「『エルガイム』にあの有名作曲家が参加していた」や、「富野が『ゲートキーパース』に参加するはずだった話のソース」、など。 [富野監督関係]
えー、こんばんは。
しばらくお付き合いのほどを。
あのー、タイトルとは関係ない話から始まりますが、やがてすんなりと本筋に入っていくので、安心して読み進めて下さいませ。
んー。今月ですね、札幌のリーブルなにわって本屋さんが閉店するんですよ。
まあこの本屋さんはね、地下鉄直結で、地下1・2階にあるのですが。
まだネットなんてない時代の、大昔。
地下1・2階を繋ぐ階段の壁面に、白い大きな紙をベタっと貼ってましてね。
そこに、客が自由にメッセージを書き込めたんですよ。
もうぼくが知っているだけで、30年くらい前になるのかな。
その紙には漫画・アニメの同好の士を求めるメッセージや、イラストがいっぱい描かれていましてね。
要するにスキモノの社交場になっていたんですよ。
北海道の田舎に住んでいた子どものぼくは、年に1、2回、札幌に行く機会にはこの本屋に寄って「ああ、この落書きをじっくり読みたい、仲間に入りたい、でも恥ずかしい」なんて内心で葛藤してね。
デパート(丸井今井)の中にアニメイトが入ったのは、もう少し後のことだったかしら。
今となっては、デパートの中にアニメイトって想像できないけれど。
で、リーブルなにわの落書きというかメッセージ・イラスト群を見た角川書店の角川歴彦さんが、「このまま出版したい!」と要望、
しかし書店では過去の紙など廃棄していて角川さんガッカリ…
アレ? この話、どこで読んだんだっけ?
そもそも階段途中の壁に紙を貼って、客が自由にメッセージを書けるようにしていたのって、リーブルなにわじゃなくて、同系列の「なにわ書房」(06年閉店)じゃなかったっけ。
どっちだっけ。記憶あやふや。
角川さんの話を読んだのは、「と学会」周囲の書籍だったはず。
んじゃ、岡田さん×田中公平さん×山本弘さんの座談会3部作『封印』『回収』『絶版』か、岡田さん×山本さん×ゲストの座談会3部作『ヨイコ』『ナカヨシ』『メバエ』のどれかだろうと思って、斜め読みを始めたんですよ。
そしたら、おおおおおお。
既読なのに今となっては忘れている、結構お宝な富野話がある!
そんな訳で、そのお話を紹介します。
あ、ちなみに前記の角川さんの話、書いていたのは唐沢さんでした。
結局ネットで「角川歴彦 リーブルなにわ」で検索したら、唐沢さんの検証サイトがヒットするヒットする。
『トンデモ創世記』での記述だったのね、ぼくも持っているわ。
ちなみに、唐沢さんのことはどうでもいいけれど、北海道に住んでいない人が書く「北海道のこと」は、微妙にズレがあってちょっと面白かったです。
「リーブルなにわ」は1店舗しかない(既に書いたように、名称が違うだけで系列のなにわ書房があった)とか、市内に数店舗ある玉光堂(CDショップ)の中で4丁目店の売り上げだけ突出していることがあり得るのか? とかね。
あると思うよ。あの当時、玉光堂4丁目店が、一番アニメ関係が充実していたんだよ。それこそリーブルなにわとハシゴしやすかったし。
おっと。話がそれた。
では、上記6冊の中から、富野話を。衝撃を受けた順です。
1、田中公平先生、『エルガイム』の曲を書いていた。
田中 『エルガイム』は私少し曲書いたんです、ここだけの話。
岡田 あ、そうなんですか?
山本 知らなかった。
田中 知らないでしょ。私まだ駆け出しでね、仕事がなくて手伝ったんです、人の名前で。(後略、『封印』49~50ページ)
これはビックリ。こんな大事な話、失念してたとはなー。
「人の名前でずいぶん書いた」そうです。『エルガイム』ではどのBGMがそうなのかな。気になる。
2、富野が『ゲートキーパーズ』に参加しそうだった。
岡田 『ゲートキーパーズ』、富野さん向いてるで!
