『さらざんまい』1話目を見て、河童と尻子玉。 [アニメ周辺・時事]
どうも。またひと時、お付き合いのほどを。
「イクニ監督である」こと以外の予備知識は一切なく、『さらざんまい』の1話目を見ました。
幾原さんの作品はウテナもピンドラもユリ熊も、ぼくには全くピンとこなかったので、今回も肌に合わないんだろうなと思いつつ。
1話目を見ていたのですが。
終盤までは・いつも通りの意味ありげなシーンの数々がどうにも好きになれず、今回もぼくには……と感じながら見ていました。
しかし最後の展開で、おっ。と。
かなり興味を惹かれました。
映画『ムカデ人間』のように繋がった人たちが(違う)、
記憶を共有できる。そして主人公の秘密が、おお、エラリー・クイーンの『××の×』を彷彿させる展開とは(ミステリー小説のネタバレなのでタイトル伏字)。
俄然興味が湧きました。
で、あらためて。
劇中には「しりこだま」が出てくるけれど、ぼく・長いこと「しりこだま」という言葉を知らなかった。
たぶん、初めて知ったのは西原理恵子さんの漫画(『まあじゃんほうろうき』かな?)で出てきた、「尻子玉抜かれたような連中が…」みたいな言葉だったと思う。
そこからさらに、「河童が尻子玉を抜く」ってことを知るまでには、もう少し間があったはず。
なんだよ尻子玉って……
ちなみに三省堂『大辞林』には、
肛門にあると想像された玉。俗信に、河童(かつぱ)が抜くというもの。
とあります。
さてぼくは札幌に住んでいるので、「河童」と聞くと定山渓を思い出します。
札幌の奥座敷・定山渓にも、河童伝説はあるのですよ……
それはさておき、まあ河童と言えば柳田国男の『遠野物語』ですよね。
ところが『遠野物語』には、尻子玉に関する言及はありません。
河童(「川童」表記)の話としては、
「二代まで続けて川童の子を孕みたる者あり」
「川の岸の砂の上には川童の足跡というものを見ること決して珍しからず」
「(捕まえた河童を)村中のもの集まりて殺さんか宥るさんかと評議せしが、結局今後は村中の馬に悪戯をせぬという堅き約束をさせてこれを放したり」
などとあります。
けっこう人間世界に溶け込んでいるな、河童……
さて、ではではと同じく民俗学者・折口信夫『河童の話』を読むと。
お。そうだ。参考までに、折口は河童の特徴について、
「毎日海から出て来る事、家の富みに関係ある事、ある家主に使はれる事、主の失策を怨んで来なくなること、女姿の、子どもでないのもある事などが知れる」
と書いています。
で、「しりこだま」も出てくる。
「雪隠(ブログ主注・せっちん。念のため、トイレのことです)の下の河童の覘(ねら)ふものは、しりこだまであつた」
と出てきます。
河童、トイレの中に潜んでいるとは…福島で起きた・有名な怪死事件みたいじゃないですか…
上記の文章は、次のように続きます。
「何月何日、水で死ぬと予言せられた人が、厳重に水を忌んだが、思ひも設けぬ水に縁ある物の為に、命を失ふ話の型の中に、其日雪隠に入つて、河童にしりこを抜かれた話もある。厠の中を不似合として、手水鉢の中から出たことにしてゐる例は、筑前三井郡出身の本山三男さんから報告せられた。」
違うぞォォォ! トイレの中じゃあないッ! 手水鉢の方だッ!!
