アニメ『化物語』『偽物語』でパロディやメタ発言が許容されるのは、『フィクションの二重構造』になっているから [アニメ周辺・時事]
えくぼは萌えの落し穴。
えー、ね。なんかブログやツイッターをしている人が、一晩で有名になる事例(主に悪い方の意味で)を見ると、怖くなるね。
自己保身の観点からすると、「ブログもツイッターもやらない」が一番賢いんだろうね。
数十年前に筒井康隆さんが書いた『おれに関する噂』の世界が現実になった訳で。
筒井さんがそんな現在の状況についてなんか書いていないかな、と思って久し振りにブログを読んだら、相変わらず旨そうな酒飲んで飯食ってました。
あとウォルフガング・ペーターゼンが『パプリカ』を映画化しようとして版権詐欺に遭った話や、今放送中のドラマ『家族八景』で駄目出しした話などが興味深かったです。
後者の話題は、脚本家さんの心情を慮るとあまり笑えないけど。
さて筒井さんと言えば、ぼくは最近、こんな文章を思い出した。
過去の名声に甘えているとエピキュリアンとしても余生がない。怠惰であるのは自由だが、それなら他人に講義や説教をしないでもらいたいなどとこっちもいささか罵言に走ったから話をもとへ戻すことにする。(新潮文庫『玄笑地帯』90ページ)
この文章はもう何十年も前、開高健さんに向けて書かれたものだけれど、富野ファンの皆さん、ドキッとしませんか。
まあ釣りや食があった開高さんと違って、富野は無趣味っぽいし、怠惰ではないだろうし、エピキュリアンって感じじゃありませんがね。
でも何か、作品を作らずに説教しているところがね。まあ70歳だし、ゆったり余生を過ごしていいんだけど。
さて今回はこんな感じで、いくつかの話題を雑多に並べていきます。よろしければお付き合い下さい。
独りの夜に。もしくはつまんねー日常の合間に。
えー、次はコレ。
「アニメの化物語・偽物語でパロディやメタ発言が許容されるのは、『フィクションの二重構造』になっているから」。
ま、このタイトルだけで全てなんですが。
『化物語』『偽物語』ってモブが一切ないでしょ。人がいそうな公園だろうが道路だろうが。
つまりあれって、舞台の会話劇なんですよね。
視聴者は意識する・しないに関わらず「もともとアニメ+会話劇」という二重のフィクション・フィルター(今思い付いた造語)がかかっている。
だからその分、作品世界と視聴者の間に距離感が出来て、パロディやメタ発言を受容できるのだと思います。
同じ作者原作のアニメ『刀語』でのメタ発言は、ぼくは非常に邪魔に感じたのですが、『化物語』『偽物語』では面白がれるのは、この構造のせいでしょう。
ちなみに『偽物語』における『AKIRA』のバイクシーンパロを、「パクリ」とか騒いでいるサイトを見つけたけど、子どもはトイレ行って寝ようね。
あんなに分かりやすい・例え『AKIRA』を見ていなくても何かのパロディだと分かるようになっている・シーンをパクリと言ってしまうなら、パロディなんて文化はなくなってしまいますがな。
次。
キッズステーションで放送されているせいで、評判は知っていても未見だった『とらドラ!』を今更見ている。
しかもシリーズ後半から、いきなり。
今10代、20代の人に言っておくけど、よく出来たラブコメだったらおっさんになっても見れるよ。
ただ、見方は違うかもしれないけれど。必ずノスタルジーが付きまとう。
先日見た第20話「ずっとこのまま」の中では、「画面全体を揺らしてキャラクターの心情=動揺を表す」って描写があり、珍しい演出だな・と感心しました。
まるで手持ちカメラで撮影することでわざと不安定な画面を作りだしたヌーベルバーグを彷彿とさせるような…は飛躍しすぎか。
とにかく面白い演出だな、と思いました。アホな子どもみたいな締めでスイマセン。
最後。
同じくキッズステーションで放送しているので、『ストライクウィッチーズ』も見ている。
しかしよくアニメを見ているおっさんだなあ。自分のことながら。
で、この前『ストライクウィッチーズ』を見ていたら、キャラの1人が「リリー・マルレーン」を歌うシーンがあった。
マレーネ・ディートリッヒのファンであるぼくは、もちろん「リリー・マルレーン」を知っていたが、「このアニメを見ている何人が、リリー・マルレーンを分かるのかイヒヒヒヒ」などと笑ってしまった。
我ながら哀れな人間だと思うが、根が卑しいので仕方がない。
イヒヒヒとは、僅かながらの知識を鼻にかけた厭らしい笑いである。
先の「化物語」で杉浦茂さんの絵柄に真似たカットが出た時も「杉浦茂の絵なんてこのアニメを見ている何割が分かるんだ。ま、俺は分かったけどイヒヒヒヒ」と笑ってしまったが、低脳で無教養で低学歴の人間が「俺だけは知っている」とちっぽけな自尊心を満たす、これぞまさに「視聴者転がし」「オタク転がし」が上手な作品と言えるでしょう。
お見事、ですね。
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