どうも。毎度のお運び、ありがとうございます。

 今回の記事更新でおそらく、当ブログの累計PVが100万アクセスに到達します。

 読んで下さった・下さっている皆様、感謝します。ありがとうございます。PVが少なくても書き続けるつもりですが、やっぱりアクセス数が多くて、反応があったりすると、励みになります。

 今後も時たまお寄りいただければ、大変嬉しく思います。


 さて。今回は。


 『∀ガンダム』のラスト、『月の繭』と共に流れる6分間、奇跡の6分間とも呼べるあのシーンを、もう1度咀嚼してみる記事です。

 DVD13巻では、40分36秒から46分30秒までの、およそ6分間。

 この回の絵コンテは富野(斧谷名義)と川瀬敏文さんですが、この6分間はまあ、富野の仕事でしょう。

 では一緒に振り返っていきましょう。








 まず最初、画面は車中から始まります。

 キエルとディアナが楽しそうに話しているのを、つまらなそうに横目で見ているソシエ。
 「今度は2人だけでね」
 「それはいいですね」
 「皆さんには内緒で」

 短いですが、キエルとディアナの会話の内容で、ソシエが完全に蚊帳の外なのが分かります。 


 ソシエは会話に入れないので、運転席に近い場所へと移動します。
 助手席のロランに声をかけますが、ロランは「はい?」と気のない返事をしてちょっと振り返っただけで、またすぐ前を向いてしまいます。

 ソシエは詰まらなさそうな・寂しそうな表情を見せます。

 ここまでのシーン、わずか20秒。

 この20秒でソシエの孤独を描き、全員が彼女の周りから去ることを暗示し、さらにこの後の・金魚のおもちゃを捨てる「わーっ!」への伏線としています。

 続いてハイム家のシーン。ここでもソシエは1人で行動します。
 さらにヤコップやブルーノが人形劇をしているシーン(ハリーの子どもバージョンがいる!)、3段式ロケット「ローラ号」の整備を指揮するリリ嬢などが映し出されます。

 
 そして次は。
 雪の中、泣きながらロランにしがみついているソシエの姿です。
 
 涙を流しているソシエに、唇を近づけるロラン。2人はキスをします。

 この時、車中のディアナが、わざとあらぬ方向を見ているのが富野らしい芸の細かさです。

 人それぞれ解釈が違うでしょうが、ぼくはこのシーンが、ロランとソシエ今生の別れだと思っています。

 その後振り返ることもなく、まっすぐ車に向かっていくロランの姿が、彼の決意の強さを物語っています。セリフが一言もないのに、見る者には雄弁なほど気持ちが伝わってきます。
 視聴者に「ソシエを袖にするほど、やるべきことがあるのだろう」と思わせる説得力がある場面です。

 そして卓越しているこのカットを見て下さい。
 



 車のライトが、舞台のスポットライトのように見えます。そしてソシエは、スポットライトから遠く離れた場所に位置しているのです。
 


 次のシーンは、ソシエやリリ達に見送られ、ディアナとして港を出るキエルとその一行です。

 さらにローラ号が海上に停泊している様子を1つはさんで、ディアナとロランの住む湖畔?の家に場面転換します。
 
 パンを食べている2人。白鳥の群れが、飛び立っていきます。

 ディアナの左手の薬指が、一瞬キラッと光ります。しかし、大きな問題ではないでしょう。
 ラスト、ディアナは1人でベッドに寝るわけですが、この2人がセックスしていると思いますか?

 このシーンにおける、2人の位置関係を見て下さい。



 ロランはディアナの正面ではなく、斜め向かいに座っているのです。これは明らかに、2人の関係の暗示です。
 2人は最後まで、主従の関係なのです。


 冷凍睡眠を繰り返し、長年生きてきたディアナが、何のために地球で暮らすのか?

 それはもちろん、「死ぬため」です。

 自然に囲まれた静かな2人の住まいは、ちょっと富野的な言葉遣いで言うなら「こういうところで死ねるのなら幸せだな」と思える場所です。

 例えば『Vガンダム』に出てきた、鳥の骨がいつまでも残っている・ちゃんと死ねない場所ではなく、死んで土に還れそうな住まいなわけです。

 そしてロランの役目は、「ディアナを看取ること」ですよね。
 形式的には結婚していようが、普通の夫婦関係とは違うでしょう。



 次からはシーンを箇条書きします。ちょっと見てみてください。

 1、海から飛び立つローラ号。無事宇宙に出て、キャノピーからキエル達が顔を出します。

 2、家族となったジョゼフとフラン・ドールの様子。

 3、発掘作業を続けているシドじいさん。

 4、孫をかわいがるアニス。


 1~4が48秒間。この短い時間の中で、それぞれのキャラクターの「その後」を匠の技で見せています。

 例えば「2」のシーン。

 ジョゼフは洗濯物?が入ったバケツを両手に持ち、赤ちゃんを背負っています。フランは「夕食までには帰る」といって車に乗って行きます。
 この間、僅か6秒。
 でも2人がどんな生活を送っているのか、充分に伝わってきますよね。この説明力!


