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ラジオ番組「TOKYO SPEAKEASY」の富野監督×ドリカム中村正人さん対談文字起こし 4 [富野監督関係]




どうも。

『ガンダム』などを作った富野監督と・ドリカム中村さんが出演したラジオ番組「TOKYO SPEAKEASY」(8月21日放送)の文字起こし、その4です。
次回で終ります。

富野監督の最新作劇場版『Gのレコンギスタ』(略称『Gレコ』)シリーズのテーマ曲を担当したドリカム。そのため、対談の内容は多岐に渡っています。

これまでの記事は以下の通りです。

ラジオ番組「TOKYO SPEAKEASY」の富野監督×ドリカム中村正人さん対談文字起こし 1
ラジオ番組「TOKYO SPEAKEASY」の富野監督×ドリカム中村正人さん対談文字起こし 2
ラジオ番組「TOKYO SPEAKEASY」の富野監督×ドリカム中村正人さん対談文字起こし 3

今回も、勝手に適宜中見出しを入れております。それと敬称略です。ではでは。



亜阿子さんからのダメ出し


中村:世界の富野ですよ。ぼくおべっか使う必要全く無くてですね、おべっか使ってもなんの得もないんですよ。

富野:はいはいはい。

中村:テーマ曲書かせていただきましたし(笑)。
全く損得ないところで、今回の『Gレコ』でやっぱり監督が強調していらっしゃったのは、そのガンダムっていう先入観なしで見て欲しい。
逆に言うとガンダム知らない人に見てほしい、今の子どもたちに見て欲しいっていう意味では、ぼくは年食ってますけれども結構同じところから入ったわけですよ。



改めて『Gレコ』を、オリジナル版をあえて見ないでね、このポスターだけ見て、これから感じる音楽書いてくれればいいんだよって言ったのと全く同じ角度で入って、やっぱり『Gレコ』はね、面白い。
でもね、まだね得体が分からない面白さなの。

富野:そうなの。その欠点というのが、最近ようやく分かるようになったわけ。
亜阿子さん(富野監督の妻)から昔から言われていたんだけれども、登場人物が多いやつはダメ。映画っていうのは2人とか3人とか4人、出ても5人まで。それで『Gレコ』はキャラクターが多すぎる。ガンダムも多すぎる。それダメ。映画になってないって言われて、本当にすみませんって言うのは最近本気で分かるようになったからね。


「群集劇」の魅力


中村:でも、ぼく亜阿子さんに逆らう気はなくてですね、なぜかというと(劇場版『Gレコ』に)ドリカムを使えと言ったのは亜阿子さんですから。
本当に亜阿子さんに感謝してて、監督にはちっとも感謝していないんですが。
でもこの前も対談でちょっと喋らせてもらったんですが、今の例えばネトフリとか、そういう海外ドラマも含めてヒット作っていうのは、群集劇っていうか登場人物が多くて、でもその登場人物を本当に丁寧に描いて。

富野:そうか。

中村:そうですよ。本当ですよ。何でもいいですよ、例えばゾンビ映画でも、何でもいいや。
そういう意味では『Gレコ』はまさにベルリだけを描いているんじゃなくて、ベルリを中心に……してない時もあるじゃないですか。

富野:そうそう。だけど映画っていうのは2時間以内で、ピシッと見られて分かるというのが映画なのよ。そういうものに収まっていない『Gレコ』ってやっぱり映画じゃないのね。

中村:でも今の映画は、もちろん15秒で分かる映画もあれば、ネットフリックスみたいに10シーズン・各話(おそらくシーズンのこと)18話とかそういうので延々見せるのも、その劇中の一人として自分を感じてきちゃうわけじゃないですか。
そういうの見てると。

富野:はいはいはい。

中村:『Gレコ』はそういう要素いっぱいあるって前の話であれなんですけど。だから亜阿子さんの意見も勿論分かりますけれども、今じゃないですか。

富野:だからこそなの。『Gレコ』は5部作で作ってもいいんじゃないのかってことはもうほんと5年前から思ったし、それを実行させてもらってるんだけれども、やっぱり戯作者としての理想論があるわけね。高い。シェイクスピアに勝ちたいわけ。

中村:勿論です。


「若い子」と分類することの無意味


富野:そういう時にこれでなーってのがあるから。
だから今回、『G』の曲を頂いた時に本当にビックリしたのが、あの単語(ブログ主注・「シェイクスピア」のこと)が出てくるっていうことの凄さっていう意味では、今の若い子には分かんないだろうと思うんだけどドス突きつけられたって感じがあるからね。


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中村:それは監督、我々というか監督はぼくの大先輩ですけれども、今の若い人たちっていう分類もこうままならなくなってきて、まさにそのオンラインとオフラインの人類に全く別れてですね、年齢関係なくオンラインとして実績がない人間は尊敬されないと言うか。
尊敬までいかなくて、相手にされない。
うちの娘がぼくがアドバイスしても、ぼくは動画の編集の仕方も知りませんし(笑)、本当ガジェットの使い方ホントに分かんないんで、人生の先輩として教えても、iPhone使えなかったらアウトなんですよね。説得力が。

富野:きっとそうなですよね。今ぼくの周りにはそういう人がいないから、

中村:そうですか?

