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富野監督の『映像の原則』は合っているのか、「映画の教科書」を見て検証する [富野監督関係]




 こんばんわ。みんな大好き。

 さて、ちょっと時間が経ってしまったが、今回は『映像の原則』改訂版発売記念。


映像の原則 改訂版 (キネマ旬報ムック)

映像の原則 改訂版 (キネマ旬報ムック)

  • 作者: 富野由悠季
  • 出版社/メーカー: キネマ旬報社
  • 発売日: 2011/08/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



 富野監督の『映像の原則』は合っているのか、「映画の教科書」を見て検証する


 です。

 『映像の原則』で有名な、というかよく取り上げられているのが、例の上手・下手のお話。
 分かりやすいし、アニメにも実写にもゲームにも応用できる、本当に「原則」だからだろう。

 でも、ちょい待ち。富野の言っていることは本当なのか?

 この原則、『地球光』『月光蝶』をテキストにして、富野自身がインタビューに答える形で説明していたこともある。
 また富野関連ブロガーさんの中でも、『逆襲のシャア』を題材に力作を書いた人もいる。

 だが富野作品以外で、富野監督が説く上手・下手の原則を検証した人って、ぼくは見ていない。

 んじゃ、私がやりましょう。

 最初は、誰からも文句が出ない『七人の侍』の戦闘シーンで検証しようと思っていたんですが、こればっかりは、元の映像を見てもらわないと説明しても徒労だと思うので。

 そこで、映画の教科書ことエイゼンシュテインの『戦艦ポチョムキン』から、例のオデッサの階段シーンで検証することにしました。
 この映画なら、「なんでこの映画にしたんだよ」って文句も出ないだろうし、何よりオデッサってガンダムファンにも馴染みがあるしな。
 『映像の原則』の中でも紹介されているし。

 ではまず、『映像の原則』から上手・下手の特徴をまとめておきましょう。

下手(観客から見て左側)
 弱い人(けど、いつかは頑張る人かも)    
 正義の人物                                                 
 ヤバい・まずい・怖い
 悲しい・苦しいなどマイナス感情を誘発                
 弱者、虐げられているもの            
 逆行する印象があるので、そのものが強い

上手(観客から見て右側)
 強い人・大きなもの
 右から来る悪漢
 正義の人物が勝って右手に立つと本当に強い人に。
 (観客が)寛容に存在を認められる
 当たり前にくるもの・舞い降りるもの


 では、見て行きましょう。
 7分くらいありますが、サイレント映画でも面白いですし、何より映画史上知っていて損のないシーンですから、未見の方は是非ご覧下さい。



 さて、まず。逃げていく群衆に続き、軍隊が奥から出てきます。階段をおりていきます。

 『映像の原則』には、上から下に行くのは「自然的に強い。怖い。圧倒的印象」とあります。これはバッチリ合っていますね。

 今度は左から右に群集が少し流れて、ややアオリの映像になります。ただしロングサイズです。

 ここからしばらく、群集の流れはほぼ正面から捉えられています。

 正面からこちらに来る動きは、『映像の原則』の中では「訴え印象。自己主張。動きに強制感がある」とあります。
 攻撃から逃げていますから、「強制感」は当てはまるかもしれません。

 次に群衆の流れは左から右になります。
 しかし人の流れに合わせて、カメラも移動しているので、群集は絶えず上手に行けない(左に位置する)ことにます。まさに「ヤバい・まずい・怖い」などを表現しています。
 
 おお、ここはいい感じだぞ、富野の『映像の原則』!

 その後、左から右に逃げる人が続きます。弱い人が上手に行く(安心)、ということですね。

 やがて子どもが死んで、母親のアップが映ります。
 『映像の原則』には「アップ・サイズになるにしたがって強い」とあります。この場面で言えば、母親の強さMAXです。

 子どもを抱いた母親は階段を上がっていきます。
 右から左へ、しかも下から上への移動です。

 「自然的に強い印象」である上に、下から上に行くのは「極度の逆行だから強い印象」です。
 ここでの母親は、確かに意思的にも「強い」のです。

 軍列の「足」が、左から右に流れていきます。ここは『映像の原則』に従えば逆の感じがしますが、最初が「左から右」の動きだったので、途中で変えたらそれこそおかしなことになってしまいます。
 ちなみにこのシーンを見ると、『映像の原則』にあった「画面の張力」なんて言葉を思い出してしまいますが、それは本題ではないので置いておきましょう。

 母親が銃で撃たれた後、並んだ銃口がアオリで映し出されます。
 アオリは「強い印象。怖い印象」です。

 ここまでにしておきましょう。

 この後、階段をベビーカーが落ちていくシーンがあります。後にデ・パルマが『アンタッチャブル』で頂戴したシーンですね。
 
 
 どうだったでしょう。

 ぼく個人の感想は、「けっこう『映像の原則』は正しいんじゃねーの」って、まあエラソーですけど思いました。

 皆さんはどう思われましたか?
 






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