最後のセリフにショックを受けた、ネタバレありの『千年女優』感想・レビュー。~『ひるね姫』を添えて~ [映画感想・実況]
どうも。どうも。珍しく、現在上映中でもない映画の話なんですけれども。
先月、昨年録画したままHDの肥やしになっていた『千年女優』を見ましてね。
初見だったのですが。
ビックリしました。うわっ、と。ぼくは何故今まで、この映画を見ていなかったのか、と。
映画の冒頭から興味を持ちまして。芸能界を引退して、長年人前に出ていない大女優の千代子に会いに行く出だし。
ぼくなどには、千代子の設定は原節子を彷彿とさせましてね。
監督自身は、原節子と高峰秀子のイメージだったそうですが。
あーだからか。
原節子を連想したぼくは、「だったら結婚しないでほしいな」と思ったけれども、高峰秀子のイメージも入っているから監督と結婚したのか、と後で納得しました(勿論松山善三監督はあんな人じゃないだろうけれど)。
ぼくは、原節子は思いを寄せた相手(矢澤正雄氏)との思い出がある鎌倉で隠遁生活を過ごした、という伝説が好きなので、そのイメージに近い大女優に会いに行く、という導入部で惹かれたわけです。
他にも、その後の『蜘蛛巣城』まんまの矢が飛んでくるシーンや、同じく『蜘蛛巣城』に出てくる老婆のような妖女の登場、『君の名は』(当然真知子巻きの方ね)を思わせるシーンなど、映画好きをくすぐるシーンが続いてね。
面白く見進められた訳です。
何より、(劇中での)現実と虚構、現在と過去を混濁させた展開が見事で、面白くて。
「視聴者と同じ視点」の役割のはずの立花と井田すら虚構世界に入り込み、しかもなお千代子を追い続ける「カメラ」足りえるという展開が映画・アニメであり得るのか、と。
すごい、こんなのは見たことないぞ、と感心するやら怖いやら。
個人的な話ですが、実は『千年女優』を見る数日前に、劇場で『ひるね姫』を見まして。また小説では、平井和正本人が自作の登場人物達に邂逅していく『その日の午後、砲台山で』を読み始めていて。
偶然ですが、「現実と空想(夢)がリンクしていく」物語を立て続けに摂取していたのです。
同じアニメ映画で言うと、『ひるね姫』は現実と夢の世界が別々にあって、やがてクライマックスに向けて1つになっていくのに対し。
『千年女優』は、最初から現実と虚構が混濁して一体となり、時には離れて、またくっ付き、そのまま進んでいく。
どちらも良かったのですが、ぼくは『ひるね姫』には納得し、『千年女優』には感嘆しました。こんな見せ方があるのか、と。コイツがセンスオブワンダーってやつかいおいおい。
そして何よりビックリしたのが、最後のセリフ、たった一言で成し遂げたどんでん返しですよ。
『スティング』以来の「やられた」感に打ちのめされました。
現実と映画の世界を自由に行き来しつつ1人の男を追いかけ続け、最後は宇宙に向かった千代子が「だって私、あの人を追いかけてる私が好きなんだもん」と告白します。
うわあ。
長年追い続けた男よりも、千代子はおそらく自分を愛していた。
「万難を排して男を追い続ける私」を演じ続けて、そんな自分を愛していた。
女優だ! コイツ、私生活まで演技していた、気持ち悪いとすら呼べるような女優だったんだ!
このセリフは、そのまま『千年女優』というタイトルにも繋がっていきます。
もうすでに大女優で、歳をとっているのだからおかしな話なんだけれど、「次の大女優」を予感させる若手の登場で終る『イヴの総て』のラストすら脳裏を過りつつ。
たった一言のセリフでこれほどの衝撃を受けたのは、あまり記憶にありません。
良かった…見て良かった映画でした。
よろしければ皆さん見て…って、当ブログに足を運んでくださるようなアニメファンは、とうの昔に見ているんだろうな。
俺、TVアニメは見ている方だと思うし、映画も人並には見ているつもりなんだが、「アニメ映画」が取りこぼしが多いんだよな…
ちなみに、ぼくの『ひるね姫』感想は、おおむね下のツイートのようなものでした。
見終わった後の感想としては、「うん、まあ面白かった…?」くらいでおさまってしまうとは。
— 坂井哲也 (@sakaitetsu) 2017年4月26日
なんでこうなるんだ?
少なくとも監督のこれまでの劇場作の中では、エデンよりも009よりも良かったと思うんだけれどな。
— 坂井哲也 (@sakaitetsu) 2017年4月26日
まあぼくは実写・アニメに関わらず、作品の中心には美男美女がいてスクリーンを支えるべきだと思っているので、その点では不満あるけれども。アニメキャラにしては、と思わない?(笑)
— 坂井哲也 (@sakaitetsu) 2017年4月26日
いや、悪くはなかったです『ひるね姫』。
冒頭はテーマが露骨すぎて、その時点で少し心のシャッターを閉じてしまったけれども。

ひるね姫~知らないワタシの物語~ (1) (角川コミックス・エース)
- 作者: 一花ハナ
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2017/04/10
- メディア: コミック
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