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シャアロック・アズナブルの事件簿『茶髪連盟』 1 [その他]

※読まれる前に。
 シャーロック・ホームズの有名な『赤毛連盟』のパロディです。
 元文は青空文庫のものを使用しています。
 犯人の物語上の位置などは、『赤毛連盟』と同じにしているので、未読でこれから読むつもりの人は、当記事は読まない方がよろしいかと思います。
 では、お楽しみ下さい。




 友人シャアロック・アズナブルを、昨秋のある日に訪ねたことがあった。

 すると、アズナブルは見たところ14~16歳の少年と話し込んでいた。
 私がドアを開けた時、少年は何に怯えているのか、素早く腰を浮かせてこちらを向いた。どこか神経質な表情で、頭髪が茶色だったのを覚えている。

 私は仕事の邪魔をしたと思い、詫びを入れて去ろうとした。
 だがアズナブルは私を部屋に引きずり込み、扉を閉めたのである。

「実にいい頃合いだ、ドレン」

 アズナブルの声は親しみに満ちていた。

「仕事中だったかな」

「その通り。真っ最中だ」

「では、私は奥で待つとしよう」

「まあ待ちたまえ。アムロさん、この紳士はドレンさん。僕のパートナーです。あなたの場合にも、彼が大いに役に立つことは間違いありません」

 少年は申し訳程度の会釈をして椅子に座りつつも、疑い深い眼差しで私を見るのだった。

「さあ、かけたまえ」とアズナブルは私にソファをすすめた。

 自らも肘掛椅子に戻ると、両手の指先をつきあわせた。

「そうだ、ドレン。君は僕の好みに同じく、突拍子もないこと、退屈で決まり切った日々の生活の埒外にあるものが好きだ。逐一、記録をつけるほどだからね。
 ところで、ここにいらっしゃるアムロ・レイ氏が今朝、訳ありで僕を訪ねていらした。そのお話によると、この事件は近頃の中でも頭ひとつ抜きんでたものになりそうだ。
 現時点では、目下の事件が犯罪として扱える、とは明言できない。しかし今回の成り行きは、多くの事件と比べても、異端だと言える。

 恐縮ですがアムロさん、もう一度お話を聞かせてくださいませんか。友人であるドレンがはじめの辺りを聞いてませんし、事細かな部分まであなたの口からうかがいたいのです」

 若い依頼人は汚れてしわくちゃになった新聞を、ジーンズのポケットから取りだした。左手だけでひざの上で広げ、しわを伸ばしている。
 首をさしのべ、広告欄に目を落とした。

 私は少年の挙動を観察し、わがパートナーのやり方にならって、服装や態度から依頼人が何者であるかを読みとろうとした。

 しかしながら、観察しても何も見えてこなかった。
 どこをどうしても、やや内気そうな少年である。中背で、機敏な動作。砂漠の民が使用するようなボロ布を身にまとい、前で閉じている。青いジーンズはくたびれた感じだ。
 観察しても、結局わかるのは、男の栗色の髪と、くやしげで不満そうな顔つきだけだった。

 シャアロック・アズナブルの鋭い眼に、私のしようとしたことは見抜かれたようだ。
 私の疑問に満ちた一瞥に気づくと、笑いながらかぶりを振るのであった。

「いや何、わからない。この方が過去、あるいは現在も軍人であること。近頃、相当な量の書きものをなさったこと。これだけははっきりとわかるのだが、後はまったくわからない」

 アムロ・レイ氏は椅子からすっくと立ち上がり、新聞を片方の人差し指で押さえたまま、目をわがパートナーの方へ向けた。

「ど、どうやって、そのことをご存じなんですか、アズナブルさん」
 アムロ氏は驚きのあまり、言葉を口に出す。

「私が軍人だということを? ずばり間違いありませんよ」

「今し方、ドレンがドアを開けた時の、素早い反応ですよ。あれは、いつも緊張状態にいる人間の反応だ。それに」

 アズナブルは不意に立ち上がると、依頼人がまとっている衣の前をめくった。

 私は息を飲んだ。ズボンに拳銃を挟み混んでいたのだ。「用心深い。いい度胸をしている」

「しかし、書きものに関しては…」

「右の小指にインクの染みがあります。毎日の手洗いでも拭い切れないほどの染みです。これは書きもの以外に何で説明づけましょう?」

 アムロ・レイ氏は大笑いし、「いやはや、こんなの初めてです!」と言った。
「ぼくは初め、あなたが何かうまい方法でも使ったのかと思った。だが、結局は何でもないことなんですね」

