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NHKラジオ 渋谷アニメランド「今、ガンダムから送るメッセージ」 富野発言部分全文字起こし(宇野さん編・2)ラスト

 『セーリングフライ』流れ終わって。

 
富野
あのー、この曲はホント、7、8年に1回発作的に聞きたく

ステージ上
発作的に(笑)

富野
なる曲で、好きですねえ。で、なかなかこういう気分になれない。

宇野
なれないですか。

富野
うん、なれない。


 司会が、富野にとっての『イデオン』の位置づけを聞く。


富野
自分の能力がないことを証明した作品です。
(ちょっとの間)
皆殺しというのは要するにタブーなんですよ、禁じ手なんですよ。
結局、ガンダムの後に作るものに、その手法しか、自分が出せなかったっていう意味で敗北感がものすごく深かったですね。


 司会が「監督のストーリーつくりが引っ張られていったということですか?」


富野
違う違う。要するに、アイデアが、他のものが、アイデアを思いつけなかった。作家っていうのはもう少し、バラエティーに富んで、うん、しぶとく色んなジャンルの物語が書けなくちゃいけないのが、皆殺ししかできなかったっていう意味では本当にむ、無残だったなっていう記憶がいまだに、これはえーちょっとぬぐ、拭えませんね。
あの頃は本当に作家になりたかったから。
悔しいですね。ただうん(笑いながら)とても好きな作品です。

司会
1曲今日は富野さんにも曲を選んでいただいているんですが。

富野
はい。

司会
どんな曲ですか。

富野
だからそれが覚悟しまして、

司会
はい。

富野
えー、手持ちのものだと、ちょっとマズいんで、この曲にしました。どうぞ。です。ふふふふ。


 「あまちゃん」の曲。会場爆笑。


 司会がなぜこの曲かたずねる。


富野
あのー、別に(自分で笑いながら)この番組がNHKだから、あまちゃんを持ってきただけではなくて、この1、2ヵ月ぼくにとってそれこそ今ここで話しをした、ようなことを、そのー考えている年寄りにとってとにかく息をつかせる、お話だから。
それで、お話だけじゃなくってこのテーマ曲も、あーそういう意味で、なるほどツボにはまった時にはこれかよー作り手は怖いところにくるよねーってくらい見事にハマっているという意味で。要するにものを作る、つまり作品を作るっていった時に1番憧れる、ところに今あるのが『あまちゃん』。…の

司会
もう少しこう教えていただければ…どういう形に憧れる?

富野
いやだから、まさにツボにはまったもので、公共に向けて語られる・表現すべきものっていうのはこう、こうでなくっちゃいけないということです。どういうことかと言うと、だって翳らない(限らない?)でしょ『あまちゃん』見ててって(ママ)。えーとこれはあのー宮藤あ、宮藤官九郎さんの、おそらく作劇…論が、優れている、というように思えます。
それでどういうことかというと、あ、言ってしまえば360度からの視点を1つの劇、に集中させているっていう作り方をしている。で、その上で今度は演出陣もスゴイんで、えー4人の方がやっているにも関わらずまあ始めのうちはちょっとドタバタしていたんだけれども揃わなくて、特にこのー、えー暑くなってから見ているところではかなり皆さん揃ってきて、それで見事だなと思っているのは、見事だなと思っているし(語調強めて)、逆にNHKだからこいつらホントに図に乗ってるんじゃないのかって思ってムカッとくることも(会場笑)ある…あの、方法があります。
たった3秒1カットのためにエキストラ20人動員してばし、違う場所でロケセットくんで撮るなよっていうくらい、贅沢な撮り方もして、たりするんだけれども、その2・3秒の別カット、の入り方も含めて巧妙なんです。とうことはどういうことかと言うと、1つの目線での物語論じゃなくって、要するに何人もの人の目線がありながら、なおかつあまちゃんの話をどーんとやっている作りはかなり見事ですね。

一同
うん。

司会
宇野さんも『あまちゃん』相当好きですよね。

(以降、宇野さんの話には興味ないので、正確に文字起こすのは勘弁して下さい。趣旨です)

宇野
デビュー作は、ゼロ年代の前の10年の最強の作家はクドカン、みたいな内容。

富野
うん。

宇野
『あまちゃん』は富野がブレンやターンエーでやりたかったことに近い気もする。ガンダムは宇宙に飛ぶけどあまちゃんは潜る。

富野
うん。

宇野
………………(沢山しゃっべている。富野「うん」と何回も頷く)。実際にある南三陸のね、北三陸だっけ。

富野
北三陸。

宇野
北三陸の…(沢山しゃっべている)。あまちゃんの世界は現実と地続き。ガンダムは完全に作り上げた1つの虚構。で、ガンダムは宇宙になんだかんだ飛んでいく話で、あまちゃんって潜る話なんですよね。だからそういう違いはあるかな

