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「ガンダムはSFか」論争のあれこれ [富野監督関係]

 どうも。今回は、ちょっと力入れた。
 原稿料くれ…じゃなかった、よろしければひと時お付き合いのほどを。

 数日前、ツイッターのTLに「ガンダムはSFか」関連の話題が(今更)流れて来ました。

 ぼくはSFマインドが無い・SFの分からない人間だし、ガンダムマニアでもないので、正直ガンダムがSFであろうがなかろうが・どうでもいいのだが、この論争がかつてあったこと自体は勿論知っていました。

 高千穂遥さんによる「ガンダムはSFではない」や、唐沢俊一さんによるガンダム否定などです。

 ただ、その文章自体は読んだことがなかった。

 で、今回TLにその話題が流れて来たのは、当時の文章がツイッターで上げられたかららしい。

 togetterにもまとめられていた。
「ガンダムはSFか」を語る中、80年代の同テーマの有名な論争資料が発掘される〜2019年に、当時の作家らの言説を振り返ると?
 

 読んでみると。
 TV版ガンダムのロマンアルバムに掲載された文章で、高千穂さんや光瀬龍さんの・ガンダムに対してかなり否定的な文章だった。
 思っていたより、かなり厳しい否定だったな(笑)。

 先述したようにぼくはSF者ではないので、光瀬さんの有名な『百億の昼と千億の夜』すら読んだことないし…


百億の昼と千億の夜 (ハヤカワ文庫JA)

百億の昼と千億の夜 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 光瀬 龍
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2010/04/05
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 高千穂さんは、書棚探したらダーティがあった。

ダーティ.jpg

 ぼくはファーストガンダムが好きだが、お二人があのように書くのも、なんとなく、なんとなくだがその心情を想像できなくもない。
 
 ぼくも今から数十年前、「Gガンなんてガンダムじゃない!」と思っていたしなあ…

 もともと日本のSFは「SF雑誌がSMコーナーに並んでいた」という有名な・不遇の時期を経ているために、マニア特有の心理が働いていたのかもしれない。

 そこら辺の微妙な心理について、庵野秀明さんは『SF入門 日本SF作家クラブ編』で次のように語っている。


(前略)七十年代の終わりあたりから、日本はSFブームになるんですが、ぼくはブームになると冷めてしまう、天の邪鬼なところがあって、(略)
 オタク気質だと思うんですけれど、メジャーになっていくにつれ、自分の大事にしているものが世間によって浸食されていくような気がして、『ヤマト』も続きがどんどん作られていくのがイヤでしたね。(早川書房『SF入門 日本SF作家クラブ編』、78P)


 さてガンダム周辺に関わりのあった高千穂さんは後回しにするとして、光瀬さんで富野まわりと言うと、ぼくは『『海のトリトン』の彼方へ』(古沢由子著、風塵社)の後書きを担当なさっていたことしか知らない。


『海のトリトン』の彼方へ

『海のトリトン』の彼方へ

  • 作者: 古沢 由子
  • 出版社/メーカー: 風塵社
  • 発売日: 1994/06/01
  • メディア: 単行本



 この後書きの中で、光瀬さんは「トリトンは繰り返し青春の夢と挫折を綴っていた」と指摘したうえで、こう続けている。


物語そのものが私の記憶に残るものではなかったとは言わないでおこう。(中略)。あの戦争と、戦争が終わった後と、二つの時代によって完全に自らの青春時代を分断され、否定された五十歳の男にとっては、夢や挫折は問いかけの領域ではなく、極めて簡単な方程式に過ぎないからだ。(212P)


 この本を読んだ当時、「トリトン研究本の後書きで、控え目だけれどハッキリと・内容は響かなかったと書いているなあ」と苦笑したものだが、今回時を経て読んだガンダム短評はもっとストレートに批判していたな(笑)。

 まあぼくは、SF界における覆面座談会事件とか、坂口安吾のミステリー作家批判とか(横溝はベタ褒め)にワクワクするタイプの人間なので、この評自体は嫌いじゃない。
 アニメ史に残る出来事になっていると思うし。評の内容があっているかどうかはともかく。
 そのうちアニメ界でも、細君譲渡事件とか起こらないかしら。今ならあちこちの方面からボコボコだろうな。