「覚えておこう、ドレン」アズナブルは私の方を向いた。「説明するのは損だ、とね。『未知なるものはすべて偉大なりと思われる。』…僕の評判もあまり大したものでもないが、あまり正直にしゃべっていると、やがては地に落ちてしまう。ところでアムロさん、広告は見つかりましたか?」

「ええ、見つけました」
 アムロ氏は指を中ほどの欄に下ろした。「これです。これが事の始まりだったのです。自分自身でご覧になって下さい、アズナブルさん」

 私は新聞を受け取り、次のように読み上げた。

茶髪連盟に告ぐ―ソロモンの故ドズル・ザビ氏の遺志に基づき、今、ただ名目上の尽力をするだけで週4ポンド支給される権利を持つ連盟員に、欠員が生じたことを通知する。
 茶髪にして心身ともに健全な10歳以上の人間は誰でも資格あり。
 月曜日、11時、フリート街、ポープス・コート7番地、当連盟事務所内のフラウ・ボウに直接申し込まれたし。

 私は、この奇怪極まる広告を二度読み返した。
「…意味がさっぱりわからん!」口をついて出たのは、こんな叫びだった。

 アズナブルはくすくすと低い声で笑い、椅子に座ったまま身体を揺すった。これはアズナブルが上機嫌のときの癖である。

「これはこれは、少々常軌を逸した話だ。ほう」とアズナブルは呟く。

「ではアムロさん、早速取りかかりましょうか。あなたと家族のこと、そして広告に従った結果、生活にどんな影響があったのかを教えてください。ドレン、君は新聞の名前や日付を書き留めてくれないか」

「0079年*月*日、モーニング・クロニクル紙。ちょうど2か月前だ」

「うむ、結構。ではアムロさん、どうぞ」

「ええと、それは先ほどシャアロック・アズナブルさんに申し上げたとおりで…」アムロ・レイは額の汗を拭い、話を続けた。
「わたしはホワイト・ベースという軍艦でモビルスーツ『ガンダム』のパイロットをやっています。と言っても、パイロットの稼ぎだけではどうもさっぱりで、一人でようやく暮らしていけるという有様です。
 昔は私兵の部下を2人雇うことが出来たんですが、今は一人しかいません。女性です。本来なら払うのも難しいところなんですが、本人が見習いでいいからと他の半分の給料で来てくれているんです」

「その見上げた女性の名前は?」シャアロック・アズナブルは尋ねた。

「名を、セイラ・マスと言うんですが、三十路というほどじゃありません。彼女は年の見当がつかないのです。
 だが、パイロットとしてはなかなか腕利きです、アズナブルさん。血筋がいいのかも知れません。正規の軍人としても働ける腕があると、ぼくは踏んでいるんです。まぁ、彼女が満足しているんだから、入れ知恵する必要もないでしょうが」

「確かに、その通りです。あなたも運のいい方です。相場以下で部下を雇えるとは。今のご時世、なかなかそううまくはいかないものです。変わりものという点では、その従業員と広告、甲乙付けがたいと言えます」

「いや、実は、彼女にも欠点はありまして…」アムロ少年は苦い顔をした。
「彼女ほどガンダムが好きな女はそこいらにいないでしょう。今は支援機に乗っているのですが、ことあるごとにガンダムに乗りたがるのです。夜中にこっそり、シミュレーターで練習もしているようです。それが彼女の粗なのですが、大まかに見れば、いい仕事をしています。金髪の美人さんですし」