富野
(くい気味に)
いや潜る、いやその潜る話のところじゃないと思う。現実との接点、を持ちながらフィクションもやっている、っていう見事さ。

宇野
うん

富野
それで東京に出てきてからいやーもう作品自体が堕落するかもしれないなって恐れてたんだけれども

宇野
いやぼく東京に行ってからの方が好きですよ。

富野
いや、いやだからそうなの。あーこうくるかっていう意味でのその作りの巧妙さ、

宇野
過去編の行き方とかね。

富野
二・三重のその作りこみ。っていうのが、そりゃー見てて気持ちいいですね。
だからこい、何故あれがその今その10…14…正味10、13分半くらいかな、入るんだろうかっていうくらい、ちょっとあの時々寒気がするくらい。

司会
密の濃い…作り方

富野
えーあの、

宇野
密度濃いですね。

富野
情報が、俗に言う情報が入っている。
で、それはやっぱりその役者さん達のコスチューム論にしても、夏ばっぱをやっているえーと宮本信子さんの、あの昼のトーク番組で、どういうつくりをやっているかっていうことで衣装論・をちょっと聞いて、やっぱり舌巻きました。
皆さん方が考えていることがやっぱりなまじでないくらいで、おとうちゃんがいない時にねって、私はねって、夏ばっぱだったらこういうもの着て寝るだろってんでお父ちゃんが下着を着て寝てるとかってんで

宇野
うわー素晴らしいですね

富野
ふわあーってやっぱりね、舌巻くよ。
…すいません、これガンダムの話ですから(会場笑)。

司会
ああいうものに刺激を受けて、富野さんのアニメ作りって何か変わるってことはあるんですか。

富野
それはあのー、ああ、これくらい好きな場合っていうのは絶対に影響されますね。イヤでも影響されます。

宇野
ガンダムダイバーとかなるんですか(会場笑)

富野
そういうことではなくって(しばらく笑い続く)例えばね、面倒くさく言えばリアリズムとフィクションの間での女性性ってのはどういうものなのかなー、えーとこれはアキちゃんだったらこうなんだけれどもーぼくはやっぱり本当はどこかでユイちゃんが好きだからこういうふうに作ろうかな、とか嘘です。

司会
決してガンダム48とか出てくるわけじゃない。

富野
うるせえんだよー!(笑)

宇野
ガンダム総選挙とかやりましょうよ。

富野
(笑)


 ここから事前に寄せられていた質問コーナー(質問は内容・主旨だけ書きます)。


43歳男性。
「ガンダム制作当時に、視聴者に伝えたいと考えていた内容は、34年たった今変わった部分はありますか?」

富野
あのー、変わった部分はありません。それで、そういう意味では、あのー当初の勘が良かったなという風に思っていますし、その36、7年前の気分で言えば、あーやっぱりその元気だった時っていうかな、勢いがあった時っていうのは、は・あるものだし、そういうものに対して自分自身もやっぱりあの寄り添っていきたいと思っていますが、やっぱり37年たつとこれだけ劣化しますということで、ちょっと残念だなと思っています。
…次。



質問者2.
仕事のモチベーションが保てません。志を高く持ち続けるには?


富野
えーと、志そのものを高く持つっていうことは、そのーおそらくあの観念的に大変難しいと思います。だから、それを持つことはあまり考えない方がいいと思います。
ただ、持つべきです。志は。が、えーと日常の雑務に追われていますという部分を、が実言うととても重要な部分で、雑務と思わずに今日自分がなすべきものなんだ、義務でもあるしこれをえーこの実務をなし終えたら自分っていうのは絶対に意味があるんだ、っていうふうに思い続けて下さい。
で、そういうふうにあのー、微かにでもですけれどもそのつまらない雑務に対して前向きな姿勢を持てればおそらくね、えお幾つだっけその人(司会が年齢を言ってなかった)。

司会
えー37

富野
はい。

司会
歳の方ですね。

富野
そのくらいの年齢でしたらね、は、1年だな。1年それ続けときゃぜっったいに次のステップにいける。
ぼく自身がその仕事がなかったりした時に、何をしたかっていう時に結局今言ったことをやりました。
極端な言い方、極端でもないんです、スタジオのあの便所掃除まであの、シリーズの総監督をやっても便所の掃除から始めました。で、そういうことそういうことを周りの人が気が付いてくれなくてもいい、だけどそれが、それができなくって、なんでそのTVシリーズ、を仕切っていけるのかっていうことを、自分に言い聞かせて、本当に何本かのシリーズをやりました。
でそれは、やってみた時に気が付いてくれた人が何人いたか分からないんですが、やった本人は気持ち良かった。それだけで宝です。


