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NHKラジオ 渋谷アニメランド「今、ガンダムから送るメッセージ」 富野発言部分全文字起こし(宇野さん編・1) [富野監督関係]





 倉田さん・吉崎さん編終了。
 再び音楽の時間。ガンダム好きの番組Dが選んだガンダム曲ベスト5。4曲目は『月の繭』。

司会
ターンエーガンダムって、監督にとってはどんなガンダムだったんですか?

富野
ターンエーです。(会場笑)

?(発言者不明)
全てを、含む。

富野
だから、もうあのー、自分の作ったものでないガンダムもいっぱいあって、ハラがたって、ハラがたっているんだけれども、それはハラをたててもしょうがないんだからどうするかっていうことで、全部を取り込む・豊富(?不明瞭)さがないのかってことをホントに考えました。
考えた時に、ターンエーという記号があるということを知った時に、これを冠せる物語を作れれば、少しは、うーん、大人になれるんじゃないのかなと思って、いう部分がこの曲にえー、(語調強めて)結実しているのが、うーんヨシユキちゃんとしては嬉しいかなっていう。ふふふふふ。


 番組Dが選んだ最後の曲。『一千万年銀河』。

 曲コーナー終了。

 ここから「由悠季の部屋」最後のゲスト、宇野常寛さん編。

 宇野さんの経歴説明。

 トークのテーマ。番組側で用意したのは「人は何故ガンダムに惹かれるのか」。
 司会はこのテーマを元に、2人に自由に話して欲しいと言うが…

富野
ああだけどその話をあの、ぼくはあんまりしたくないなと思っているんで、

宇野
じゃあ別の話でいきますかね。

富野
(くい気味に)一言でいっちゃいますけども、えーぼくが作ったからですなんつって。
 ハハハハハ。


会場笑、拍手。


 宇野さん、前半の話を聞いていて、富野はなぜ今日こんな話をしているのか?


宇野
(前略)富野由悠季っていう作家っていうのは、実は宇宙もロボットも描いてないんですよ。

富野
うん。

宇野
それどころか、なんかおそらく日本のアニメ文化とか、なんかこう物語文化の中で、宇宙っていうイメージを殺したし、ロボットっていうイメージを殺した張本人だと思うんですよね。

富野
うん。

宇野
これ分かります? おっしゃって…

富野
うん分かる分かりますよ。


 宇野さん曰く、富野は冒頭で宇宙は無限の広がりを感じるものだと言ったが、富野作品で描かれている宇宙はすごく有限。
 途中、富野はうんと何回か相槌。

 実はガンダムは「僕達はどこにも行けない」という物語。


富野
はいはい


 宇野さん、ガンダムは宇宙人出てこないし、ロボットも、本来人工知能を持っているもの。
 ここで、


宇野
日本で言うと、富野さんも大好きな鉄腕アトムですよ。


 会場、微妙な笑い。


宇野
富野さんも大好きな鉄腕アトムですよ。


 会場再び笑い。


 宇野さん話続く。その後、鉄人28号やマジンガーZと、子どものおもちゃになっていく。


宇野
もっと言えば子どもの成長願望をね、つけこんでおもちゃを売るためのキャラクターになっていく。

富野
はい。

宇野
で、まだマジンガーZは可愛げがあったのに、よりによってガンダムが出てくると。

富野
うん。

宇野
もうそうすると、いやこんなの工業製品じゃんみたいなことになっちゃうと。

富野
うん。

宇野
それでやっぱりアトム的なイメージのロボットって死んだと思うんですよね。

富野
うん。

宇野
で、ここのガンダムが出た瞬間に、マジンガーからガンダムの間に、

富野
うん。

宇野
間にライディーンとかコンバトラーとかね

富野
うん。

宇野
虫プロの残党が作ったアニメがこうあって、


会場笑


宇野
なんかくしくも

富野
うん。

宇野
で、挙句の果てにガンダムが出てきた瞬間に、もうそれが大ブームになっちゃったと。

富野
うん。

宇野
そうするともう日本でロボットっていうと、いや乗り物なんでしょみたいな。ロボットって人型の乗り物でしょってみんな思っていると思うんですよ。

富野
うん。

宇野
だから今現代日本において、ロボットって言う名前、イメージってかなり間違って普及していると思うんですよね。

富野
(笑)

