ネトフリで見た『きまぐれオレンジ☆ロード あの日にかえりたい』がなかなかに意欲的な作品だった [アニメ周辺・時事]
定期のお立ち寄りありがとうございます。初めての方もお見知りおきを。
今回もひと時お付き合いのほど。を。
えー。
先日、Netflixに『きまぐれオレンジ☆ロード あの日にかえりたい』があったので、見てみたんですよ。
きまオレは原作読んでいるし、TVシリーズは全話見ているはずだし、でもこの映画は見ていないし、あと望月監督に興味あるし。
望月さんと言えばなんと言っても『海がきこえる』。
あと、めぞんの完結編が思い浮かぶ。ダーティFLASHもそうか。Gレコにも参加した!
でも見てない作品も多いので、ちょっと見ようと。
『あの日にかえりたい』、評判はネットで見たことあったんですよ。
原作とかなり違うとか、原作者さんが怒ったとか、原作ファンからの反応もあまり良くなかったとか。
で、実際に見て。変わった映画だなーと。かなり意欲的というか。
望月さんに興味あるので、ネトフリにあった・きまぐれの『あの日にかえりたい』見たけれど、いやーヘンなアニメだなー!
— 坂井哲也 (@sakaitetsu) 2018年8月16日
ちょっと語れるくらいに変。作品の立ち位置的には、うる星BDと同じく、原作批判というか……この作品の場合は(男向け)ラブコメ否定あるよね?
まず、話のメインがね、まどかと恭介が心置きなく付き合うために。
「ひかるちゃんを諦めさせる」なんですよ。
少年向けのラブコメって、複数の可愛い女の子が都合良く主人公の男の子を好きになって、そしてヒロイン以外のサブヒロインはなんだかんだあっても・結局は物分かりよく別れていくじゃないですか。
でもこの作品のひかるは、全然恭介と別れてくれないんですよ。
ひかるちゃんがストーカーっぽくなっとる……(笑)
— 坂井哲也 (@sakaitetsu) 2018年8月16日
実際に付き合った? 女の子と別れるって、こうまで面倒くさいんだ、ってところを見せるの。
それを、少年向けラブコメの『きまぐれオレンジ☆ロード』で。
高橋・あだちの両巨頭がいるサンデーに比べて、ちょっとラブコメが苦手な感があった80年代ジャンプにおいて現れた、王道ラブコメの『きまぐれオレンジ☆ロード』を「使って」、別れるって面倒くさいよ、思い切り冷酷になる必要あるよ、かわいい女の子を傷つけるよ、ってのを見せているんですよね。
『きまぐれオレンジ☆ロード』って、まつもとさんご本人曰く、桂正和さんは変身美少女マンガ、江口さんも美少女描くけれどギャグ、当時ジャンプでラブコメやっているのはちば拓さん(キックオフ!)しかいなかった、って状態の時に登場した作品ですからね。
その『きまぐれオレンジ☆ロード』を使って、ある種のラブコメ否定。
ここらへんの作品の立ち位置が、押井作品『うる星やつらビューティフル・ドリーマー』に似ているな、と思って。
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意図的に「閉じた世界」を作り出している高橋作品の・『うる星やつら』なのに、そこを浮き彫りにさせた『ビューティフル・ドリーマー』と狙っているところは似ているな、と。
そのせいなのか、どちらも原作者には好意的に受け取られていないようだし。
望月監督のブログによると、まつもとさんの意向でフィルムコミックも発売中止、DVD-BOXにも入らなかったらしいから、この作品。
『きまぐれオレンジ☆ロード』というより、ジャンル自体への「異議申し立て」みたいな作品なので、面白いと思うんだけれどね。
だって、まどかがひかるに「私たち、もう3人ではいられないんだね」と告げた直後のシーンで、まどかと恭介が『タッチ 背番号のないエース』を見るんだよ。
その中の、南ちゃんが「南はかっちゃんもたっちゃんも好き。小さい時から、いつだって3人一緒だったじゃない。これからだってずっと一緒。それでいいじゃない」って言っているシーンを二次使用しているんだよ。
もう、ひどいな。悪意(笑)。
ジャンルそのものへの異議だよ。
それともう1つ、これもたぶんかなり意図的に、性について盛り込んでいるんだよね。
恭介が悪友とオナニーの話をするシーンとか、その最たるもので。
