ラジオ番組「TOKYO SPEAKEASY」の富野監督×ドリカム中村正人さん対談文字起こし 2 [富野監督関係]
どうも。
『ガンダム』などを作った富野監督と・ドリカム中村さんが出演したラジオ番組「TOKYO SPEAKEASY」(8月21日放送)の文字起こし、その2です。
富野監督の最新作劇場版『Gのレコンギスタ』(略称『Gレコ』)シリーズのテーマ曲を担当したドリカム。
初回の前記事では「3回に分けて書きます」と言いましたが、全部文字起こし終って分かった。3回じゃ無理だわ。1回が長くなりすぎる。
5回くらいになるかな。では文字起こし2回目です。
1回目未読の方は是非、まずはこちらから。
今回も、勝手に適宜中見出しを入れております。それと敬称略です。ではでは。
「作りたいものがない」クリエイター2人
中村:監督と一緒だって言ったらもうほんと申し訳ないんだけど、ぼくも実は作りたいものがないんですよ。
例えばドリカムだったら「今好きなことばっかりやってるでしょっ」て言われるけど、好きなことって何かって言うと仕事をいただくこと。
で、頂いた仕事を自分の表現としてお返しすることしかなくて。
富野:全くそう。
中村:種はやっぱり与えて。で、その種が吉田から与えられることが多いので、それは勿論。やっぱり吉田がこういう曲やりたい、こういう表現したい。
でも、監督にその種を与えるのは誰なんですか?
富野:誰もいなかったから辛かった。
中村:(笑)。今ちょっと泣きそうになっていましたけど。誰もいなかった。
富野:誰もいなかった。
富野監督にとっての手塚治虫
中村:それは例えば手塚先生…(ブログ主注・富野監督は手塚の虫プロにいた)
富野:手塚先生? 何言ってんの。あの人はもう、ぼくが手塚原作をこれは使えないから作り変えるってやった時から、もうライバルだもん。
中村:うん。はい。ですね…(小声)
富野:師匠だとも思わないで、手塚をいつか黙らせる(笑)。(※ブログ主注・これは「当時」の話で、手塚が亡くなった時、富野はまさに『時を経て師』というタイトルの追悼文を特集ムックに寄せています)
中村:(笑)。やっぱりそっちのモチベーション(笑)。
富野:そうでなければ、10年20年こんな仕事やってられないよ。
「殺してやろうか」と思うほどの才能
中村:音楽業界は本当に、アニメの制作の現場も今こういう時代ですから、いろんな話ありますけれども。でも当時まさに総監督が、もう寝ずに働いていた頃、そういうことですよね。地獄ですよ。
富野:だから本当に才能のある人ってのは羨ましいと思う。
だからなの。ドリカム出てきた時に、あ。これで出てきてこれで売れて、なおかつこれで千人じゃないんだよね1万人っていう単位だよね、2万人って単位に向かってライブをやる。やっていけるメンツが2人しかいない? こいつら本当に殺してやろうかって思ったもん。
中村:(笑)。 ぼくは今、米津くんにそう思っていますけどね(爆笑)。
富野:ホントそうなのよ。
中村:米津くんもホント自分で全部やられますからね、彼は。
富野:そうそうそう。
中村:ジャケット、絵上手でしょ。
富野:上手ですよね。すごいもん。
中村:ビデオも撮るでしょ。もともとはYouTuberって言いますかね、ハチっていうボカロから出てますからね。あんな歌上手で、あんなパフォーマンスが素晴らしいのに、最初ボカロですよ。それはないだろって。後出しジャンケンみたいなものですよ。
富野:それこそ、自分自身始めアレンジなんて全く分かんなかったって平気で言うじゃない。ちょっと待ってくれよってさあ。
中村:本当ですよね。
富野:ふざけてねえかって思うもん。
中村:本当ですよ。
富野:あれがまさに才能だって分かるようになってきたし、分かるようになってくると、…長くなりそうだから我慢するよ。
神童
中村:今日はお互い飲んで喋っているんだから何でも言ってくださいよ。マイク切っちゃいますから、もし何かあったら。大丈夫ですよ。
富野:じゃあまあ…典型的に…
中村:最近なんか辛いことあったんじゃないですか? 今日どうしたんですか?
