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奥田誠治さん著『アニメの仕事は面白すぎる』での、富野監督への言及が興味深い [富野監督関係]

 お久しぶりです。えー。

 本当に久しぶりだな…。ひとつお付き合いのほどを。

 先日当ブログの記事『古(いにしえ)の「ガンダムSF論争」を再構築する13のフラグメンツ』にコメントをいただきまして。
 
 そこで、奥田誠治さんが書いた『アニメの仕事は面白すぎる 絵コンテの鬼・奥田誠治と日本アニメ界のリアル』(出版ワークス、2019年)の中で、富野監督に触れている部分がある、との情報をいただきまして。


アニメの仕事は面白すぎる 絵コンテの鬼・奥田誠治と日本アニメ界のリアル

アニメの仕事は面白すぎる 絵コンテの鬼・奥田誠治と日本アニメ界のリアル

  • 作者: 奥田誠治
  • 出版社/メーカー: 出版ワークス
  • 発売日: 2019/12/20
  • メディア: 単行本



 これはさっそく読んでみたいと、価格をチェック。
 1800円とややお高めだったので、札幌の一番大きい図書館から近くの図書館まで取り寄せました。このシステムは便利だ…


 さて奥田さんといえば、『鉄人28号』の時代からアニメに参加しているクリエイター。

 個人的には『ドリームハンター麗夢』、横山光輝版の『三国志』(FENCE OF DEFENSEの歌好きでした)、そしてなんといっても総監督を務められた『超獣機神ダンクーガ』が思い出されます。


ドリームハンター麗夢alternative1 (ヴァルキリーコミックス)

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  • 出版社/メーカー: キルタイムコミュニケーション
  • 発売日: 2013/10/16
  • メディア: Kindle版




 で、『アニメの仕事は面白すぎる』。
 富野監督の話題と言っても、多分数行なんだろうと思っていたら。

 第9章「第2期吉祥寺時代」の中で、「『∀ガンダム』参加と富野氏」と、わざわざ小見出しだが・設けられています。

 思ったより、ずっとしっかりと言及していた…

 興味のある方はぜひ読んでいただきたいのですが。
 内容は

 勇者ライディーンで喧嘩した

 ∀の制作環境羨ましい(予算など払いの面)

 『∀』で描いた絵コンテが全面直しされてた。
 直されたことを制作担当に聞くと、他の人のコンテも全部直しているとのこと


 などなど。
 他にも


 富野監督のコンテはスケジュールを守るだけで素晴らしいものではない、

 NHKの番組(ブログ主注・おそらく2009年にNHK BS1で放送された「週刊・手塚治虫」のこと)で・好きなアトム回として「青騎士」を上げていたが、その富野コンテは原画担当だった奥田さんと吉川惣司さんが描き直したものだ、

 同僚などから「富野氏」と呼ばれている理由、


 と、面白い話題ばかりでした。
 まあ「青騎士」の時、まだコンテ切って20本目くらいだからな…


 参考までに。
 『勇者ライディーン』において、奥田さんが絵コンテで参加したのは第4話「大マドン東京全滅」。
明日香麗初登場の回じゃない? 違うかな。

 それ1回きりなので、喧嘩別れして、その後長浜さんに監督が変わっても関わらなかったんですね。

 『∀』では39話「小惑星爆烈」、42話「ターンX起動」、45話「裏切りのグエン」、46話「再び、地球へ」、48話「ディアナ帰還」と後半立て続けに5話、担当しています。誰か抜けたんだろうか…(46、48話は斧谷稔と連名)。


富野監督の「コンテ」に対する考え方


 ところでコンテを直されたことについて、奥田さんは「アニメ界で出世を極めてしまった彼の道楽に付き合わされたのだろうか……?」(同書、147P)と書かれています。


 富野監督はコンテについてどう考えているのか?

 一ファンの立場から、富野監督はなぜコンテに修正を入れるのか、監督の著作からその理由を手繰っておきましょう。

 富野監督はコンテ主義と言える映像作家です。
 キャリア初期は分からないけれども、年月を経てからは、その特徴は著作において顕著です。

 例えば『映像の原則』(キネマ旬報社、2002年)では冒頭の「総論」において、さっそくコンテについて書いています。
 それほど重要視しているということです。

 またしっかり「コンテ」について章を設けています。
 そこから引用しましょう。


コンテというよりも、映像作品は色々な要素が凝縮されたものですから、書き下ろし的に完成することはまずないのです。ありえない、と断定しても良いでしょう。(多少の例外はあります)
(中略)
チェックする立場のスタッフが無能か無神経か、作品に対して情熱を持っていない人であれば、コンテの修正は行われることはありませんので、これにも気をつけるべきで、安心してはなりません。
(中略)
コンテは、コンテ・マンのクリエイターとしての覚悟が投入されているものですから、そのようなものをチョット見ただけで、あれを直してこれを直せ、俺が直してやるというのは無礼千万なことです。
(中略)
他人のコンテを全部直してしまうという悪評のあるぼくですが、上記のように認めたコンテは過去に数本ありますし、全部書き直すのは極端にしても、直しを入れる場合は、一部を直しただけでは全体のバランスが崩れてしまいますから、全直しになってしまうというのは、当然の帰結なのです。(双書、204-205P、太字ブログ主)