富野:そういう敗北感がないの。だって同年齢しかいないんだもん。

中村:でも作画の現場って、やっぱり最新のガジェット使ってますよね(笑)。

富野:使っているんだけど、使っているんだけどもああいう物を使うようになっている奴は他人だもん。他人なんてもんじゃない。スタッフ以下だもん。絶対付き合わない。

中村:何言ってるんですか。

富野:鉛筆で絵を描ける人としか仕事はしなくなっちゃってるから(笑)。

中村:宮崎駿さんみたいなこと言わないでくださいよ、よく分かんないなもうー。


戦前生まれの富野監督


富野:だってそういう歳…年齢には勝てない部分があるんだって。

中村:でも監督41年生まれじゃないですか。本当にポツダム宣言が45年じゃないですか(笑)。

富野:(笑)。

中村:すごいと思って俺なんか。もう現役ですよ。
こういう言い方したら軽くなっちゃって、ちょっと誤解を受けて困るけど。だけどよく考えたらぼくも58なんで、生まれが。ポツダム宣言からたった13年しか経ってないんですよ。今の13年前ってこれ皆さんどう思います? 昨日のことでしょ13年前って。

富野:言われてみればそうだよね。

中村:ですよ。

富野:だけど今の若い人ってポツダム宣言の話とか分かんないんでしょ絶対に。

中村:いや今検索してますよ。簡単ですよ。あっという間に。今「ポツダム宣言」って上がってきますからガンガン。ふざけてるんじゃなくてね。

富野:いや分かる。

中村:やっぱりその中で猛烈な体験をなさってきて、

富野:してない。だからぼくの場合には。

中村:それはあのWikipediaで読みました。


「立派な戦死」という言い方の発明


富野:してない一番の理由っていうのは、今8月期だからそれ終戦記念日みたいなことがあるんで、そういう記事もいっぱいを読まざるを得ないわけ。
で読んでてつくづく思うことがあって、なんでこんな風な日本になってしまったんだろうなって言えても、なんであんな戦争やれたんだろうなすごいよねってキ***沙汰…ああ、ごめん(ブログ主注・放送中では全部言っていました)。

中村:大丈夫です大丈夫です。41年生まれなんで普通の言葉ですから。当時の表現を今忠実に再現しているわけであって。今監督はそういう概念は持ってらっしゃらないから。

富野:概念は持ってないからこそ逆に、ほんとにね謎なんですよね。
なんでああまで国力が違うのに戦争を仕掛けられたんだろうかなっていうのは、常軌を逸してるって言うもんではないんですよ。
そういうレベルではないのに、実は戦後の問題でよく分かることがあるんだけども、一番仕掛けた、仕掛け人をした人たちというのが全部発言をしてないわけ。戦後は。つまり特攻に行けと言った奴は、いなくなっちゃったの。一切合切いなくなっちゃったの。
で、特攻させられて死んだっていう痛みだけを持った人たちが戦後発言をしているわけね。
あの特攻を仕掛けるということを思いついて、それをやることが戦争だと思えて、そして特攻で国に殉じたということで立派な戦死なんだって言う言葉遣いを発明する奴がいるわけよ。

中村:それはでも、それで救われる方も。

富野:当然です。あの戦死者を家庭内に持ってる人たちはみんなそうなの。だってそうでなかったら、無駄死になんて言ってほしくないもの。

中村:本当ですね。本当ですね。

富野:問題なのは、だけど死にに行けと言って、それで戦争に勝てるんだったら死にに行けと言ってもいいんだけども、死にに行けと言った奴が戦後生き残っててごめんなさいって言った奴は一人もいなくて、軍人恩給をもらってんのよ。

中村:ちょっとその辺はですね、この番組が終わった後に。(文字起こし「5・最終」に続く)


※富野監督は「子どもに作品を届けたい」と願い、また過去に何回も「子どもを舐めて作品を作ってはいけない」って言っておきながら、この対談では「今の若い子には分かんないだろう」って繰り返すの、なんなんだろうね?
 特に「ポツダム宣言の話とか分かんないんでしょ絶対に」なんて、ホントにどういう意味で言ってんだろ?


※関連記事
ドリカムファンの皆様へ。『GのレコンギスタII「ベルリ 撃進」』で、ドリカムが曲を歌う意味。 




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