最後の質問。48歳女性。
「自分の中のクリエイティビティが失われたと感じる時がありますか? あったらどう対処されますか?」

富野
ぼくは基本的に自分にそのクリエイティビティがあると思ってないので、ずっと失われっぱなしです・したというふうに、に言える部分があります。
でそうは言ってもこれだけ仕事やってきてるんだったら全く皆無じゃないだろうというふうには思ってます。そして、だから皆無じゃないかもしれない時があるんで時々その、まさにアイディアが全然出てこないっていう、微かに意識する時はある。
でそういうことやっぱり今日までで言うと何度かあったはずです。
対処の方法はただ1つです。勉強するしかありません。そして自分の、出来ることならばです、ぼくは出来なかったからこの程度なんです。出来ることならば、1番苦手な学問をする、勉強をするっていうのは、かなりぼくは有効なことだっていうふうに思います。ただ、他の勉強をすることが有効でない場合が1つだけあります。博識になることで、えーと安心してしまうという知識の付き方、勉強ではありませんので、それはお気をつけいただきたい。だから博識である、それからつまりえー、もう1つ分かりやすい例がありました。
えーとよく、語学を、つまり外国語をよく喋れるからってことで安心した瞬間に、私の言葉を持てなくなる。っていう人達がケースとしています。日本人にどうもそういうケースが多いような気がしてます。英語が喋れただけで安心してしまってそれでストップする。
だからそういう勉強の仕方ではないんです。億劫がらずに勉強するということが基本的なセオリーです。それで3年続けないと次のアイディアは絶対に出てきません。悔しいけど。ぼくは。
すいません。
そういう意味では、こちらから…

司会
教鞭もとられている宇野さん…

宇野
いや全然ぼく(以下略)

 その後、「ものづくり」ということで倉田さんにも話がふられる。倉田さんは「でっかいものを作っていたら小さいものを作る」、動き続けるしかない、と。


富野
だからそれは、あのー勉強することっていうのとそれからあのー雑務でもやるっていう、やっぱりその積み上げでしかないと思う。

司会
とにかく目の前のことを一生懸命やる?

富野
いやだから、学習するってのは目の前のことだけじゃないんですよ。自分の意識(?)が届かないところのものも実を言うと学びに行かなくちゃいけないってことがあるわけで。
で、そうするとやっぱりその学びということは、少なくとも学生時代までは要するに貪欲にやるべきだっていうふうに思うんだ、思います。でそれを貪欲にやるというまさにハングリー精神っていうのを今の日本の社会風土がどこまで、その生徒達学生達に教えているのかってあたりが、大人達、がだらしなくなっているかもしれないなって気がしないでもないな、っていう気がちょっとする。


 これで質問コーナー終了。最後に一言ずつ感想。大平さん「(富野は)本質的なことを見抜く力が半端なくて」、倉田さん「(自分に何が起きるかと思っていたが)良く分からなかったので、もう1度」、吉崎さん「歴史上の偉人か何かに会える気持ちでうかがった」。

 最後に宇野さんが、富野作品はこれまで「何々ではない」というものばかりだった、今度は「何々である」という作品を見たい、と言うと。


富野
うーん、どうなんだろう。それはちょっと分かんない。やってみないと分かんない。

宇野
いや、もう、あの…

司会
今後の新作を見て、またどう感じるかと。

富野
うん…

司会
では最後に富野さん、ビシッと。会場のみんなにも伝えて貰いたい…

富野
(くい気味に)いや、そうはいかない。

司会
えっ…

富野
だって、うん、今、なんか、そう。ぼくのような年齢からみると今のアニメ状況ってのがどういう状況になってるか全く分からないから、ビシッと決められないのよ。
(『永遠にアムロ』流れ始める)だけどまたアニメもいつかいいことがあるんじゃないのかな、と期待して頑張りますので、皆さん待っててね、ってそういう言い方ああイヤだ(会場笑)。
そんなこと言えるわけないじゃないか。あ、(ふざけた口調で)命ある限りアニメ人生を送りますので、あと、そのあとの骨はうん、皆さんで〓〓(聞き取り不可)拾っていただきたいと思いますのでよろしくどうぞお願いします。っていうのも駄目だ、駄目だね。

 一同笑い。


富野
えーと、ていうことであの、アニメランド、渋谷アニメランドという名を騙りましたけれどもアニメの話は殆どしませんでした。
が、えーこういうふうにガンダム世代の人が社会人になって一人前になっている姿を見るとホントに嬉しく思いますので、これ以後まだ、まだまだアニメでやらなくちゃいけないことがいっぱいあると思いますし、アニメを糧にしてまた次の新しい時代を作るべく、みんなで頑張っていこう(拍手)。

司会
富野さん、ゲストの皆さん、長い間本当にありがとうございました。

富野
どうも(再び拍手)



 

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