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ネタバレありで『リズと青い鳥』感想・レビュー~「disjoint」な2人 [映画感想・実況]




 こんにちは。今回もひと時お付き合いのほどを。

 先日、映画『リズと青い鳥』を見てきまして。

 予備知識全くなしで見に行ったんですけれども。

 TV版の『響け! ユーフォニアム』は1期・2期とも見ていて素晴らしい出来だったので、スピンオフ作品である今回の『リズと青い鳥』も素晴らしい出来だろうと、120点の出来だろうと思って見に行きました。

 120点はさすがに欲張りすぎでしたが、でも満足できました。

 では感想というかレビューというか、ネタバレありでいきますね。
 ネタバレというか、見ている前提で話を進めます。


『リズと青い鳥』は導入部分で期待が高まった


 まず、最初に導入部分にびっくりして。



 もちろん計っている訳ではないので、正確な時間は分からないですけれど。
 たぶん1分……じゃすまないかな、2分くらいはただただ・二人の主人公である鎧塚みぞれと傘木希美が、校門から部室に行くまでの道のりをただ淡々と描いているんですよね。

 でもその一連のシーンで、2人の距離感をとても良く表していて。
 こんなにじっくり見せるんだなーって言うのが、あそこのなんでもないような導入部で・この物語のテーマを表しているっていうのを面白く感じましたね。

 最初に全部風呂敷を広げて、「さあどうぞ、こちらをご覧にいれます」って感じがね。良かったです。

 2人は席を1つ空けて座っていて、その距離を詰めたかと思ったら・また離れていく。
 「あ、こんなに丁寧に描写するんだ」とも思うけれど、観客はこれでテーマが分かるわけですよね。

 そしてスタッフクレジットだけ先に流しておいて、2人の演奏に合わせて作品タイトルが出てくるっていう演出は、心掴まれるオープニングでしたね。


歯車の大きさが違う、『リズと青い鳥』の2人


 物語全体としては 。
 歯車の大きさが違う2人が、当然噛み合わないまま・でも同じ場所にいながら物語が進んでいく。

 2人が大きさの違う歯車だっていうのは、山田尚子監督がインタビューで語っていますけれども。

 映画では些細なその「噛み合わなさ」を繊細に積み上げていく。

 でも歯車の大きさが違っても・カチリと噛み合う時が来る、その一瞬を切り取った映画ですよね。大変面白く見ることが出来ました。

 あのー。
 アニメ『響け! ユーフォニアム』は、青春のちょっと恥ずかしいところとか、尖っているところとか、脆いところとかを、「恥ずかしげもなく表現できる舞台」にするのがとても上手だと思っているんですよね。

 で、今回の映画『リズと青い鳥』でも、その匠の技を感じ取ることができました。

 2人のレイアウトだったり、キャラクターたちの些細な演技だったり、空を飛ぶ鳥だったり。


『リズと青い鳥』で描かれる2つの世界を、違うタッチの絵によって一見で判別できるように提示している


 みぞれが嘘をつく時に髪を撫でる仕草とか、希美が自分の肘を手で押さえるとか、そういう仕草によって心情を表すのも良かったんですけど。

 ぼくがもっと良いなと思ったのは、この映画では2つの世界を交互に描いてるじゃないですか。
 2人が生きている世界と・物語である『リズと青い鳥』の世界を。

 で、映画の中で違う世界をどのように切り替えて見せるか、どのように導入させてまた別な世界にチェンジさせるかっていうのに、もう絵のタッチをガラッと変えることで達成しているところ。



 あのもちろん、例えばみぞれが本『リズと青い鳥』を読んでいて、そこから物語世界に移行するっていう・まあ言ってみればノーマルな見せ方も劇中にあるんですれけど、

 絵柄をものすごく変えることによって、そういう導入部分無しに2つの世界を切り替える、これはとても素晴らしい見せ方だなと思いました。

 もちろん他作品でもこの見せ方はあるけれど、『リズと青い鳥』ではその差異が明確なんだよね。

 あとそういう見せ方と言うか…飛ばし方で言うと、プールに行く話がありますよね。

 みんなでプールに行くと決まって、次にスマホ内の写真を見せることによって、行った事実をスパッと飛ばしてしまう。
 この物語の時間の飛ばし方っていうのは、小気味良かったです。