 『「∀」の癒し』(角川春樹事務所、2000年)からも、次の箇所を引用しておきましょう。


(前略)そして、シナリオのオーケーをだしたら、それをコンテ・マンにわたして、コンテにしてもらう。そのコンテを修正するのが、ぼくのメインの仕事になるのだが、ぼくの場合は、このコンテの加筆修正をすることで、創作上のワーキングの大半がおわる。
なぜなら、コンテでフイルムに現れる表現の70パーセントを支配してしまうのだから、おわったとするのだ。
(中略、この後この70%という数字はさきまくらさんと確認したというエピソードも出てくる)フイルム作業のプロセスで、ぼくが一番好きな作業はフイルム編集なのだが、今回はこれも担当演出にまかせた。他人に手渡したくない作業なのだが、『∀』では、映像のならびが重要だったので、ぼくは、コンテの加筆訂正と執筆に重点をおいたのだ。(同書155-156P)


 ちなみに、『映像の原則』の引用部分。
 最後の中略後には小見出しがついているのですが、それは「他人のコンテはやたらに直してはいけない」です。

 実際にコンテを直された方からすると、何を言ってるんだということになるでしょうが(笑)。

 ただ、どうして全直しをするかの説明はされていると思います。

 また基本的に、少なくとも『∀』の時には、コンテは直すのを前提にしていることが、この文章から伺えるのではないでしょうか。もう、コンテの「加筆訂正」と執筆に重点をおいた、と書いちゃってますからね。


話題は奥田さんの『アニメの仕事は面白すぎる』に戻って…


 『アニメの仕事は面白すぎる』に出てくる富野監督関連の話、全体的にかなり辛めに書かれています。

 特にライディーンの喧嘩の理由については、その随分前の章で・別な監督について「記憶力がいいので、後で言った言わないで争うことがない」旨が書かれていて。

 本書いわく、富野監督との喧嘩の発端はまさにそれなので。伏線として効いている(笑)。


 富野監督ファンであるぼくでも面白く読んだのは、

 「勝ち組になると過去まで遡って優秀だったと評価される」だったり、
 『∀』で若手に紹介された時に、内心卑下してみたり、

 また別章ではあるが・サンライズ作品にて出崎さん、次いで奥田さんが参加する可能性があった事に触れて(結局辞退した)、「結果サンライズでは高橋良輔、富野由悠季の後塵を拝することとなってしまったのだが…」

 などと書いているところが、なんだか(失礼ですが)愛らしく読めてしまえるのです。

 また昔読んだ手塚プロ関連の書籍で(どの本か忘れてしまった)、大卒がたくさん入ってきてスタジオの雰囲気が変わった、みたいなことが書かれていて。
 富野監督について触れた奥田さんの文章にも、「(当時は大卒は希であった)」の短い文章があるので、やっぱりそんな雰囲気の変遷があったのかなあと想像したり。

 全体的に面白く読めるんですよね。


 ところで富野監督のコンテについてなのですが、「スピードは早かったが、内容はそうでもなかった」と評価する業界人の声を、以前にもどこかで読んだ記憶があります。全仕事だっけ? 忘れた。

 まあアニメを見ただけでは、ぼくにはコンテの良し悪しなんて分からないし。
 正直、「富野監督らしさ」なんてものも。

 前にも書いたことがあるけれど、大昔のあるアニメ本で。

 ファーストガンダムの頃に、「いつも演出が印象的な回がある。調べてみたら、絵コンテは全部富野監督だった」というような「伝説」が書かれていて。記憶あやふやだけれど、書いたのは著名なアニメライターさんだったかな。

 読んだのはもう20年以上前だけれど(発刊されたのはもっと前)。
 その時もぼくは、このエピソードを眉唾ものと思ってしまいました。

 今回の奥田さんの本を読むと、特に初期の作品では・富野監督名義のコンテであっても、実際には別な人が手を入れている可能性があるだろうし。

 逆に近年の作品では、別な人のコンテであっても、実際には富野監督がほとんど手を入れているのではないかと思えます。

 だからまあ、少なくともぼくは「この回のコンテは〇〇さんだから」のような評論は避けた方が無難だな、実情を知ってる人が読んだら失笑される可能性があるな、と思っていて。
 今後も避けていこうと考えています。


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