 画面は月に入港するローラ号の姿、次いでディアナとして人々の前に姿を見せるキエルが描かれます。

 かと思ったらまた地球に戻ります。

 人力飛行機の実験をしているメシェー。

 そして抽斗から金魚のおもちゃを取り出すソシエ。自転車に乗って「わーっ」と叫び、川に行って金魚のおもちゃを捨てます。
 この川は、2人の思い出がある場所ですね。そこでロランの思い出の品を捨てるわけです。

 ソシエは半袖なので、季節はおそらく夏。キスでお別れしたのが雪降る冬ですから、彼女は半年掛けて、やっとロランへの想いを断ち切った訳です。

 そして、この時の彼女の服装にも注目です。
 自転車に乗って山道を走るのに、彼女はスカートを履き、イヤリングもネックレスも付けています。

 つまりこれは、彼女にとって中途半端な気持ちではない、ちゃんとした「お別れの儀式」なのです。

 そして川におもちゃを捨てて、もう一度ソシエが「わーっ」と叫ぶわけですが、ここのカメラワークは本当に、まあシロウトのぼくが言うのもなんなのですが、明確な意図に基づいた素晴らしいものです。

 カメラワークを列記します。

 1、川に流れる金魚のおもちゃを追い、そのままカメラは上に移動、夜空へ。下図のように、縦に星の川が見える。 



 2、「わーっ」と叫ぶソシエを頭上から捉え、そのままカメラ(視点)は上昇。

 3、ヨットから月を見るグエンとメリーベル。

 4、そのヨットを斜め上空から写し、徐々に引いていく。


 1、2、4は、全て上へ上へと向かっていく動きです。そして3は、月を視聴者に意識させます。
 このカメラワークは、実際には膨大な距離がある「月と地球」、この距離を・視聴者には短く感じさせるためのものでしょう。

 6分間という短い時間の中で、場面が月と地球を行ったり来たりします。ですから、視聴者に「長大な距離」を感じさせてはいけません。
 視聴者の心的距離を短くするためのカメラワークなのだと思います。

 特に「1」の、川に流れていく金魚のおもちゃを追っていったら夜空になった、無理がないのに思い切り空間的には飛躍している展開は、本当に素晴らしいと感じます。

 富野の名言「物語を創作する秘訣?簡単です。地球と月の間の距離さえ感じれればいい」を思い起こさせる場面展開です。
 ただしこの場合は、なるべく視聴者に「地球と月の間の距離を感じさせない」ようにしているのですが。


 続けましょう。

 上記の4から、枯葉を舞わせることで季節と場所をいっぺんに跳ばし、ロランとディアナが乗っているボートを真上から捉えます。
  
 そして舞い上がっていく枯葉を追うようにカメラも垂直に上昇して、山を写し、三日月を写し、渦巻く大気が写った…と思ったら、月で黒歴史の映像を見ているキエルへと繋がります。

 この場面の持っていき方、跳び方。ホレボレして酔ってしまいそうです。

 
 黒歴史を見てキエルは泣いています。

 さてこのシーン、なんのためにあると思いますか?


 ディアナが地球で暮らせるのは、キエルが「月の女王」の役目を引き受けたからです。
 見方によっては、キエルはディアナの犠牲になった訳ですが、それでは大団円にはなりませんよね。

 キエルはディアナの自由と引き換えに、人身御供になった訳ではない。そのことを視聴者に示すにはどうすれば良いか?

 無理強いではなく、キエルが自らの意思で月の女王をやっていくシーンがあれば良いのです。それがこの、黒歴史を知って涙するシーンなのです。
 そして女性としても幸福であることを明示すれば万全です。だから月のキエルの全シーンに、常にハリーが付き添っているのです。

 この黒歴史を見るシーンはキエルを追っていながら、実は地球に住むディアナの行動は無理がないものであることを補強するために存在するのですね。


 ベラベラと喋ってしまいました。先を急ぎましょう。

 カメラ=視点は、今度は上空から月を捉えて、そのまま下がってきて森、そしてディアナとロランの住処をアングルに入れます。

 紅葉の中、釣りをしているロラン。それを少し離れたところで見守るディアナ。

 今度は画面が横に動いて、満天の星空になります。

 白鳥がV字に隊列を組むように飛び、そして画面いっぱいに大きな月が映し出されます。


 季節は再び冬になります。雪が積もっています。

 キュッと音がして、ディアナが「ふふふ」と笑います。
 踏むと雪が鳴るのが、面白いのです。おそらく月では体験できなかったのでしょう。本当に芸が細かいですね。


 このシーンでディアナは杖をついていますが、それが雪に慣れていないための用心なのか、それとも老衰のためなのかは明記されていません。
 ここらへん、明らかにするほど富野はヤボじゃないですね。

 しかし、冬から始まり、春・夏・秋・再度冬と場面転換しています。
 この季節の変化は、ディアナの寿命とリンクしていると考えた方が自然ではないでしょうか。

 冬はもちろん晩年、です。


 
 画面は雪に囲まれた家・森・山を映し、三日月を捉えます。

 そしてロランがディアナを呼びに来ます。「今日のスープはおいしいですよ」。

 スープを食べ終えます。『月の繭』が終ります。『宵越しの祭り』が流れ始めます。


 ロラン「ディアナ様、また明日」

 ロランが扉を閉めます。ディアナはベッドの中で目を閉じています。 

 前話でロランが言った「人が安心して眠るためには!」というセリフは、このラストシーンにおけるディアナの姿で結実します。




 いかがでしたか。本当に素晴らしい6分間ですね。


 ちなみにDVDのライナーノートによると、このラストシーン、当初はフルサイズの『月の繭』が終ると同時にフェードアウトする予定だったそうです。

 でも富野いわく「彼女(菅野さん)が変な顔するんで」変えたそうです。

 それで今ある形になったのですから、菅野さんに感謝ですね。


 









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