富野監督の『映像の原則』は合っているのか、「映画の教科書」を見て検証する [富野監督関係]
こんばんわ。みんな大好き。
さて、ちょっと時間が経ってしまったが、今回は『映像の原則』改訂版発売記念。
富野監督の『映像の原則』は合っているのか、「映画の教科書」を見て検証する
です。
『映像の原則』で有名な、というかよく取り上げられているのが、例の上手・下手のお話。
分かりやすいし、アニメにも実写にもゲームにも応用できる、本当に「原則」だからだろう。
でも、ちょい待ち。富野の言っていることは本当なのか?
この原則、『地球光』『月光蝶』をテキストにして、富野自身がインタビューに答える形で説明していたこともある。
また富野関連ブロガーさんの中でも、『逆襲のシャア』を題材に力作を書いた人もいる。
だが富野作品以外で、富野監督が説く上手・下手の原則を検証した人って、ぼくは見ていない。
んじゃ、私がやりましょう。
最初は、誰からも文句が出ない『七人の侍』の戦闘シーンで検証しようと思っていたんですが、こればっかりは、元の映像を見てもらわないと説明しても徒労だと思うので。
そこで、映画の教科書ことエイゼンシュテインの『戦艦ポチョムキン』から、例のオデッサの階段シーンで検証することにしました。
この映画なら、「なんでこの映画にしたんだよ」って文句も出ないだろうし、何よりオデッサってガンダムファンにも馴染みがあるしな。
『映像の原則』の中でも紹介されているし。
ではまず、『映像の原則』から上手・下手の特徴をまとめておきましょう。
下手(観客から見て左側)
弱い人(けど、いつかは頑張る人かも)
正義の人物
ヤバい・まずい・怖い
悲しい・苦しいなどマイナス感情を誘発
弱者、虐げられているもの
逆行する印象があるので、そのものが強い
上手(観客から見て右側)
強い人・大きなもの
右から来る悪漢
正義の人物が勝って右手に立つと本当に強い人に。
(観客が)寛容に存在を認められる
当たり前にくるもの・舞い降りるもの
では、見て行きましょう。
7分くらいありますが、サイレント映画でも面白いですし、何より映画史上知っていて損のないシーンですから、未見の方は是非ご覧下さい。
さて、まず。逃げていく群衆に続き、軍隊が奥から出てきます。階段をおりていきます。
『映像の原則』には、上から下に行くのは「自然的に強い。怖い。圧倒的印象」とあります。これはバッチリ合っていますね。
今度は左から右に群集が少し流れて、ややアオリの映像になります。ただしロングサイズです。
ここからしばらく、群集の流れはほぼ正面から捉えられています。
正面からこちらに来る動きは、『映像の原則』の中では「訴え印象。自己主張。動きに強制感がある」とあります。
攻撃から逃げていますから、「強制感」は当てはまるかもしれません。
次に群衆の流れは左から右になります。
しかし人の流れに合わせて、カメラも移動しているので、群集は絶えず上手に行けない(左に位置する)ことにます。まさに「ヤバい・まずい・怖い」などを表現しています。
おお、ここはいい感じだぞ、富野の『映像の原則』!
その後、左から右に逃げる人が続きます。弱い人が上手に行く(安心)、ということですね。
やがて子どもが死んで、母親のアップが映ります。
『映像の原則』には「アップ・サイズになるにしたがって強い」とあります。この場面で言えば、母親の強さMAXです。
子どもを抱いた母親は階段を上がっていきます。
右から左へ、しかも下から上への移動です。
「自然的に強い印象」である上に、下から上に行くのは「極度の逆行だから強い印象」です。
ここでの母親は、確かに意思的にも「強い」のです。
軍列の「足」が、左から右に流れていきます。ここは『映像の原則』に従えば逆の感じがしますが、最初が「左から右」の動きだったので、途中で変えたらそれこそおかしなことになってしまいます。
ちなみにこのシーンを見ると、『映像の原則』にあった「画面の張力」なんて言葉を思い出してしまいますが、それは本題ではないので置いておきましょう。
母親が銃で撃たれた後、並んだ銃口がアオリで映し出されます。
アオリは「強い印象。怖い印象」です。
ここまでにしておきましょう。
この後、階段をベビーカーが落ちていくシーンがあります。後にデ・パルマが『アンタッチャブル』で頂戴したシーンですね。
どうだったでしょう。
ぼく個人の感想は、「けっこう『映像の原則』は正しいんじゃねーの」って、まあエラソーですけど思いました。
皆さんはどう思われましたか?
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