今更『ゼーガペイン』感想・レビュー [アニメ周辺・時事]
そう、分かっていた。
「ロボットのコックピットという狭い密室空間に、男女2人がいっしょにいる」。
その設定は非常に女性キャラを魅力的にさせる。
しかし、例えば『閃光のハサウェイ』のハサとギギのように、「偶然に・たまたまいっしょになった」ではイカン。
生死を共にする相棒・パートナー感が出ないからだ。
戦闘の際には常にいっしょ、でなければいけない。
なぜ「ロボットのコックピットという狭い密室空間に、男女2人がいっしょにいる」と、その女性キャラの魅力が増すのか。
あたかも、狭い車中の男女の仲が縮まるのではないか、と錯覚するのと同じように女性キャラを身近に感じる。助手席の彼女の横顔がいつもよりキレイでは、と思えるように女性キャラは魅力的になる。
あっ。ぼく車持ってないから、今の例えデタラメ? まあいいや。
そもそも、キャラとキャラの距離(立ち位置)は、おおむね心理的距離と比例する。
まあ、現実世界でもそうかもしれないが。
ホラ、込んでいる地下鉄の中でも、ぼくの隣の席だけは空いているでしょ? そういうこと。みんなオマエが気持ち悪いから離れるんだよ。
うるさーいっ。黙れっ。
逆に言えば、キャラ同士の距離によって、ギクシャクしているのか・好き合っているのかが暗喩される。
男女のキャラが常に近くにいれば、視聴者は「この2人は互いに憎からず思っているのだろう」と、例え言葉にはできなくても無意識の中で理解する。
ロボットのコックピットは概ね狭いので、その中にいる男女には、当然親密感が生まれる。
そして男性視聴者は、たいてい男性キャラに感情移入するものだから、女性キャラを近しく感じる。
更に男女ペアは戦闘しているから、生死を共にしている。
文字通り「運命共同体」なのだ。
そこに、魅力がプラスされる。
『ダンバイン』のチャム・ファウの人気があったのも、もちろん小さくて可愛かった、ということもあろうけれども、ショウといっしょに戦闘していたのが大きかったと思う。
だから、「複座の操縦席」(狭くなきゃダメだよ)という設定のロボットがもっと多くていいと思うんだけど、実はないんだよね。
ファイブスターのMHくらい? あとゼオライマーって複座だっけ?
まあ、メジャーなのはファイブスターくらいだよね。
だから『ゼーガペイン』を見た時、「やっと来た!」と思った(本題もやっと来た)。
しかも、しかもだ。
まあ未見の人に・ネタバレしないように・難しい・ネタバレなしは難しい・えーと・なるべくネタバレ少ないように。
もう1回文章にリズムつけるために。
しかも、しかもだ。
ただでさえ魅力的な戦闘パートナー(女性)が、コックピットの中でだけ自己を取り戻せる、という悲劇が加わる。
あえて冷めた書き方をすれば、バツグンの設定。
本当に脱帽、この設定を考えた才人に最敬礼だ。
素晴らしい。
戦いの時だけ自我を取り戻せる、という悲劇は、ロボットアニメの中で考えうる最高の設定の1つだと思う。
惜しむらくは、「コックピットの中でだけ幻体化できる」とした方がもっと悲劇性が増したのではないかと思うのと(日常生活の感情なしバージョンはいらなかった)、もうちょっとこの悲劇を掘り下げるエピソードがあっても良かった点。
しかしそれでも、『ゼーガペイン』は充分に素晴らしい。
まず、そもそもの世界観がいい。
小学3年生の時、乱歩の「昼は幻 夜の夢こそまこと」という言葉に感銘を受けたぼくとしては、あ、ウィキペディアには「うつし世はゆめ よるの夢こそまこと」と書いてあるが、ぼくが読んだのは子ども向けの本だったせいか「昼は幻 夜の夢こそまこと」だった、そんなぼくとしては『ゼーガペイン』の世界観にまず痺れる。
全員が等しく不幸を背負っている、しかし物語がシリアス一辺倒にならないバランス感覚も良い。
そう、この作品はバランス感覚にも優れていて、世界の秘密と悲劇、そして友人とのいざこざや恋愛といった日常のささいな問題が、同じ土俵で語られる。
さらに面白さの度合いが、序盤はスロースタートで、終盤になるにつれて加速度的になるのもいい。
敵の本拠地に向かう終盤数話は、本当に盛り上がる。
「一進一退しながら、敵の本拠地に向かう」ラストストーリーが盛り上がるのは、このブログを読んでいただいている富野ファンならすでにご存知ですね。
またバランス感覚の良さは終盤戦でも現れていて、戦闘一辺倒になるかと思いきや、あるキャラクターとの問答の場面も入る。
人によっては、終盤戦で何回かある問答場面が不要という人もあろうが、それは子ども。
アンコに塩、みたいもんで必要なのだ。
キャラクター造形も良い。
ちょっと、ルーシェンだけは明らかに「狙っている」ので、好ましくないが。
あとキョウのデザインがあまりに熱血タイプ過ぎるので、以前は理知的だったと言われても、というのはあるかな。
作画も全般通して良好。なんかぼく、偉そうだな。
まあいいや。良好。
回によっては、あまりにも女の子が可愛いタッチになることもあったが(リョーコちゃんが別人みたいに可愛くなっている回があった)、まあそれもテレビアニメの特徴で、オタクにとっては楽しみの1つにもなるので良し、だと思います。
最後に特筆すべきはEDの歌。頭に残るし、『ゼーガペイン」の世界と合っている。
さて、ここまで書いてきたが、実はぼくは。
まだラスト2話を見ていない。
ぼくは、おいしい物は取っておくタイプなのだ。
休日前の夜に、ゆっくりと幸せな時間を過ごそう。
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