「察するに、彼女はまだホワイトベースにいると?」

「ええ。もちろん他のクルーもたくさんいますが、モビルスーツデッキにはあまり人は入ってきません」

 アズナブルはちょっと首をすくめて見せて、話を促した。

「そこへ、この広告ですよ。この広告が面倒の始まりだったんです。セイラさん、彼女がちょうど1週間前、まさにこの新聞を手に持ってきて言うんですよ、『アムロさん、わたしの髪が金髪でなくて茶色だったら良かったのに』って、そこでぼくは聞き返しましたよ。

『そいつはどうして?』って。

 すると彼女は言うんです。『なぜって、ここに茶髪連盟の欠員があるんですよ。ここに入ればどんな人でもちょっとした金持ちになれるんですよ。何でも、連盟の欠員を埋める人間が足りないらしくて、遺産管財人が宙に浮いた金をどうしていいか途方に暮れているらしいそうよ。わたしの髪の色が変えられたら、連盟に入ってお金を稼いだのに』

 だからぼくは、『何、そいつは一体何の話です?』と聞いてやりました。

 するとセイラさんは、『茶髪連盟のことをご存じないんですか?』と、眼を丸くするんです。

『ないなぁ』とぼくが答えると、

『ふぅん、それは不思議ね。あなたは空席にぴったりの資格を持っているというのに』

『それは、どんないいことなんです?』とぼくは詳細を聞こうとしたんです。

『まぁ、たった1年に200ポンドってところですが、仕事はわずかなもんですから、パイロットの仕事の妨げにはなりません』

 って訳です。ぼくが耳寄りな話だと思ったのも無理ないことでしょう。最近はパイロット稼業がうまくいってなかったもので、臨時収入があればとてもありがたいですから。

『詳しく聞かせてくれませんか?』とぼくは、とうとう本腰になってきました。

『ええ』と、彼女はそう言って、あの広告をぼくに見せるんです。
『アムロさん、ほらここに空席があるでしょう、問い合わせ先だって載ってますわ。なんでも、その連盟ってのは大金持ちのジオン軍人、ドズル・ザビっていう方が設立したらしくて、彼の愛娘が茶髪だったもんだから、同じ茶髪の人間に大きく共感するらしいんです。
 それで、死んだときに莫大な遺産を管財人に預けて、その利子を使って、娘と同じ色の髪を持つ人が楽に暮らせるように金を分配してくれ、と死に遺したらしいんです。話によると、給料の気前はいいのに、することはほとんどないそうです』

 ぼくはそこで少し不安になりました。『だが…志願してくる茶髪の男など、世間には五万といるだろう? ぼくは少し赤みがかっているし』

 だが彼女はこう言うんです。『大丈夫、あなたなら出来るわ』って。彼女は人をのせるのが上手で、『おだてのセイラさん』と呼ばれているくらいで…セイラさんは連盟のことに詳しくて、役に立つかもしれないので、その日は模擬戦をやめて、ついてくるように言いましたよ。
 彼女も今日一日が休みになるのを喜びましてね、ぼくたちは仕事を切り上げて、広告に示してある住所へと向かったんです。

 あんな光景は願っても二度と見られませんよ、アズナブルさん。地球から宇宙から木星から、髪の毛の茶色い人間がだれも彼も、広告を見て集まって来たんです。窒息しそうなほどの人並みでした。
 ただ一つの広告がこんなにも大勢かき集めるとは、想像もつかないことです。
 茶髪と言っても脱色して金色に近い者、ぼくのように赤みがかった者、明らかに染めている者、様々な色合いの茶髪がおりました。

 こんなに多くの人が順番を待って並んでいるのを見ると、もう選ばれるわけがないとあきらめていたのですが、セイラさんが聞き入れないので同じように並んでいました。
 その時どうしたか覚えていないのですが、彼女はぼくを押したり引っ張ったりして、人混みを抜けるまでいろんなものに当たりながら、事務所に続く階段の前まで連れていったんです。

 そこには、希望を持って階段を上る人の列と、意気消沈して降りてくる人の列、その二つの人の流れがあって、ぼく達は何とかして列に無理矢理割り込み、ついに事務所の中に入ったんです…」

