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Gレコ・純粋恋愛批判 [富野監督関係]




 どうも。Gレコ放映終了してからもう1年たつのか…

 語りたいことはまだまだあります。今回はそんな中の1つ。タイトルはシャレ? なんで、あまり深く考えないでください。

 Gレコが始まる前。
 アイーダとベルリが姉弟設定で・そして韓国ドラマの要素も取り入れていると事前に知っていて、しかもベルリがアイーダに一目惚れする展開を見たら、この2人の恋愛関係がどのように進展するのか非常に興味がありました。

 「恋愛」を中心に展開を考えると、普通だったら「姉弟だった」と分かった所から、物語は本格的に動き出すはずじゃないですか。
 そこからが本当のドラマのスタートですよ、普通なら。

 姉弟でも愛を貫き・2人で逃避行か。お互い好きでも泣く泣く別れるのか。実は姉弟ではないことが分かってハッピーエンドなのか。
 どのゴールにも辿り着けます。

 ところがGレコは、本来ならドラマが始まる「姉弟だった」と判明した所で、2人の恋愛関係は終るんですよ。

 しかも、ベルリの一方通行。アイーダにいたってはベルリからの想いに気付かないまま。
 実は、恋愛ドラマが始まってすらいない。

 勝手にベルリの中で始まって・終っている。これは恋愛ドラマと呼べるのだろうか。

 そもそも、設定を思い直してほしい。
 

 めぞん一刻直撃世代としては、

 「恋敵は決して劣化することのない、むしろ美化されていく死者」というだけでワクワクするし、



 しかも「自分の大事な存在を殺した人間を愛せるか」というのは一本の映画になるほどのテーマだし、

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 姉と弟の恋愛関係なんて、深刻にも・アニメ界ではライトにも扱えるインセクトタブーも取り入れているし、

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 しかも「憧れの年上のお姉さんと、活発な女友達」なんてラブコメにはおあつらえ向きな三角関係(カーヒルを入れたら四角関係)まで用意されていながら。


 2人のラブコメ的展開がこうまでハネずに、姉弟と分かった時点で終了するなんてことがあるでしょうか。
 いや、実際にそうなったのですが。

 これは、職人技で設定はてんこ盛りにしたけれど、いざストーリーが始まると制作者の興味が別な方向に向かったので放り投げられてしまったのでしょうか。

 断っておきたいのは、見た方にはもちろんお分かりでしょうが、Gレコで魅力的な恋愛関係が描かれていないわけではありません。

 バララとマニィとマスクの三角関係は描かれていたし、
 無邪気なラライヤと・リンゴとケルベスは短い描写ながらも面白かったし、
 天才とミックは最終的に良い感じのカップルになったし、
 妊娠したクンはいるし、サブキャラの恋愛事情は結構魅力豊かに描かれているんです。

 何故設定がお膳立てされているのに、一番重要なキャラクターであるベルリとアイーダだけは尻すぼみになってしまったのか。

 富野本人は、「自分がアイーダはカーヒルと寝たと勘違いしていたから、キャラが沈んでしまった」みたいなことを言っていたけれど、それが原因なのでしょうか。
 ネットで「富野は処女厨」とか書いているのも見かけたけれど、アホか。
 かつて、主人公とライバルの心を死ぬまで縛り続ける「永遠の女性」を、売春婦に設定した人間のどこが処女厨なんだ。

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 ベルリとアイーダの恋愛展開が尻すぼみになったのは、他に理由があるのではないでしょうか。

 現実的な問題としては、ベルリにカーヒルを殺させた時点で、この2人の恋愛的展開は放棄されたと考えるべきでしょう。

 先ほど「1本の映画になるほどのテーマ」と書きましたが、逆に言うと、本線の話は別にあるのに・26話程度で収められる話ではないのです。「自分の大事な存在を殺した人間を愛せるか」というテーマは。

 そもそもGレコの世界では、これだけ要素が揃っているのに、ラブコメディ的な恋愛はほぼ許されない世界です(だからリンゴとケルベス偉い)。

 Gレコ世界の「愛」の大半は、ちっとも美しくなければコメディにもならない。

 マニィはマスクへの愛が故にベルリ(親友の想い人)を殺そうとするし、バララは嫉妬も手伝ってユグドラシルで大量虐殺。
 マッシュナーは愛のためにおかしくなって、同僚を道連れにしてしまう無茶な行動。

 そもそもアイーダが大好きなカーヒルだってアイツ、良い男ではないでしょ。いや、ルックスではなく。
 落下するラライヤは放っておいて、機体を回収する男だよ。ぼくが考えるカーヒルって、自分のステップアップのために、アイーダをたらし込んだ下衆な野心家です。
 アイーダの地位を目当てに、その愛を利用している男ですよ。
 
 だからこそ主人公のベルリは、恋愛からは切り離される。
 それでこその富野作品の新たな主人公です。「愛のために戦う」なんて、視聴者はそんなもんで心動かされますか? ニヤニヤ。

 10話で「恋を知ったんだ、誰が死ぬもんか!」と叫んだ少年は、しかし物語中盤の16話でアイーダとの姉弟の関係を知り、恋愛感情から切り離される。

 まだ10話もあるのに…姉萌えの展開なんか、もうない。

 恋愛感情から切り離されたベルリは・だから最終回で、アルケインやダハックといっしょではなく単機で大気圏に突入して、マスク・マニィのカップルと戦う。

 そして最後はノレドといっしょではなく、独りで旅に出る。

 彼は、恋愛が素晴らしいことばかりではないGレコ世界の人間なので、独りで大人となる旅に向かうのです。

 そして同時に、ラストシーンにおける・憑き物が落ちたかのようなマニィとマスクの2人の姿は、Gレコ世界の変容です。
 「恋愛が素晴らしいことばかりではなかった」Gレコの世界でも、戦争が終れば恋愛を肯定的にとらえられる世界へと変わる、そのアイコンとして2人の姿は映し出されるのです。



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