どうも。毎度のお運びありがとうございます。
えー、今回は。『ブレンパワード』に出てくる伊佐未翠ちゃん(42歳)の話など。
まあ翠というキャラクターはね、視聴者には総じて不評だと思うんですよ。
真っ先に出てくるのが、「娘の男と寝た」ってことですよね。ただ、ジョナサンとクインシィが男女の関係あるいは恋人同士だったかは、はなはだ疑問ですが…
それと子ども視線から見て、親として失格だとかね。
ここら辺は疑問の余地はないですが。
しかしメガネキャラをこよなく愛するぼくが、翠さんの魅力をなんとかして見つけよう、いや翠ちゃんの魅力を知ってもらおうって記事です。
下種イ話ですが、Googleで「伊佐未翠」と検索すればこのページがトップ表示されるくらいの高い目標を持って、書いていこうという訳です。
ただまあね、広めたいのは「女性」としての魅力であって、「母親」としてはどうしよもうない。
弁護のしようがない。
第4話で、娘でもないカナンに「伊佐未翠博士には母親の香りは感じない」と思い出される始末。
勇を6、7年放り出していたが、グランチャーの適性があると分かると引き取りに来た(8話)くらいだからね。
他にもご本人のセリフを羅列してみましょう。
「あなた(研作)の叡智と私の忍耐力。それを受け継いだ勇なら、依衣子以上のパイロットになれるわ。グランチャーの抗体としてね」(5話)
「(依衣子は)私たちの研究に必要なの」「あの子は使えるわ」(研究に邪魔で実家に預けた依衣子を引き取りに来た時、24話)
この、我が子を研究材料としてしか見てない感。たまりませんね。
そりゃ依衣子にもキレられます。
依衣子「依衣子などここにはいない。私はクインシィ・イッサーである!」
翠「そうしたのも、オルファンの意思を受けて私達が…」
依衣子「クインシィをやっているのは私なんだよ!」(5話)
翠「それに、(勇が)ノヴィス・ノヴァの情報を持って戻ってくれば…」
依衣子「あんた達ドクターは、まだそんな甘いことを期待しているのか。それでは母親丸出しではないか」
翠「私はあの子のアンチボディとしての特性に期待しているだけです」
研作「(女達は何を考えているのか)」(10話)
駄目だ…機能不全家族とはこのことか。
女性が2人とも、「母親」であることを否定しているという会話ね。
で、母親としてはダメなのですが、一人の「女性」としてはどうでしょうか。
夫婦関係が破綻しているのはもう仕方ないとして、問題になるのは・よりによってジョナサンと寝てしまったことです。
これは13話です。が、12話の時点でおそらく男女の関係になっています。
ジョナサンと翠の関係がハッキリするのは13話なのだが、12話で張り切っている翠→さりげないジョナサンの視線→ジョナサンに話しかける翠の表情があり、ここらへんで関係を持ったことが暗示されている。
— 坂井哲也 (@sakaitetsu) 2017年11月14日
アニメにおけるこのテの描写は、やはり今でも富野作品が頭抜けていると思う。
ここで注目したいのは、ジョナサンは依衣子をたらし込んで伊佐未夫妻の抹殺を考えていることです。
で、この時点での翠は、オルファン内で力を付けている依衣子を押さえるために、ジョナサンに近づいたフシがあることですね。
おそらくジョナサンから翠に近づいたのではなく、翠がたらしこんだのだ、と私は思っています。
翠「ではジョナサンはグランチャー部隊を指揮できると思っているのね?」
ジョナサン「そりゃそうです、クインシィ・イッサーはドクター達のお子さんだから遠慮していました」
そしてジョナサンは抱いた女の前で、グランチャー部隊を指揮すれば「鬱憤晴らしができる! 女へ、母親への恨みをぶつけられる!」と幼稚な思いを吐露します。
40歳を超えている翠から見れば、拙い阿呆です。子どもです。
実際、翠は「そういう男が好きな女もいるのは、忘れないで」とおだてておきながら、一人でこう呟きます。
「可愛い動物だこと」「私はこういう下等なオスしかいない地球が、ほとほと嫌なのよ」
どうですか。
この話数での翠は、娘の専行を抑えるためにジョナサンと寝て(結果的には自分の身を守ることにもなっている)、しかしそのジョナサンを含めて「男」を嫌っている、複雑故に魅力的な女性となっています。