 いちいち、かったるい「これから物語世界になりますよ」ってシーンを見なくて済む。
 このテンポの良さは特筆すべきだと思います。

 スクリーン見つめながら、良い映画見てるなーっていう実感が湧きました。


『リズと青い鳥』の話をみぞれと希美の2人に置き換えた場合、肝となる部分は先読みできたけれど…


 ぼくは『響け!ユーフォニアム』のアニメは見て・原作は読んでいないので、今回の『リズと青い鳥』がどういう話かは知らなかったんですけれども。




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 ただぼくのようにスレたおじさんだと、まあ途中でね。
 観客をミスリードさせようとしているのには気付くので。

 これは逆なんだな、と。

 それは例えれば。あの。
 お笑いのオードリーさんが昔、ボケとツッコミが逆だった頃は上手くいかなくて、それを今の形にしたら漫才がウケるようになったエピソードありますけれど。

 「それと同じようなことなんだろうな」とは分かりました。
 みぞれと希美、『リズと青い鳥』における立場が逆なんだろうな、それに気付けば演奏もうまくいくんだろうなっていうのは・途中で分かりながら見進めるわけですけれども。

 それでもやっぱり面白かったですね。

 そのどんでん返しは、展開としては確かに重要だけれど、テーマの本質ではないのでね。
 ひょっとしたらこの先、また立場が逆になる「if」も想像できるし。


鎧塚みぞれと傘木希美、2人が立つ階段の位置


 この映画『リズと青い鳥』は、2人の少女がすれ違うエピソードの積み重ねが、肝なわけですが。

 この記事の最初に触れた、部室まで行くシーンで。

 いつも希美が先を歩いて、みぞれがついていくわけですよね。当然、下がみぞれ・上が希美になるわけです。

 登場人物の立ち位置・距離が、2人の距離感や立場を表しているのはまあ、映画における常套手段だと思うんですけれど……

 最後ではね、それがいつもと同じように希美が前・みぞれが後ろを歩いているんですけれど、顔の向きは逆。
 それまではみぞれが希美を追っていたのに、最後のシーンでは希美がみぞれを見上げているわけですよね。

 ここら辺は、オーソドックスな見せ方でも非常に好感が持てました。

 もちろん演奏シーンもあることだし、是非劇場で見たほうがよろしいんじゃないかなと思える映画でしたね。


映画『リズと青い鳥』序盤に出てくる文字「disjoint」


 映画の冒頭に出てくる「disjoint」は、「互いに素」という数学用語だと山田監督がインタビューで答えています


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 実はあんまり共通点のない2人が、しかし・だからこそ惹かれあっている、と。
 でも唯一の共通点と言うか、素数で言えば「1」 …1は素数じゃないか。

 唯一の共通点が「音楽」なわけじゃないですか。

 だからこそ、その音楽によって2人の進路とか関係が変わり始めるわけです。

 ここら辺の設定も唸らされるものがありますよね。

 ただまあ、最後の「disjoint」に繋げたいからなんでしょうけれど、それに数学の授業シーンで「互いに素」の説明はちょっとありましたけれども、やっぱり日本語での表記も欲しかったかな、とは(笑)。


『リズと青い鳥』は、みぞれと希美の百合映画でもあるのか


 あとはですね。

 ちょっとぼくには縁遠い関係ですし、その2人の…特にみぞれが持っている感情が、友達に対する愛情なのか・それとは違う愛情なのか。
 またそれは高校時代特有のものなのか、それとも彼女は女性が好きな……大人になってもね、人なのかっていうのは、そこはこの物語だけではわからないことですよね。

 ぼくとしてはまあ、思春期だけの感情と捉えた方が、より青春映画としての『リズと青い鳥』の儚さとか美しさが際立つんですけれども。

 そこはどう解釈するかは、もう好みの問題なのかなと思いますね。

 たぶん同じ女子高生を描いた映画で、その静的な「青春ならでは」の話、心情を丁寧に追った作品としては、アニメではあんまり同じような作品を思いつかないな。

 邦画・実写で言うと最初の『櫻の園』とか『花とアリス』とか、そこら辺の作品と比肩している程にとても素晴らしい作品だと思いました。

 見て満足でしたね。



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