 さて、完全な「外野」である光瀬さんに比べて、高千穂さんの立場は・完全な外野とは言い切れない。

 高千穂さんは今回話題になったロマンアルバム以外でも、「OUT」などでガンダムに言及している(らしい、と付けておこう。ぼく自身はお目にかかっていないから)。

 ここら辺は、サイト「SF者達の挽歌」さんが詳しい。
 
 また、ネットで読めるPDFファイルの論文「想像の共同体としてのニュータイプ──『機動戦士ガンダム』をめぐる同時代言説──」では、そもそもガンダムファンが文意を取り違えているか、SFじゃなくても面白いというガンダムファンと高千穂さんでは・実は対立軸が存在しないため、論争のていをなしていなかったと指摘している(もっとも今回togetterに掲載された文章を、「ただSFか否かの視点からのみ批判している」かは、検討の余地があると思う)。

 さて上記サイト「SF者達の挽歌」さんによるとその後、富野監督と高千穂さんが対談したそうだが、高千穂さんが指摘するガンダムのSF性のなさを、富野監督はほとんど肯定したそうです。
 誰か文章読ませてくれ…

 これは、『だから僕は…』での豊田有恒さんへの言及を読むに、富野監督ファンなら納得できるところだと思います。
 そもそも富野監督は、ご自身にSF的素養があるとは思っていないのではないでしょうか。

 光瀬さんと違って高千穂さんは、「スタジオぬえ」結成前、『ゼロテスター』の頃からサンライズと付き合いがある。
 『ザンボット3』にも企画時に参加しており、キラー・ザ・ブッチャーの名付け親は高千穂さん(この辺りの話は、『サンライズ創業30周年企画「アトムの遺伝子 ガンダムの夢」』第10回に詳しい)。
 
 ガンダムが、ハインラインの『宇宙の戦士』にヒントを得て制作されたことは知られているけれど、


宇宙の戦士〔新訳版〕(ハヤカワ文庫SF)

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  • 作者: ロバート・A ハインライン
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2015/10/22
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 その本を貸したのも高千穂さん。
 ちなみにネットでは、高千穂さんが富野監督に貸した、とするものもあるけれど、出典どこだろう? 『OUT』で、松浦さんに貸した(そして無くされた)エピソードは掲載されているようだ。

 話題を戻して。
 だから光瀬さんより、関わりのある高千穂さんの方が、あの文章書くのに勇気が必要だったと思うんだけれど(笑)。ガンダムに対して、思うところも色々あったろうし。

 結局「ぬえ」からは、松崎さんしか『ガンダム』に(直接的には)参加していない。
 
 ちなみに松崎さんご本人は、「ぬえ」から自分だけ参加していることに関して、


それはわからなくもないかな。ポリシーというか「これは違うだろう」「こうでなきゃダメなんだ」という自分の基準にこだわる、言ってしまえば暴走するタイプのやつもぬえにはいましたからね。
(講談社『ガンダム者 ガンダムを創った男たち』110P)


 と語っています。

 富野監督自身は、「ぬえ」について


「(前略)それまでのアニメ関係者とはちがう人種だったんだ。SF考証とかメカの構造など、それまでのアニメ界ではほとんど無視されていたことについて、"偏執"と思えるほどディテールにこだわっていたものね」


 と、出会えたことに感謝しています(徳間書店『アニメージュ』1981年1月号)。


 さてガンダムをSF的視点から…だけかどうかはともかく、批判した高千穂さんですが、富野監督と疎遠になったわけではありません。

 それどころか、(おそらく日本初のロボットアニメ発のノベライズである)小説版『機動戦士ガンダム』が朝日ソノラマから出版できたのは、高千穂さんの力添えがあったからであることを、富野監督自身が何回か語っています。

 では・そもそも、SFとは何か。

 「SF者達の挽歌」さんの中では宮武さんによる言葉、「価値の相対化」「視点の流動化」がSFの武器、と紹介されています。

 もっとも『アニメージュ』1988年1月号の富野監督との対談で田中芳樹さんは、ガンダムの魅力は「視点の相対化」と指摘しているんだけれど…ちょっと意味合い違うようですが。


 毎週30分のTVアニメはアトムから始まって、鉄人、そして平井和正原作・SF作家も脚本に参加していたエイトマンと続くわけだけれど、それでもガンダム放映当時は「TVアニメ」と「SF」がハッキリ分かれていた時代、ってことなのかな。

 この「○○はSFか」、近年では「ガルパンはSFか」も、少しネットで盛り上がっていたような気がするけれど。

 でもガルパンのそれは、SFが奥深く浸透した時代故の結果で、ガンダムのSF論争とは似て非なる様相のものなんだろうな。



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