「それは何とも面白い経験をなされました」アズナブルは言った。ちょうど依頼人が話を中断したところだった。

「惹かれる話です。どうぞ、そのまま続けてください」

「その事務所は二脚の木の椅子と松材の机の他には何もなく、その後ろには茶色い髪の少女が腰を下ろしていました。少女―フラウ・ボウというのですが―は人が入ってくると、志願者それぞれに二言、三言かつぶやいて、何とか粗を見つけては、不適の烙印を押しつけているんです。これでは資格を得るのはやはり、簡単とは言えそうにありませんでした。
 ところが、ぼくらの番が回ってきたとき、少女は他の人よりひどく好意的な目をぼくに向けたんです。ぼくらが入ると、秘密の話をしようと扉を閉めたのです。

『アムロ・レイさんと申されます』と、まごついていたぼくを、セイラさんは横から口添えをしてくれました。
『連盟の欠員を補いたいと希望されています』

 相手はセイラさんの言葉を聞くと、こう答えたんです。

『まさに適任です。この方なら全ての条件を満たしています。ちょっと天パがかったこんなにも見事な茶髪は…見たことがありません』って、それから、フラウ・ボウは一歩後ずさり、首を傾げて、こっちが恥ずかしくなるほど髪をじっくり見るのです。

 すると突然、つかつかと歩いてきて、両手を硬く握りしめて、合格おめでとうございますと熱烈に言うんですよ。

 それからその相手はですね、『ここで躊躇しては、申し訳が立ちません』と何やら言い出しましてね、『見え透いたことでも、確かめるまで念には念を入れて…失礼します』と! フラウ・ボウはぼくの髪を両手でつかんで、ギュウギュウと引っ張ったんです。

 ぼくは思わず、「引っ張ったな! 親父にも引っ張られたことないのに!」と叫んでしまいましたよ。

 するとフラウはですね、『涙が出ましたね』とか言って手を離したんです。
『これで問題ありません。でも、我々は気を付けなければならないのです。今まで、かつらで二度、染色で一度騙されたことがあるんです。靴の縫糸用のロウ、そういったものを使った話もあるくらいで、人間の浅ましさにはあきれるばかりです』と弁解めいた言葉を言いながらフラウは窓の所へ行って、大きな声で、合格者は決まりました、と怒鳴ったんです。

 そうしたら、がっかりした人達のため息とかざわめきとかが下から聞こえてきて、人並みはぞろぞろっと散らばっていきました。

 そこで少女は改めて、『私の名は、フラウ・ボウと申します』と名乗ったわけです。それから、こう言ったんです。

『我々の気高い慈善者はわたしたちに基金を遺してくれましたが、私もその恩給を受けている者の一人です。アムロさん、あなた、配偶者はおありですか? 家族はおありですか?』

 そんなふうに聞かれました。ぼくは未婚ですし、両親とは絶縁状態ですから、どちらもいない、と答えたんですよ。

 するとフラウの顔がみるみる変わっていくんです。

『ああ、困った』と深刻そうな顔をしてですね、『実に深刻な問題です。とても残念です。その、この基金というのは茶髪の一族を繁栄させ、種の保存をしていくことが目的なんです。残念なことに…あなたが独身とは…』

 この言葉を聞いて、ぼくもがっかりしてしまいましたよ、アズナブルさん。
 やっぱり、そうやすやすと連盟員になれるわけないとね。でも、でもですよ、フラウはしばらく考えてから、まぁいいでしょう、と言ったんですよ。

 フラウはそれからこう言うんです。『他の人なら、この点は致命的になりかねないのですが、このような素晴らしい髪を持った方のこと。ここは妥協して規則を曲げなければなりませんね。では、いつ頃からこちらの仕事につけるのでしょうか?』

 そこで、ぼくはこう言ったんです。
『…ちょっと都合が悪いのです。戦争も…ありますので』

 するとですね、セイラ・マスが出てきてこう言ったんです。
『え、アムロ、そんなこと気にすることはないわ。戦争なんてわたしにだって出来るから』

 ですから、ぼくは次にこう聞きました。『勤務時間というのは、どのくらいですか?』

『10時から2時までです』

『4時間くらいなら、もしジオンが攻めてきても、ホワイトベースのみんなでなんとか持たせられるでしょう』って言いまして、次にこう聞いたんです。『で、給料の方は?』

『週給で、4ポンドです』

『それなら、仕事の方は?』

『ほんの名ばかりのことですよ』

『いやだから、その名ばかりの仕事というのは?』

『ああそうでしたね、時間内は事務所…いやせめてこの建物の中にいてもらわなければなりません。もし持ち場を離れましたら、あなたは永久にその資格を剥奪されることになります。遺言状にもその点ははっきりと明文化されています。勤務時間中に一歩でも外にお出でになられたのなら、そこで即、資格剥奪ということになります』

