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エルガイムのような展開になる予定だった『ザブングル』のラスト [富野監督関係]



マクラなしに。1週間ほど前、島津冴子さんが次のようなツイートをしていました。














37年前ですか。



この頃と言えば、富野監督の新作TVシリーズが毎年のように作られていて、それを不思議とも思っていませんでした。



けれども今考えると、当時の富野監督は劇場版ガンダムを作っていて、さらに劇場版イデオンも動き始めていた頃で、通常なら1年間の新作TVシリーズを作るようなスケジュールではなかったでしょう。



実際・ザブングルは当初、鈴木良武さんと吉川惣司さんの企画でスタートしており、監督も吉川さんがする予定でした。内容は宇宙SFもの。



富野監督が参加したのは放映4か月前。

ホテルに一晩泊って、骨格を固めたエピソードはこちらのサイト、またはこのブログに詳しいです。



ぼくは当時バッチリ視聴者層だったものの・リアルタイムでは見ておらず、後年レンタルビデオショップで借りて見ました。



今のように「TVアニメシリーズの全巻がある」のが当たり前の時代ではなく、その出始めだったように思います。



だからリアルタイムの感想で、「マクロスと同年代」「同じような三角関係の構造」と言われると、やはりリアルタイム視聴でないと得られないものはあるのか、と感じます。







君は走るか、俺たちゃ走る!




ザブングルのイメージは、一言でいうと「走る」だと思う。








(おそらく局や広告代理店向けの)PR企画書には「ユーモア・ロボットアクション」とか、「惑星西部劇」なんて言葉が躍っているけれども(『ロマン・アルバムエクストラ57』126P、以下ページ数のみの場合はこのムックを指す)、まあ現在から思い返すと、「走る」イメージしかありません。 




ユーモアはまだあったかもしれない、でも西部劇は・砂塵吹く舞台だけで、個人的にはあまりしっくりこない。 あ、ティンプはまんま西部劇っぽい。

ロボットで西部劇と言えば、今となっては『ガン×ソード』を思い浮かべる人の方が多いのではないでしょうか。



ザブングルでぼくが「走る」をイメージするのは、『ザブングル・グラフィティ』の影響も強いのかもしれません。



「君は走るか、俺たちゃ走る!」とのキャッチも印象強いし、どこに掲載された一文か忘れてしまいましたが、「キャラクターも走り、2スタも走った」的な富野監督のコメントも良かった(これ、何に掲載されたコメントだっけ?)。




『ザブングル・グラフィティ』はファンに愛される小品、という感じがあり、ぼくも好きな作品です。

ファンじゃない人にお勧めできる作品じゃないけれど…



また「走る」に関連して、キャラの動きや演出も印象深いものがありました。



まあ富野監督本人も言っているので・問題ないだろうけれど、『未来少年コナン』をしようとしているな、と。

富野監督本人は例えば、





具体的な例では、「カリオストロの城」をまねろとっていって、まねしてもらったりもしたわけです。(128P)



「未来少年コナン」という作品をコピーするところから、練習を初めています。(ラポート『富野語録』73P)


と語っています。





この思いがあるからこそ、数十年後、G-レコの劇場先行公開を見た時に、ぼくは下記のように呟いたわけです。なぜ関西に行ったこともないぼくが大阪弁になっているのか、我ながら鬱陶しい限りですが……








印象深い次回予告




TVシリーズでいうと、次回予告も特徴的でした。



ぼくが見ているサンライズロボットアニメの中では、ボトムズ、ドラグナー、そして本作の次回予告が特に良かったと思います。



ボトムズ、そしてザブングルの次回予告を担当した声優は銀河万丈さんで、当時は「予告に関してはかなりやり残したような感想がありますね」(136P)と残しています。



また後年の古川さん・平野さんとの対談では、「楽しめそうなフレーズがあるとうれしくなっちゃったりしました」と振り返っています。





「銃火の果てに見たものは、父の仇のティンプ・シャローン。地の果てまでも追いかける、執念見せますジロンです。ラグとエルチはほっといて、ゴースト・タウンで大決闘」なんて、講談を連想していまいます。







元案では、ラストシーンはエルガイムと同じ展開だった




富野作品はこの後、TV版のザブングルがあり、『グラフィティ』があり、ダンバイン、エルガイムと続いていきます。



確か永野護さんだったと記憶していますが、エルガイムにはザブングルに再チャレンジしよう、という思いが富野監督にはあったと語っていたはずです。



確かに前述した三角関係のキャラ配置や、特にエルガイムの前半部分は、ザブングルと重なる部分があります。



そしてラストシーンも、実は関連がありました。

以下は、ザブングル時の島津冴子さん(ラグ役)のコメントです。





8月の段階のラストシーンは、ラグにとってもっと寂しい終末だったんです。エルチが洗脳されたままジロンと旅に出、ラグはサンドラットの仲間と残されてしまう。(134P)





実際では、ザブングルのラストはみんなで走る、「らしい」内容になりました。



しかし没案である「エルチが洗脳されたままジロンと旅に出、ラグはサンドラットの仲間と残されてしまう」は、エルガイムのラストそのままです。



エルガイムの後半はすでに『Z』制作が動いていたので、間に合わせるために「没案を引っ張りだしてきた」可能性もあります。

それともこの展開、富野監督にはよほど捨てがたい魅力があったんでしょうか。



富野監督自身は、下記のように語っています。





ですから、ラストシーンと言うことについては一番初めに頭にあって作ったシリーズだということです。(『富野語録』P110~111)



そりゃ頭にあったでしょう。

なにせザブングルの時から、同じようなラストを考えていたのですから。



よくある「キャラクターも生き物」的には、ジロンはそのラストを拒絶して走り出し、ダバは受け入れた、とも書けるのですが。



ぼくそういうの、好みなんですよね。





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『エルガイム』の企画段階とラストシーン

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