません。
走っている4人の男女。しかしカメラは、その中の一人の少女に焦点を合わせていきます。クェスです。
武装している集団に追われている4人。囲まれます。
武装集団「だいたい地球で遊んでいられる身分かよ」(2分2秒)
地球だ!
武装集団「おまえ、クェス・パラヤだな?」
問い詰められて、不安そうな顔をしているクェスのアップから、高級そうな黒塗りの車に無理矢理乗せられるクェスへと場面が転換されます。
ぼくが以前に別ブログで、『∀ガンダム』の最終回を分析してみた時(「今さら野暮なことだが、『∀ガンダム』の、「あの」ラスト6分間をもう1度振り返ってみる。」)に、文章で細微に追ってみて・ものすごくプロの技に感心したことの1つが、この場面転換のスムーズさです。
ただぼんやり見ているだけでは気付きづらいけれど、これはやっぱり、やっぱりすごいな、と。
「あのね、プロ」とか空耳が聞こえそうだけれど。
説明せずとも、伝える
抵抗して、母親らしき女性の手を噛むクェス。
いやー、ここも素晴らしいんだよな。
女性はクェスを怒るのではなく、男性(おそらく父親)の方を向いて、「クェスが噛んだんですよ!」と告げ口するんですよ。
このワンアクションだけで、観客は「あれ、この女性はクェスの母親じゃないんじゃね? 父親らしき男にも敬語だし、この女性は愛人、あるいは後妻(なりたて)かな」と想像できるわけですよね。
説明するんじゃない、伝える。
知ってるぞ、映画用語で「シャレード」って言うんだろ!
で、この直後、家に残った側近と警護兵? の会話で、「あれ、奥さんじゃないんでしょ」と答え合わせをするわけですね。
ついでにここの短い会話で、クェスが「高官の娘」「でも家に馴染んでいない」も分かります。
さて場面がシャトルに移ったところで、また次回。
まだ2分30秒しか経っていないんだけれど(笑)。どこまで続いたら終るんだ、これは……
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