田中 だから前言うたやん(笑)。
岡田 あ、そうや。
山本 来たって。
田中 そう、向こうが売り込みに来てんから。前言うたよ、T野さんが。
岡田 T野さん。でもそん時の条件は「T野さんの回は、じゃあ虫プロ舞台にしてください」(笑)。(『絶版』227~228ページ)
この噂なー。
最近、この噂を思い出す機会があって。
でも現在ネット検索すると、2ちゃんのスレで「岡田が言ってたらしい」くらいの、確度の低い情報しかヒットしないんですよね。
ぼくも『絶版』で読んでいたの忘れてて、「どこでこの話を見たんだっけ。2ちゃんねるには寄り付かないようにしているから、スレで読んだわけじゃないと思うけれど…」とモヤモヤしていたんですが、スッキリしました。
ちなみに『ゲートキーパーズ』は未見、あらすじも知らない。どんなアニメなんだ。
3、『Gガンダム』、4月放送開始なのに、「戦争じゃなく格闘にする」「ガンダムがいっぱい出る」などの根幹にかかわる設定が決まったのは前年11月だった。
『メバエ』238ページに書かれています。富野関係じゃないけれど、ま、ガンダムってことで。
痺れる話ですね。『V』がちょっと商業的にしんどかったので、狙いを明確に子どもに絞ったそうです。
当然スケジュールがキツキツで、特番3本はさんで、4月最終週に放送できたそうです。
この特番ってのはアレですね、内山くんが司会したヤツですね。
あの特番、3週もあったっけ。覚えてないや。
過去のガンダムを振り返るコーナーでZZが流れた時、内山くんが棒読みで「あーこれは見てたなー」と言ったのは覚えています。
「嘘だろ!」と画面に向かって独り突っ込んでいました。
4、絵コンテ千本きりの頃の富野の様子。
小牧 (前略)(ブログ主注・竜の子プロの中村光毅さんが)「今度のメカはこんなのかなぁ?」とかってやってると、クーペに乗った富野さんが颯爽とやって来て、「今月の絵コンテです!」ってバサッと渡して…
岡田 まだ髪の毛あった時代の富野さんですね
小牧 そうそう、風にたなびかせて、クーペで去っていく――「カッコいいなぁ! ああいう仕事がしたいな」って、富野さんにあこがれてたアニメーターいっぱいいるって。 (『ヨイコ』24ページ)
このクーペ云々、どこか別な場所でも読んだ記憶あるけれど、もちろん忘れています。
5、テレビ『宇宙戦艦ヤマト2』の放送最終日が、『機動戦士ガンダム』の初回放映日だった。
『ナカヨシ』18ページより。
本当、役にはたたない「トリビア」ってやつですね。でも、こういう話好き。
もちろん地方差があるかも知れないけれど、1979年4月7日ですね。
6、松本零士先生、例の「ガンダムは俺のパクリ」説、岡田さんにも持ち込んでいた。
岡田「こないだ、あるマンガ家の人から電話かかってきて、「君のオタクのパクリの系譜に新しいやつを加えてあげよう。実はガンダムというのは、僕がアイデアの元だ」と言われて。(後略、『封印』127ページ)
同書では伏字になっていて、岡田さんも「載せんといてね」と言っていますが、もう今では有名な話ですね。
ちなみにその後、岡田さんが「2時間半聞かされた」という話は、これと同じ内容です。
ちなみに岡田さんは「ジャスダム、ガンダム、ドンダム」と言っていますが、リンク先のブログでは「バンダム、ジャスダム、ドンダム、ガンダム」と差異がありますね。
ま、どっちでもいいけれど。
7、富野は北爪さんを殴ってはいないけれど、北爪さんを見ながら制作を殴っていた。そしてやっぱり「オマ〇〇が…」とか言っていた。
『封印』132~133ページ。心温まるエピソードですね。
その他、豆知識列記。富野関連以外も含む。
宮川泰さん、『ヤマト』の最初のレコード作曲分は買取だった。(『封印』27ページ要約)。「富野はガンダムを30万で」とか、『およげたいやきくん』と同じ悲劇ですね。いくらで売っても、大損だよなあ。
今回の参考文献には、誤りもあった。
『封印』86ページで、岡田さんが『エヴァ』本放送より『イデオン』本放送の方が視聴率が良かった、と発言しているが、これはおそらく誤り(86ページ)。『イデオン』の平均視聴率が同書が提示しているように5.6%なら、『エヴァ』は7.1%。
経歴には出ていないが、『宇宙戦艦ヤマト』初期には宮崎駿も作画で参加している。(『封印』208ページ要約)
『逆シャア』のMSコンペにて庵野さん、「ゲッターロボみたいなの」と「初代ガンダムそのまま」のものを描いていく。富野、涙流して激怒。(『メバエ』269ページ)
この話は有名ですよね。
小牧さんによると、「CDではなくて、総監督と書いてくれ」と表立ってしたのは長浜さん(『ヨイコ』36ページ)
『メガゾーン23』1話で、庵野さんが担当したカットがある。軍用メカが変形するシーン。機銃の銃身が回ってから給弾するところ。(『メバエ』175~176ページ)
『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』で、チャコ役に小林愛さんを起用したのは、原恵一監督がたまたま見た『∀ガンダム』のリリ・ボルジャーノ役で気になっていたから。評判良かった(『ナカヨシ』185ページ)
どうでしょう。
1つでも、「初めて知った!」って項目があったら、嬉しいです。
ゲートキーパーズ1985―二つの刻の狭間で (角川スニーカー文庫)
- 作者: 山口 宏
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2003/01
- メディア: 文庫
あやふやな記憶で申し訳ないのですが、
中村さんが富野の車について語るのは「ガンダム者」の中でもあったように記憶してます。
新車をよく買い換えていて、自分も車好きなので見せてもらったとか、
そんな話だったかと。
違っていたらすみません。
by 子犬 (2013-04-12 08:29)
子犬さん、コメントありがとうございます。
確かに『ガンダム者』の中にありました。中村さん、かなり車がお好きなようですね。
by 坂井哲也 (2013-04-12 22:09)
貴重な話ありがとうございます。手短に…。
車を言及したかどうかは忘れましたが、安彦さんも全仕事?でライディーン以前の富野についての印象を触れましたね。「ふらっと来て、ふらっと去って、なんかちょっと胡散臭い人だった」という真逆な印象でしたが。
田中氏のエルガイム参加と庵野氏のゲッターロボは知りませんでした。
by kaito2198 (2013-04-13 00:39)
kaito2198さん、コメントありがとうございます。
安彦さんの発言、ありましたね。別な本かも知れませんが、『トリトン』のことを知らなかったから、「監督できんの?と思った」みたいなことも言ってましたね。
庵野さんのゲッターロボ、そうですね。
書いている時、もう午前3時過ぎて眠たかったので(笑)、まとめて「この話は有名ですよね」と書きましたが、実際にはRX-78そっくりのガンダムを持っていったのは有名ですが、ゲッターロボの話はぼくも今回まで失念していました。
by 坂井哲也 (2013-04-13 11:52)