富野:ここ10年くらいずっと辛いもん、楽しいことなんてほとんどないんだから。
中村:そうですよね…分かりますよ…
富野:だから、天才の名前を出して誰から文句言われないただ一人の人がいるわけ、モーツァルト。本当、この5~6年、もうね50(歳)まで聞くなんて思ってなかったもん。
中村:うん、うんうん。
富野:あんなよく分かんねえ曲なんて、と思ってたけど。
中村:ビートルズもケチョンケチョンに言ってますからね、監督ね。
富野:でもこの頃ずっと聞いてるもん。それで最近何が分かってきたかと言うと、楽曲のことは分からないのよ。
モーツァルトがすごいなと思うのは、なに作曲させても、ちゃんと音楽になってて、技らしくない。
中村:あのね、本当におっしゃる通りで。しかも皆さん、聞いてらっしゃる方で素晴らしいピアニストいらっしゃると思うんですけれど、モーツァルトあれ弾いてますからね自分で。
富野:そうなの。そうするとね、才能ってこれであって、ぼくは若い時、嫌な言い方するとワーグナーなんかとかさ、嫌いじゃなかったわけね(笑)。
中村:はいはい。
富野:モーツァルト聞くようになって、ああいうわざとらしい曲っていうのがね、ダメになっちゃったっていう地獄が。地獄を経験しちゃって困っているの。
中村:ビジネス考えているんですかね。でもぼくは見る限り、伝記とか映画とかしか読んだことないですけど、モーツァルトもやっぱり依頼を受けてひたすら食うために書いてましたよね。
富野:全くそうなの。
中村:パトロンのために。
富野:全くそうなの。そういう意味で商売人なのよ。そういう意味ですごく俗な奴で。だからぼくはアマデウスって映画が大好きなのは、
中村:良いですね。サリエリのやつ。
富野:絶対ね、モーツァルトってああだったと思うわけ。俗物で。
で俗がね、これが出来るんだと分かって来た時に、あ。また余分な話するところだった。
現代なら、モーツァルトも「俺の尻を舐めろ」なんて曲を作った! と炎上するかも?
中村:(笑)。でも監督ね。ちょっと横道それますけれど、今やっぱり才能のある人も品格とか求められちゃうじゃないですか。それはおかしくないですか。
富野:だからおかしい。だからモーツァルトなのよ。
中村:そうなんですよ、だからおかしいですよ。なんで才能のある人は良い人でなきゃいけない、社会に貢献する人でなければならない…だって、その才能自体が人類のためなのに、いいじゃないですか滅茶苦茶でも。
富野:それもあるし、それから人間てね、滅茶苦茶でなかったらね、天才的な仕事できないんだよ。
中村:おっしゃる通り。
富野:(小声で)吉田美和さんそうじゃない?
中村:あのー、ここでは言えないですけれど、滅茶苦茶です。
(間髪入れず『G』が流れ始める)
中村:その滅茶苦茶なぼくらにね、監督が依頼してくれた『Gレコ』のテーマソング聞いていただきます。『G』。
『Gレコ』キャラと吉田さんの歌い方の関連性
中村:『Gレコ』のテーマソング聞いていただいていますけれども。大丈夫だよ流しといて(笑)。サーっと流しといて。
吉田がちょっと冷静に歌っているというか。カームダウン、英語で言うんですけど。そういうふうに歌っているのは、『Gレコ』の登場人物にすごく似ているなと思って。
富野:ああ! だからなんだ、俺気に入ったのはそこか。
中村:『Gレコ』の登場人物って、ふだんはそんな燃えてないんですよ。
富野:そうそう。
中村:結構ライトで軽くて、まあなんか熱血漢でもないんです。ただ戦闘とかミッションを与えられたら、もう火の玉のごとく戦い、動くわけじゃないですか。それがね、音的にも今回出せたなって。
富野:(拍手)
『Gレコ』キャラと現代人の関連性
中村:でも『Gレコ』の登場人物って不思議な人ばっかりと思っていたら、まさに今の人たちなんですよ。
富野:へぇー!
中村:みんなカームダウンなんですよ、意外と。冷静で。
それでいっきょにいろんな情報を頭に入れているんで、その分析にも時間がかかるので感情的になっている暇がないんですよ、今の人たちっていうのは。若い人たちばかりじゃないですよ、我々の世代も含めて、いわゆるオンラインの人たち。
富野:本当中村さんさ、そういう解析がすごいねぇ、上手ねぇ。
中村:上手(笑)。
富野:ぼくそういう風に分析できないから、グダグダしてるんだけどね。
『G』を作るうえで
中村:だから監督は、才能のあるエリアの人で、ぼくはそれを吉田と共に今回はフォローする、
富野:そうかなあ。
お中村:仕事を頂いて、毎回ヒヤヒヤしているんですよ(笑)。
富野:俺才能があったらもう少し楽していたと思うんだけどな(笑)。
中村:そんなことない。才能がある人は才能ある人で大変でしょうけれどね。
でも本当にやっぱりぼく、取材で何べんも言ってますけど、素晴らしい主題歌、素晴らしいエンディングを『Gレコ』は積み重ねてきたじゃないですか。
だからファンの中には「ん?」という方もたくさんいらっしゃる。それを重々分かったうえでね、ぼくらはあえて胸を張ってこれを劇場用にやっぱり注ぎ込みたいという気持ちで作りましたからね。
富野:そう。だからそれが分かっているから、今その3本目はどういう風に使うかってかなりキツイのよね。(文字起こし「3」に続く)
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ドリカムファンの皆様へ。『GのレコンギスタII「ベルリ 撃進」』で、ドリカムが曲を歌う意味。
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