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映画『オリエント急行殺人事件』感想・レビュー(ネタバレなし) [映画感想・実況]

犯人が有名な原作の映像化


 先日、ぼくのTLでは創作物に対するネタバレの肯定・否定についてちょっと盛り上がっていました。

 その中では、ネタバレ肯定の人でも、注意深い方なら「ミステリーは別にして」と添えている場合が多かったかと記憶しています。

 ミステリーの醍醐味の1つは、犯人当てですからね。

 しかし現在公開されている『オリエント急行殺人事件』は、まあ犯人に関してはネタバレの状態で勝負している作品なわけです。

 勿論、犯人を知らないでご覧になった方もいるでしょう。

 しかし劇場に足を運んだ方の何割かは、例え原作を読んでいなくても、シドニー・ルメット版の映画を見ていなくても、

 例えば『アクロイド殺し』や『まだらの紐』や『Yの悲劇』と同じように、あるいは「犯人はヤス」と同じように、犯人は知っていると思うんですよね。

アクロイド殺し (クリスティー文庫)

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  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2003/11/30
  • メディア: Kindle版



Yの悲劇 (角川文庫 ク 19-2)

Yの悲劇 (角川文庫 ク 19-2)

  • 作者: エラリー・クイーン
  • 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日: 2010/09/25
  • メディア: 文庫



 それでも見たいと思うのは、どのように映像化したのだろう、原作や過去の映画とどう差異があるのだろう・それを期待して、そしてこの映画ならではの良さを求めて見るのだと思います。


とても満足できる映画だった

 
 で、本日見たのですが、個人的には満足でした。

 キャッチコピーは「この列車には、名優たちが必要だった」でしたが、ぼくは中でも久しぶりに見たミシェル・ファイファーに惹かれました。



 『最後の晩餐』を彷彿とさせるシーンも寓話的で良かったし。

 江戸川乱歩の『探偵小説の「謎」』に倣えば、『オリエント急行殺人事件』は(列車自体が)密室+意外な犯人、ということになるのでしょう。

 しかし救助の人達が近くに来ている、さらには橋の上で列車が止まったことで「雪上の足跡」の問題がなくなり、密室の要素が揺らぐことも結論にはプラスになると思いました。
 途中であった逃走劇は、「密室」であることの否定として加えられたシーンだと解釈しました。

 さてしかし、ぼくがこの映画で一番満足したのは、

 序盤でポアロが
 「この世は善と悪しかない」「私は殺人を許さない」とフリを効かせていたところです。


世界を善と悪に分け、自分を善の側に置くポアロ


 無論この「この世は善と悪しかない」「私は殺人を許さない」というセリフは結末に繋がっていくわけですが、私にはスタッフがこの事件だけではなく、ポアロ最後の事件になる『カーテン』まで視界に入れた上でのセリフではないか、と思えるのです。


カーテン (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

カーテン (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 作者: アガサ・クリスティー
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2004/11/18
  • メディア: 文庫



 それこそネタバレなので書きませんが、善悪で世界を分け・殺人を否定していたポアロの価値観が、この映画『オリエント急行殺人事件』で揺らぐのです。

 そして揺らぎが結局、『カーテン』へまで繋がります。

 この映画の最後は、ポアロに新しい事件が舞い込んで終ります(これはネタバレと怒る方はいないでしょう)。

 この舞い込む新たな事件は、セリフからしておそらく『ナイルに死す』です。

 スタッフはこの映画をシリーズ化して、最後の『カーテン』まで繋げようとしているのではないでしょうか。

 と思って調べてみたら、続編制作のニュースあった…

 今回、非常に満足したので、ぜひ『カーテン』まで映画化してほしいな、と願っています。

 全部見ているわけではありませんが、クリスティ原作の映画としては、
 『情婦』
 『ゼロ時間の謎』

 に続いて良かったです。
 

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