宇野
主に富野さんのせいで。


会場笑


富野
だからぼくは、ロボットって言ってない、だからわざわざロボ、モビルスーツって言い方をしたんじゃない。

宇野
そう。でもそこがまた富野さんのいやらしいところで、

富野
うん。

宇野
本当に道具として描くんだったら富野さんの大好きなボトムズとかパトレイバーみたいな逃げ方(やり方、かも)したんですよ。

富野
ふふふふふ。

宇野
でもそれもやらなかったんですよね。

富野
うん。

宇野
どこか…

富野
いややらなかったんじゃない。やれなかったから。

宇野
いやでもどこかちょっと半分キャ、まだちょっとキャラクターなんですよね。

富野
うん。そう。

宇野
こう中間的な存在としておいたってことで、多分宇宙もロボットっていうイメージもだいぶ変わってしまった。

富野
うん。

宇野
って言うのは、多分今の日本の、ガンダム以降の日本のサブカルチャーだと思うんですよ。

富野
(一拍あけて)うん。

宇野
(略)ガンダムで描いてきたことっていうのは、要は宇宙開発もロボットも、ファンタジーの中でしか成立しないんだっていうことをね

富野
はい、はい。

宇野
はっきり言ってしまえば描いている訳なんですよね。

富野
そう。

宇野
逆に言うと。でも僕の考えではそれでいいんじゃないかっていうところもあるんですよ。つまり、

富野
そうよ。

宇野
今日の話っていうのは結局こんな面白いことを、今の日本のね、その辺にありふれているって言っちゃったらあれかもしれないけれど

富野
うん。

宇野
そんな超最先端のね、NASAとかがこう青天井の予算でやっているような技術ではない、やはりこう

富野
そうそうそう。

宇野
手の届く技術をやるだけでこんだけ面白いものができますって話なんですよ。

富野
そう。

宇野
前半の話。

富野
うん。

宇野
でもそこにはマーケットはないんですよ、

富野
うん。

宇野
社会的な必要性もないんですよ。でも面白いじゃんっていうのが

富野
うん

宇野
今日の話だと思うんですよ。

富野
うんそうです。

宇野
ぼくそれでいいんだと思うんですよね。

富野
そう、それでいいよ。
それでいいんだけれども、1つ重要なことがあるの。こう、うん、こういう仕事をやっている人達が、じゃあ世の中もこのままで行ったらね、仕事死ぬまで続けてられるかっていうと、ちょっとヤバいかもしれない。ぼく今一番心配しているのそのことなの。

宇野
うん。

富野
えと、基本的にそのイ…社会的なインフラ、つまり日本国家がこういう風に経営されてなければさ、されてなければ、プラネタリウムなんてやってられる暇ないのよね。

宇野・司会
はい。

富野
それから役に立たないロボットなんか作ってる暇なくて(会場笑)戦車作れ、戦車作れってところに行くわけじゃない。
で、どうも、そういうものがワサワサワサワサしているところに我々がこれから20年間暮らせるかって言う時に、ぼくこの歳になってね、ホントにここ2~3年つくづく日本は今ヤバいぞ、

宇野
うん、あの多分倉田さんが

富野
うん。

 宇野さん、先の倉田さんの話。倉田さんのライバルが現れないのは、目に見えて役に立つもの以外に、価値を認める空気が日本から衰退しているのでは、と指摘。


富野
ぼくそうだと思う。


 宇野さん発言趣旨「現代はコストカットと効率化の話ばかり。それはもちろんやった方がいいけれど、目に見えない物への価値を信じるってことがなくなちゃっている」。


富野
うんだからあの、まさに貧すれば鈍するで、確かにその貧しくなる、なる、それからやっぱり経済が、要するに活性化しなければ何にも始まらない、っていうのは確かに1面はそうなんだけれども、じゃあ、あの、芸能の方で考えた時に、じゃあホントにお金のない貧乏人が踊りをおどらないか歌をうたわないかっていうと、むしろそうじゃなくって、