『一日4時間なんでしょう? 外に出ようなんて滅相もない。』

 と言ったらですね、フラウ・ボウさんはびしっと言ってのけるんです。
『いかなる理由も許しません。病気でも、用事があっても、また他のどんな理由であってもいけません。ここに必ずいてください、さもないとクビです』

『それで、仕事は?』

『モビルスーツ百科事典を書き写すのです。そこの本棚にあります。インクとペン、それに吸い取り紙は自前でお願いしたいのですが、机と椅子は用意してあります。明日から、よろしいですか?』

 と言いますから、ぼくは『承知しました』と答えたんです。そうすると、

『では、今日の所はさようなら、アムロ・レイさん。あなたが幸運にもこの得難き地位につかれましたことを、謹んでもう一度お祝い申し上げます』と、少女はぼくを部屋の外へ送り出しましてね、ぼくもセイラさんを連れて店へ引き返したんです。
 ですけどね、帰ってからも、何を言って、何をしてよいのやらさっぱりわからなくなって…それほどぼくは自分の幸運に酔いしれていたんです。

 で、一日中そのことばかりを考えていたんですが、日が暮れるとその酔いもさめてしまいました。というのも、ぼくは…これはみんな詐欺か悪ふざけにちがいない、目的はよくわからないけど、きっとそうに違いない、と考えるようになったんです。
 だいたい、どこの誰がそんな遺言を書いて、モビルスーツ百科事典を書き写す、そんなつまらない仕事にこんな金を払うんでしょうか。信じられないんです。
 セイラさんはね、ぼくを乗り気にしようとはやし立てるんですが、もう寝る時分になると考えるのをやめにしました。

 でも……朝になると、まぁとにかく一度行ってみるくらいはしてみようと、そう決心しましてね、インクの小瓶とペン、フールスキャップ判の紙を7枚買って出向いたんです。

 そうしたら驚きましたし、喜びもしました。まったく話の通りだったんですから。
 机が私専用に置いてあって、フラウ・ボウがぼくがちゃんと仕事に取りかかるか、見届けに来ていたんです。

 フラウはぼくに『あ』のところから書かせ始めると、部屋を出ていったんですが、時々ちゃんとやってるかを見に来ていました。
 2時になると、もう帰っていいってことになってですね、ぼくの仕事ぶりをえらく褒めてくれましてね、そうしてぼくが部屋から出ると、事務所のドアに鍵をかけてしまいました。

 来る日も来る日も仕事をしたんです。で、アズナブルさん、土曜日になるとフラウがやって来て、一週間分の給料としてソヴリン金貨を4枚くれたんです。
 次の週も同じでした。毎日10時にそこへ行って、午後2時にそこを出ます。

 次第にフラウ・ボウは朝に一度しか来ないようになって、そのうちさっぱり顔を見せないようになってしまいました。
 でも、もちろんぼくはその部屋を一歩も出ませんでしたよ。いつ来るかもしれませんから。

 それにこんなによくてですね、ぼくにぴったりな仕事をそうやすやすと手放す気にはなれません。パイロットより楽です。

 ですがね、…急に、仕事がフイに……なってしまったんです」

「フイに?」

「そうです。それもつい今朝のことです。いつものようにね、10時に仕事へ向かったんです。でも、扉が閉まって開かないんです。
 すると、扉のパネルの真ん中あたりに、小さな四角いボール紙がびょうで止めてあったんです。それがこれですよ。ご自分でご覧になってください」

 アムロ・レイは一片の白いボール紙を差し出した。メモ帳くらいの大きさだった。

 そこにはこう書かれていた。


茶髪連盟は解散する。
0079年*月*日

(続く)




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