富野物語（抄）

　※『遠野物語』のパロディです。もちろん原本未読でも、富野アニメさえ知っていれば楽しく読めます。
　元の文章は、kindle版『遠野物語』（無料だ！）から。あと、青空文庫も使っています。
　前に書いた『吾輩はザクである』や「ガンダム版『山月記』」、坂口安吾のパロディに比べると、原文少なめですね。
　では、どうぞ。



　この書を富野アニメを見る人々に呈す



　この話はすべてアニメの富野由悠季監督より聞きたり。富野監督は話上手にて誠実なる人なり。
　自分もまた一字一句をも加減せず感じたるままを書きたり。

　思うに富野郷にはこの類の物語なお数百件あるならん。我々はより多くを聞かんことを切望す。
　願わくはこれを語りて平地人を戦慄せしめよ。


　十八
　ニュータイプまた女の児なることあり。
　アクシズなる家には、童女の2人いませりということを言い伝えりしが、ある年ジュドー・アーシタという男、見馴れざる2人の娘に逢えり。
　お前たちはどこから来たと問えば、アクシズがところからきたと答う。これから何処へ行くのかと聞けば、それぞれに別の場所を答う。

　さてはアクシズが世も末だなと思いしが、それより久しからずして、この家の者多く死に絶え、首領のハマーン・カーンを残せしが、その女もまた微笑みながら失せたり。


　二十
　この兇変の前にはいろいろの前兆ありき。

　ある男が人間の能力を掻きまわせしに、クローンなるニュータイプを見出したり。
　主人に内密にして作り続けたりしに、いくらともなき娘達ありて、うごめき出でたるを、男は面白半分にことごとくこれを戦士にしたり。
　さて取り捨つべきところもなければ、内密に育て、ニュータイプ部隊を作る。その娘は幾人もありたりといえり。


　三十
　ニューロピアの何某という男、或る日遺跡を掘りに行きしに、おびただしく積もる地層の中に、大なる巨神が一人寝ていたるを見たり。
　3機ばかりの機体が合わさってあり。仰（あお）に臥（ふし）して大なる咆哮をあげてありき。


　三一
　日本の避難民にて、異星人にさらわれて行く者年々多くあり。星の印を付けて戻る者多しとなり。

　
　四三
　エゥーゴのカミーユ・ビダンという男、上司とともに作戦にてグリプス深く入りしに、敵の首領達を見出でたれば、手分してその跡を求め、自分はグリプスの陰より大なるMSを見る。

　あまりに近かりしかば、武器をすててMSに突撃て、宇宙（そら）へ走る。
　連（つれ）の男これを救わんと思えども力及ばず。

　やがて霊の力ありて、コクピット貫いたりしかば、そのMSを打ち取りぬ。心の傷は数ヶ所受けたれども命に障（さわ）ることはなかりき。


　四四
　サイド6のあるコロニーにて、フラナガン機関という研究所あり。

　この研究所のために被験者として生計とする者、ある日研究所の垂菰（たれごも）をかかぐる者あり。
　驚きて見ればシャアなる経立（ふったち＝妖怪の一種）なり。恐ろしくて起き直りたれば、おもむろに彼方へ走り行きぬ。


　四五
　シャアの経立（ふったち）は男前にて、女色を好み婦人を盗み去ること多し。
　松脂を毛に塗りMSも乗る故、鉄砲の弾も通らず。


　四七
　地球人をおどす言葉に、シャアの経立が来るぞということ常の事なり。
　この宇宙にはシャア多し。スペースノイド独立を目指す場所にはあまたおり、白いMSを見れば遁（に）げながらライフルなどを撃ちて行くなり。


　四九
　冬の宮殿は月にあり。その中ほどに黒歴史を封印たる堂あり。

　黒歴史にはガンダムシリーズにて遭いたる不思議の出来事を書き識（しる）すこと昔よりの習（ならい）なり。
　例えば、RX－78ガンダムがシャアザクを蹴ったりという類（たぐい）なり。
　またこの所にてアフターコロニーとか、アフターウォーというようなる事をも記（しる）せり。


　五十
　バイストン・ウェルの山にポロポースの花あり。「永遠にあなただけを愛します」という花なり。
　男がこれを採りに山へ行く。好きな女に渡すなり。この花を受け取ることは若き女の最も大なる遊楽なり。


　五三
　ルーザとリムルは親子なり。
　
　ルーザは親なるがある時、他国の王を婿として与え、その性欲のところを自ら食い、外の形式なるところを娘に与えたりしを、娘は別の恋人は一層旨（うま）かるべしと想いて、短刀にてその親に向かうが、逆に親が娘を殺せし。
　娘の恋人は悔恨に堪えず、やがて親もまた殺されりという。


　五五
　戦場にはガンダム多く住めり。連邦軍ことに多し。

　北アメリア大陸のイングレッサにて、後世まで続けて地球文明を埋葬させたるガンダムあり。
　生れしガンダムは神像内に入れ、土中に埋（うず）めたり。その形きわめて奇怪なるものなりき。


　五六
　コロニーのシャングリラにてもガンダムらしきを産みたることあり。
　確かなる証とてはなけれど、武装多くして頭大きく、まことにいやなガンダムなりき。

　忌わしければ棄てんとてこれを携えて道ちがえに持ち行き、そこに置きて一間ばかりも離れたりしが、ふと思い直し、惜しきものなり、売りて見せ物にせば金になるべきにとて立ち帰りたるに、早取り隠されて見えざりきという。

　

富野を知るにはこれを買え


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