話の本筋には関係ないけれど、けっこうな尺を使っているの。
それって、制作側が「これを訴えたい」「どうしても入れたい」ってことだよね。
少年誌に載っているラブコメって、それこそ『きまぐれオレンジ☆ロード』がそうだったように、女の子の下着見てどきっとか、そんな感じでしょ。
でも、現実では・盲目的に好いてくれてキスまでした女の子が、物分かり良く別れてくれないのと同じように、青少年男子のエロはどきっばかりじゃないだろという異議申し立てでしょ。
まあここらへんはさ、『じゃじゃ馬グルーミン UP!』が……じゃじゃ馬をラブコメ作品として扱っていいのかはひとまず横に置いといて、
ひびきちゃんが妊娠したことで、1つの解答が出たって感じもするけれど。
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ここまできて。
持ち上げてばかりいるのもアレなので。
もちろん今見ると、ちょっと辛いところもあった。
特にセリフとか(「ラッピー」は当時でもキツイよなあ……)、仕草とか。
あとこれは不思議なところなんだけれど、鳥の群が画面に入ってくるシーンあるんだよね。
結構動いて、キャラクターの背後を飛び去って行くの。作画の手間も余計にかかるだろうに、あそこ、なんか意図があったのかなあ。
そうだ、もう1つ。良かったシーン。
予備校でまどかと恭介が喋るシーンがあるんだけれど、音声。というか、声の聞こえ方。
教室で2人で喋ったら、やっぱりこうだよな、っていう。
と言うのも、アニメの高木さんで、かなり違和感あったんだよね。
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漫画だとたいして気にならなかったのに、大勢いる教室で・授業中にコソコソ喋っているはずなのに、全然そんな感じがしない。
そこだけ異空間で切り取られているのかな? と揶揄りたくなってしまうような。
で、この作品見たら。
そうそう、こうなるはずだよな、と。まあ仕方ないんだろうけれどねー、高木さん。ああしないと難しいんだろうな。フィクションの綻びが見えてしまう、アキレスの腱みたいなポイントだったのかな。
で、『 あの日にかえりたい』に話を戻して、最後のシーンですよ。
ひかるの「バーン!」ですよ。
あれ、視聴者に向けてでしょ?
劇場版『エヴァ』の、観客映し出すのと一緒。
あ、最後にご丁寧にここまでするんだ、と(笑)。
都合良く別れないひかるが、『きまぐれ』見ている視聴者に指の銃口を構えるわけですよ。しかも正直、このポーズ自体がラブコメあるあるですよ。
いやーほんとにね。
意欲溢れた、不思議な、変な作品ですよ。
途中で書いたように、ノスタルジー無しだとちょっと厳しいかもしれない箇所もあるので。
かつてきまぐれORを読んだり見たりしていた人で、ネトフリに加入していて、『あの日にかえりたい』未見の方は、見ても損しないんじゃないかと思います。
鮎川って1969年生まれ設定なんだ……もう50歳だ(笑)
— 坂井哲也 (@sakaitetsu) 2018年8月16日
2018-08-22 20:00
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コメント(2)
「あの日に帰りたい」を当時劇場で観て今でも心に強く残っているシーンは2件。
本文にもあったラストのひかるちゃんの「バーン!」
これはエンドロール中に出て行ってしまった人は見れていないw
もう1件は、ふられたひかりが恭介へ電話ボックスから電話をするシーン。
「もう先輩と会っちゃいけないんですよね。」
みたいなセリフを言いつつ明るく
「せんぱーい、せんぱーい。」
などとおどけたセリフではあったが、
当時の電話ボックスは、色々な宣伝の小さな貼紙がベタベタ貼られていて、ひかりの目はそれで隠されていて、きっと悲しい目をしているんだろうなぁ… と思わせるシーン。
何処かにこのシーンの画像でも転がっていないかと探したけど見つからなかった…
この程度のシーンはみんなスルーなんでしょうかねぇ…
by 九頭駆 丈 (2021-02-20 16:33)
コメントありがとうございます。
すみません、私も電話ボックスのシーンは覚えてないです……
by 坂井哲也 (2021-02-23 10:48)