可哀想で・しかし若い男をたらしこもうとする位に自分の魅力に自信があって、素晴らしい女性ではありませんか。
惜しむらくはこの「複雑な性質」を持った翠がこの回のみで消えてしまい、後は本気でジョナサンに入れ込んでしまっているツマラナイ翠に堕したことです。
おそらくこれは、翠というキャラクター像のスタッフ間での共有に不備があったのではないかと勘繰っているのですが…
この回は隅沢さんの脚本なのですが、このままの隅沢版翠なら良かったのに。
続く14話で、例の
「俺さぁ、クインシィ・イッサーと愛しあったなあー」
「俺の知ったことか!」
「コナをかけたらすぐに寄ってきたんだよ」
「男と女のやること、珍しくもない!」
「ドクター・翠・伊佐未もなんだ」
「…何を言っているんだ?」
「いやさあ、ババアなんて馬鹿にしてたさ。がねえ、いやあ、味わい深かったって感動した」
があって。
15話での翠は戦闘中のジョナサンの様子を気にして、ジョナサンよりオルファンを大事にする依衣子に殴られてしまいます。
依衣子「子どもを作れたから、親が子の上なのか。子どもは女と、男の屑以下の親の負債を抱えて、帳尻合わせに必死になっているんだ。メスをやっている暇があったら、オーガニックエナジーの研究者らしい大人を、やって見せろ!」
依衣子さん、ごもっともです。
翠を「篭絡するつもりが若い男に調教された四十路女」と咀嚼する方法もありますが、あんまりぼくの好みじゃないんですよね…
この後も、
バロンズゥで帰ってきたジョナサンに駆けより
「本当に心配していたのよ。あなたが帰ってくれれば、オルファンはすぐにでも銀河に飛び立ってもらえるわ」(19話)
「クインシィを助ける?」(敵意むき出し、同じく19話)
などとジョナサンに入れ込んでいますが、バロンの登場で2人の関係は終ります。
母親としては全く役割を果たさずに「女」として生きていた翠が、自分の男は「母親」に奪われる結果に終る訳です。皮肉ですね。
23話では、依衣子が乗っていないカラのグランチャーが帰還して、翠は心配している様子で現れます。
ジョナサン「娘の安否など忘れているのかと思っていましたがね」
翠「あなたはバロン・マクシミリアンのアンチ・ボディになりきったようね。ガバナーに近い私に近づくなと命令されているんでしょう? そうでなければ、あれから一度も…」
俺なんかには飽きているのかと思った、と鼻で笑うジョナサン。
その後、翠はグランチャーに近づき
「(シラーに)私が来る前に勝手に触って! 私の仕事をとらないで!」
とヒスります。
自業自得とはいえ息子は出奔、娘はたてつく、夫は研究、若いツバメは去っていく。
その結果の「私の仕事をとらないで!」です。
こんな女性を嫌いになれますか? ぼくはなれませんね。好意を抱きます。
25話では、オルファンが飛び立たない理由について研作と話します。
翠「オルファンの求めているものは、新しい生命、力でしょ。手段を講じるために必要なものは、オーガニックエナジーの総量です。全地球の生命力です」
研作「そういう数量的なものじゃない、量じゃないんだよ翠」
翠「ならパッションとでも言うんですか。情愛的なものをオルファンが欲しがっていると? まったく」
この時の翠は、情熱や情愛なんて否定するしかありません。
ツンですよ。デレさせたい…
正直、最終回の翠の処遇は「とってつけた」感があります。そんな簡単に改心する?
翠のような女性を、嫌いになるのは簡単です。
確かに母親としては失格です。
でも40歳って、自分がもうオバサンだと自覚する年齢ですが、それでも女性として若い女と張り合おうとしているんですよ。バカな男がターゲットでも。
張り合う相手が娘ってのが問題だけれど…
そして家庭を壊したその手で、オルファンで宇宙に飛び立つことを夢見ている。
なんか破綻しているじゃないですか。
でも、だからこそ、ぼくはそんな女性を嫌がりつつも、どこかで好感を持ってしまうんですよね。
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