?(発言者不明)
そう。

富野
神頼み

宇野
なるほどね。

富野
っていうことを含めても、要するに芸能っていうのは厳然としてあったわけ。むしろ、貧すれば鈍するじゃなくて、貧すればこそ今日は、ここでい…一発、うーん要するにみんなでわーいとやって、明日からまた、っていうその本当の意味でのね、その祭りということさえなんか忘れてて、今お祭りったらみんなどっか仕掛け人がいてさ・官があって、それで、地方で、えー地方のまさにイベントっていうのはなんかそのまさにイベントと官、っていう部分で知ったふうにやってんのよねコイツラってのがあって、本当の意味での、土着の、祭りというものがどれだけあるんだろうかっていうところことも含めて、その近代化というよりも現代化、

宇野
うーん。

富野
持っている、まさにどっかでね、言ってしまえば全部がビジネスって言葉に、そのすりかえ

一同
あー。

富野
られている、貧しさってあるんじゃないのかな。

宇野
まあ逆に、あの富野さんがね、やはり80年代に宇宙とロボットをああいう形で描いたってのは、逆に言うと何かこう、アニメみたいなね、嘘っぱちなものじゃないと描けない、現実があるっていうこととね…

富野
うーんとまあ…

宇野
それが今多分逆になっちゃってるんですよね。

富野
あ、逆になっちゃってるね。

宇野
完全にもう逆になっていて、何かこう基本的にファンタジーよりも現実の方が力強いんですよ。たぶんぼく宇宙世紀とかね、富野さんのだいっきらいな宇宙世紀ですよ、

富野
うん。

宇野
ね、富野さんのだいっきらいな宇宙世紀とかは、富野さんがああやって、まあSFってものを半ば殺してね、あのーああいった形で宇宙とロボットってものを描いた。で、それって、あのー宇宙世紀のような、嘘話?

富野
うん。

宇野
嘘話の中でしかやっぱりリアリズムを描けなかったんですよね。


 宇野さんの話ダルいので略。本郷和人さんのエピソードなど話す。
 うんうんと相槌を打つ富野。
 宇野さんによると、歴史における異説・新説を認めない人と、ガンダム世界の消費のされ方は同じ。


富野
あのね。人それぞれの理解の、理解の深さとか浅さとかってのはホントにかなりあるもので、まさにいま、あのー宇野さんが言ったような、歴史、自分の知っている歴史以上のもの、以外のものは受け止められないってのはぼくね、が、一般的だと思っているの。
それはいつの時代も変わらなくて、日本で言えば、宇野さんのそのリトルピープルの言い方がちょっと気になっている部分で、日本で言うと日露戦争で勝った後の、2~30年って言うのは日本の政界財界・みんなリトルピープルの集合体だったね。


うん(小さい声)

富野
だからこうまで堕落、第2次大戦つまりアメリカと戦争する、世界中を相手にして戦争するところまでい、いくことを止むなしとする、という大人の論法を生み出すわけ。
どう考えても国力論的に、アメリカとか他の国も含めて戦争なんかできる、できるレベルでなかったのに、あの頃、戦争にあのー、あ、反対って言った瞬間に非国民って刺されるのよ。
で、その、非道極まりないことがさ、要するにおおむねの人々の価値論ってそんなもんでしょ。

宇野
うん。そんなもんですね。

富野
だから…


 司会が話に入り、「ガンダム世代」などを生み出す大きな流れになったことに、戸惑いを感じているのか聞く。


富野
いや、戸惑いはあんまり感じてない、です。ただミノフスキー粒子があるっていうことを信じているような、世代が生まれてきた時にうわーヤバイなと思う。った時の、そういう読解力に対して、誤解をしないような、物語を、きちんと提供しなくちゃいけない自分っていうのが、今からできるんだろうかっていうことは、ちょっと考えることがあるし。
そこまでコントロールする、力が欲しい。つまり、そういうニュータイプになりたい。(ステージ上笑い)とは思ってはいるけどね。


 続いて宇野さんが選んだ曲流れる。『セーリングフライ』。



 今回はここまで。次で終り。長いなー、道のり。


 

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