なんとなく。
尻子玉を抜かれると、死んじゃうようですね。
『さらざんまい』では、矢逆一稀、久慈悠、陣内燕太の3人は、尻子玉を抜かれて河童になっていました。
ゾンビは、尻子玉を抜かれる=秘密をバラされて爆散していましたけれど……
なお幾原監督自身は、「カッパ伝説といえば、尻子玉が有名ですが、本作では重要なモチーフとして取り入れています」と言及しています。
幾原作品は、暗喩(らしきもの)がこれ見よがしに散りばめられているので、へそ曲がりのぼくとしては、視聴者が楽しむべきそこらへんの意味づけ・謎解きには、全く食指が動きません。
しかし「尻子玉」がどう扱われるのかは、非常に興味を持って今後も見ていきたいと思います。
ちなみに今回言及した『遠野物語』も『河童の話』も、文中でリンク貼っているように・青空文庫で無料で読めます。
『さらざんまい』の副読本として、いかーすか。
※引用は全て青空文庫版『遠野物語』『河童の話』からです。
「イクニ監督である」こと以外の予備知識は一切なく、『さらざんまい』の1話目を見ました。
幾原さんの作品はウテナもピンドラもユリ熊も、ぼくには全くピンとこなかったので、今回も肌に合わないんだろうなと思いつつ。
1話目を見ていたのですが。
終盤までは・いつも通りの意味ありげなシーンの数々がどうにも好きになれず、今回もぼくには……と感じながら見ていました。
しかし最後の展開で、おっ。と。
かなり興味を惹かれました。
映画『ムカデ人間』のように繋がった人たちが(違う)、
記憶を共有できる。そして主人公の秘密が、おお、エラリー・クイーンの『××の×』を彷彿させる展開とは(ミステリー小説のネタバレなのでタイトル伏字)。
俄然興味が湧きました。
で、あらためて。
劇中には「しりこだま」が出てくるけれど、ぼく・長いこと「しりこだま」という言葉を知らなかった。
たぶん、初めて知ったのは西原理恵子さんの漫画(『まあじゃんほうろうき』かな?)で出てきた、「尻子玉抜かれたような連中が…」みたいな言葉だったと思う。
そこからさらに、「河童が尻子玉を抜く」ってことを知るまでには、もう少し間があったはず。
なんだよ尻子玉って……
ちなみに三省堂『大辞林』には、
肛門にあると想像された玉。俗信に、河童(かつぱ)が抜くというもの。
とあります。
さてぼくは札幌に住んでいるので、「河童」と聞くと定山渓を思い出します。
札幌の奥座敷・定山渓にも、河童伝説はあるのですよ……
それはさておき、まあ河童と言えば柳田国男の『遠野物語』ですよね。
ところが『遠野物語』には、尻子玉に関する言及はありません。
河童(「川童」表記)の話としては、
「二代まで続けて川童の子を孕みたる者あり」
「川の岸の砂の上には川童の足跡というものを見ること決して珍しからず」
「(捕まえた河童を)村中のもの集まりて殺さんか宥るさんかと評議せしが、結局今後は村中の馬に悪戯をせぬという堅き約束をさせてこれを放したり」
などとあります。
けっこう人間世界に溶け込んでいるな、河童……
さて、ではではと同じく民俗学者・折口信夫『河童の話』を読むと。
お。そうだ。参考までに、折口は河童の特徴について、
「毎日海から出て来る事、家の富みに関係ある事、ある家主に使はれる事、主の失策を怨んで来なくなること、女姿の、子どもでないのもある事などが知れる」
と書いています。
で、「しりこだま」も出てくる。
「雪隠(ブログ主注・せっちん。念のため、トイレのことです)の下の河童の覘(ねら)ふものは、しりこだまであつた」
と出てきます。
河童、トイレの中に潜んでいるとは…福島で起きた・有名な怪死事件みたいじゃないですか…
上記の文章は、次のように続きます。
「何月何日、水で死ぬと予言せられた人が、厳重に水を忌んだが、思ひも設けぬ水に縁ある物の為に、命を失ふ話の型の中に、其日雪隠に入つて、河童にしりこを抜かれた話もある。厠の中を不似合として、手水鉢の中から出たことにしてゐる例は、筑前三井郡出身の本山三男さんから報告せられた。」
違うぞォォォ! トイレの中じゃあないッ! 手水鉢の方だッ!!
なんとなく。
尻子玉を抜かれると、死んじゃうようですね。
『さらざんまい』では、矢逆一稀、久慈悠、陣内燕太の3人は、尻子玉を抜かれて河童になっていました。
ゾンビは、尻子玉を抜かれる=秘密をバラされて爆散していましたけれど……
なお幾原監督自身は、「カッパ伝説といえば、尻子玉が有名ですが、本作では重要なモチーフとして取り入れています」と言及しています。
幾原作品は、暗喩(らしきもの)がこれ見よがしに散りばめられているので、へそ曲がりのぼくとしては、視聴者が楽しむべきそこらへんの意味づけ・謎解きには、全く食指が動きません。
しかし「尻子玉」がどう扱われるのかは、非常に興味を持って今後も見ていきたいと思います。
ちなみに今回言及した『遠野物語』も『河童の話』も、文中でリンク貼っているように・青空文庫で無料で読めます。
『さらざんまい』の副読本として、いかーすか。
さらざんまい1話目見た。かっぱの話なのにさちかっぱさんがキャスティングされてないとは……
— 坂井哲也 (@sakaitetsu) 2019年4月16日
※引用は全て青空文庫版『遠野物語』『河童の話』からです。
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2019-04-16 15:12
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